Dendrobium taurinumのフォーム3様

 Den. taurinumはフィリピン固有種です。フィリピンのSpatulata節は本種とDen. bicaudatumおよびDen. conanthumの3種のみでいずれも高温タイプです。本種はPalawanからMindanaoまで広く分布し、その環境は多雨とされます。J. Cootes氏によると本種は栽培の極めて難しい種で本種を栽培するのであれば実生にすべきと著書Philippine Native Orchid Speciesで述べています。これまで6年間で本サイトでは2地域からの野生栽培株と実生1ロットをフィリピンより入手していますが、野生・実生に関わらずデンドロビウムのなかでは最も順化が困難な種であることは昨年の歳月記3月に、その対処方法を含め記載し、このような処方がない場合の移植歩留まり率は精々1割と述べました。本サイトでは順化が完全に終了しない限り販売できない唯一のランです。

 本種の花は一般的にはセパルは白色、リップおよびペタルがバイオレッド色で、青あるいは赤味が強いか弱いかの個体差があります。ところが昨年Negros島からとされる野生栽培株を入手し、今月に入りその株が開花しました。花色のフォームは他のロットとは大きく異なり、個体差と言うよりは変種あるいは地域差と言うべきフォームです。下写真は写真1が5年前に入手した野生株、写真2は今年1月入荷の実生、写真3が昨年11月入荷のNegros島からの野生株です。写真4はその株です。写真1は青味が強くセパルにも青色が混じります。写真2はピンク、写真3はリップ中央弁の縁とペタルが濃い赤紫のそれぞれで、特にNegros産は他とはかなり異なるフォームです。同一種でこれほどの違いは他のSpatulata節には無いように思います。

写真1 Den. taurinum
写真2 Den. taurinum
写真3 Den. taurinum
写真4 Den. taurinum

Dendrobium thyrsiflorum sp

 1昨年、マレーシアのPutrajaya Floria Festivalで現地ラン園のブース内にDen. thysiflorum spのラベルが付いた、現地価格としてはかなり高価な株を見つけ、spとあるが一般種と何が違うのかと質問したところ、通常この種はセパル・ペタルが白色か、稀に全体が淡いピンク色であるが、この株は、セパル・ペタルの先端部が青味のあるピンク色をした希少なフォームであるとのことでした。

 Den. thyrsiflorumは中国、インド、ミャンマー、タイ、ベトナムの標高1,200m – 2,000mに生息する中温タイプのデンドロビウムです。多輪花で豪華な印象から市場性が高く、現在セパル・ペタルが白色の一般フォームであれば3-4本の疑似バルブサイズが1,500円程と安価です。一方、似た花でセパルペタル全体がピンクのフォームはネット上での多くがハイブリッドで、原種と思われる種は1-2画像しかなく市場情報もほとんどありません。

 そうした背景からspに興味が湧き、20茎からなる大株のspを持ち帰りました。当初、本種は高温環境でも開花するとの情報もあり胡蝶蘭温室で同居させていたのですが1年経っても開花する様子が無く、昨年10月に中温室に移動しました。今月に入りこの株が開花しました。下写真です。海外からの移植後初の開花のためか、色が薄いのですが確かにセパルペタルの先端部に青味のあるピンク色(写真2)が乗っています。先端部がベース色と異なるフォームをもつデンドロビウムは、本サイトでしばしば紹介しているDen. sp sumatraDen. sanguinolentumに見られるように環境条件によって濃度がしばしば変化します。環境に順化すればこのバイオレット色が濃くなるのではと次の開花に期待しています。

写真1 Den. thysiflorum pink sp
写真2 Den. thysiflorum pink sp

Bulbophyllum jolandae

 リップに細毛がある代表的なバルボフィラムとしてボルネオ島生息種のBulb. jolandaeが知られています。1,500mの生息域のため中温栽培です。ネットで栽培風景を見るとその多くはポット植えです。本種をポットに植えると花茎は上方に延びやがて弓なりに下垂しはじめ、ここに10-15輪の花を付けます。しかし株によってはこの花茎の伸長方向がまちまちで、鉢の周りに他の株があるとそれらと交差したりぶつかったりして良い景色にはなりません。

 自然の姿勢に倣いヘゴ板やコルクなど垂直板や棒に取り付ければ花茎はやや上向きで板面の前方に伸長しやがて弓なりに下垂しはじめ、この下垂した位置から花茎の軸に対し左右および前方の3方向に美しく整列して(下写真2)花を付けます。こうした性質から景色としては板取り付けが最も良く、これまで杉皮板とポットのそれぞれに植え付けていましたが今回の植え替えで全て(約20株)を炭化コルク(写真3)に植え替えました。ちなみにマーケット情報を調べたところ、本種はなぜかバルボフィラムとしてはかなり高額で、3葉(バルブ)NBSサイズが10,000円以上で販売されているのには驚きました。当サイトではBSサイズで3,000円ですので4株買えます。1月のサンシャイン、2月の東京ドームにもこの価格でよく売れましたが5月のサンシャインに5株程持って行くことにしました。

写真1 Bulb. jolandae
写真2 Bulb. jolandae
写真3 Bulb. jolandae

Pleurothallis lacera

 植え込みが終わったエクアドルの引き取り株に散水をしていたところ、5mmにも満たない小さな花が葉の上に咲いているのが目に入り、正面から見てその色合いに驚きました。まさに文字通りの深紅の花びらです。ラベルにはPleuro. laceraとあり、orchidspecies.comで検索したところ南コロンビアおよび北エクアドル生息種で2,600m – 3,200mのsteek bank、いわゆる断崖の地生ランとのことです。クールよりもさらに低温のコールドタイプであると共に、何故に日本の標高で例えれば槍ヶ岳や穂高岳相当の高山の崖に登って、これほどちっぽけな株を採取するほどの価値があるのかと、こちらも驚きです。

 orchidspecies.comの花画像の色合いは今一つですが浜松で開花した実物を見ていると、その深紅の色は魅力的で虫(ポリネーター)だけでなく、確かに人をも惹きつけます。Pleurothallisフリークにとって栽培をしたい種の一つかも知れません。下写真は浜松クール系温室での10日の撮影です。この株は6月から販売品となりますが、さて3,000m級の高山植物を、どのようにして育てるのかこちらも興味があります。地生ランとありますが、浜松では小さな半透明プラスチック鉢にミズゴケとクリプトモスミックスです。

Pleurothallis lacera
Pleurothallis lacera

現在の炭化コルク植え込みDendrobium tobaenseの栽培状況

 昨年7月からの胡蝶蘭、バルボフィラム、デンドロビウムなど炭化コルクへの植え込みが始まり現在ほぼ8割近くのデンドロビウムFormosae節の植え替えが終わりました。ほとんどのFormosae節は、素焼きやスリット入りプラスチック鉢に比べて炭化コルクの方が安定しており、新芽や新根の発生が盛んで、Den. tobaenseは今月に入り7割の株で花芽を付けています。現在在庫のDen. tobaenseは昨年10月に40株程入荷した野生栽培株で半数以上を販売した残りです。それまでの鉢栽培では、売れ残った株はほとんどが小ぶりでじり貧状態が続きやがて落ちるのが常でしたが、海外からの入荷時から炭化コルクへの植え付けに替えてからは、ほぼ全ての株が同じような成長をし、品質の優劣の差がほとんどなくなり鉢植えとは大きく異なっています。

 下写真1-2は炭化コルク付けのDen. tobaenseです。すべての株で入荷以降発生の新芽が見られ、これまでよく耳にした冬を無事越したものの春になっても芽が出ないと言った多くのFormosae節栽培の問題はありません。写真3-5は新芽や新根を示す画像です。写真6以下はそれぞれの株の蕾(一部)で全て今月9日-10日の撮影です。1か月程後には花の最盛期を迎えることになります。

写真1 Den. tobaense
写真2 Den. tobaense
写真3 Den. tobaense
写真4 Den. tobaense
写真5 Den. tobaense
写真6 Den. tobaense
写真7 Den. tobaense
写真8 Den. tobaense
写真9 Den. tobaense
写真10 Den. tobaense
写真11 Den. tobaense
写真12 Den. tobaense
写真13 Den. tobaense
写真14 Den. tobaense

現在開花中のPhalaenopsis bastianii と Phalaenopsis gigantea Sabah

 Phal. bastianiiは高芽が出やすく下写真1では入荷から2年半で3つの高芽を付けています。一方写真2はセパルペタルが薄黄色ベースのPhal. gigantea Sabahです。花茎の基部に近い花柄が太くなっていますが今月、自家交配をした結果です。受粉が終わってこれから4か月程かけて大きな鞘が形成され、6か月程でフラスコへの取り撒きができると思います。ボルネオ島では多くの森林地帯でプランテーション化が進み、野生のSabahタイプは絶滅状態であり、ex-situ (生息域外保全: 本来の生息域では最早存続できない種で、生息地以外の場所で人工繁殖を図る保全)を考え、純正種を保証した株の逆輸出が必要な時期に来た感があります。

写真1 Phal. bastianii
写真2 Phal. gigantea

Phalaenopsis modesta

 1月に入荷し、仮植えをしていたPhal. modestaの植え付けが終わりました。写真2が植え付け直後の画像で、写真1は3年前に入荷した同種の現在の開花風景です。Phal. modestaPhal. mariae等が多輪花となるには移植しておよそ2-3年は必要なようです。

Dendrobium Distichophyllae節 Complex

 Den. uniflorumDen. connatum等のデンドロビウムDistichophyllae節は似て非なる形状で、現在浜松で在庫する種で8種を越えます。下画像は現在開花中のDischophyllae節の仲間です。写真1, 2はフィリピンパラワン諸島生息でリップ中央弁が写真1がSandybrownの橙色、写真2がPalegoldenrodの緑色で開花後の時間の経過で若干色褪せがあるものの明確な色違いがあります。敢えて似た種名に当てはめればDen. ellipsophyllumDen. moquetteanumでしょうか。一方写真3は昨年12月歳月記に取り上げたボルネオ島生息のspです。

 写真4はCameron Highlandsの農園で多くのDen. bifariumの株の中からこの1株のみ見つかったもので、リップ中央弁に緑色の3本のラインが走るDen. bifariumと異なり純白の色合いからはDen. connatumと思われるのですが3cm程となるDen. connatumとは異なり1cm以下の花で葉サイズも1/2のspです。花サイズからはDen. bifarium(1.3cm)かDen. bihanulatum (0.7cm)のアルバのようなフォームです。写真5はDen. maraiparense、写真6はDen. uniflorumです。Den. uniflorumを除き、いずれのspも今後の市場での入手は極めて困難と思われます。

写真1 Den. sp. Palawan
写真2 Den. sp. Palawan
写真3 Den. sp. Borneo
写真4 Den. sp. Cameron Highland
写真5 Den. maraiparense
写真6 Den. uniflorum

Dracula属の植え付け

 Dracula属の植え付けがほぼ終了しました。3種類の植え付けで、それぞれメタルリング、炭化コルクおよびスリット入りプラスチック鉢です。いずれも植え込み材はミズゴケとクリプトモスミックスを使用しています。プラスチック鉢の植え付けは100株程残っていますが栽培状況を見てから前者のいずれかに移し替える予定です。下画像はそれぞれの植え付け風景です。今後は種名リストと価格を整理し、6月より販売を開始します。その際には南米の他属、株総数にして1000株以上も順次販売する予定です。

Dracula植え付け風景

Phalaenipsis stuartianaとPhalaenopsis philippinensis

 現在、Phal. stuartianaPhal. philippinensisが同時に開花しています。Phal. schillerianaとは凡そ1か月遅れの開花となります。Phal. stuartianaは高温タイプですが、Phal. philippinensisはルソン島北部IsabelaやNueuva Vizcaya州の標高1,200mに生息のため中温での栽培となります。写真3は両種を並べて撮影したもので、夏季はそれぞれ別場所に置かれます。

写真1 Phal. stuartiana
写真2 Phal. philippinensis
写真3 Phal. stuartianaphilippinensis