Bulbophyllum kubahense

 今月に入り3株程が花芽を付けていましたが最近は温室を訪れる人がしばしばで、花芽を見て買われる方が多く、浜松温室で花を見る機会が少なくなりました。たまたま今週に入り大きな株で開花が始まり、これまでの開花株としては花数が26輪と最も多いことから撮影しました。

Bulb. kubahense Sarawak

交配

 今月はPhal. gigantea SabahとDen. aurantiflammeum2種の自家交配を行いました。Phal. gigantea Sabahは希少種となったことと、Den. auratiflammeumは花サイズが一般の1.5倍ある株でこのサイズとしては希少であることからの実生化です。下写真は交配親(写真 1, 3)と23日現在のそれぞれの交配花(写真 2, 4)の状態で、Phal. giganteaは交配から僅か3週間でさく果がかなり大きく発達しています。一方、Den. aurantiflammeumは過去3年間、毎年交配を試みてきたものの受粉に失敗してきましたが今回は受粉までは行ったようで花托の部分がやや膨らんでいることが分かります。交配からタネを得るまでの4-8ヶ月は、少しでも環境条件が合わないとさく果が黄変し落ちてしまったり、胚の無いタネができてしまいます。特に交配からの4ヶ月間程は神経を使います。

写真1 Phal. gigantea
写真2 Phal. gigantea
写真3 Den. aurantiflammeum
写真4 Den. aurantiflammeum

 ちなみに、写真5は現在浜松クール温室で育成中のパプアニューギニア生息の野生栽培株Den. vexillarius dark blueのさく果です。この後2ヶ月程で胚のあるタネが取れれば、およそ3年後にはDen. veillarius dark blueの実生がマーケットに2 – 3,000円前後で出回ることになります。

写真5 Den. vexillarius blue Seed capsules Papua New Guinea

Dendrobium hymenophyllum

 Den. hymenophyllumはインドネシアJavaおよびスマトラ島生息種で、セパル・ペタルが緑と赤色の2つのフォームが知られています。緑フォームにはさらに茶褐色の小斑点が入るタイプと斑点が全く入らないflavaタイプがある一方、赤フォームはダークマゼンタからレッドブラウン(あずき色)まで様々です。赤色フォームがより入手難です。昨年秋にDen. hymenophyllum redの注文を行いましたが、Den. jiewhoei (syn. Den. calcariferum) が誤ってロット単位で入荷してしまいました。なぜそれぞれがスマトラ島とボルネオ島の生息種、さらに前者は高温タイプ、後者は低-中温タイプであるのにミスラベルが起こるのか、希少性や現地取引価格から言えば2008年登録の新種でボルネオ島生息のDen. jiewhoeiの方がかなり高価であることから故意ではなく、おそらく株がよく似ているため2次業者のストックヤードでの取り扱いミスであろうと思われます。

 Den. hymenophyllumの色フォームを株から判断する一つの手段として葉裏の色があります。この色と花色がよく一致するためですが前記したように、それは株がDen. hymenophyllumであることが前提で、蕾の無い葉と茎だけの株では、特にCalifera節と前記したようなミスが発生します。また蕾があればその色合でセパル・ペタルの色だけでなく斑点の濃度まで予測できます。下写真は現在開花中の株を撮影したもので写真1, 3は花、写真2, 4, 5はその蕾です。写真1, 2は一般的なグリーンに茶褐色の斑点が入るタイプ、写真3, 4は斑点の無いFlavaタイプです。蕾のドーサルセパル相当位置やSpur(後方に伸びた突起部)の色合いに違いがでます。

 さて問題は写真5の蕾です。Den. hymenophyllum greenのロットの中から出ました。蕾のセパル・ペタルに当たる位置の色は赤色というよりはむしろ黒色に近く、しかしSpurは緑色です。蕾が赤褐色は一般的には赤フォームとなるのですが殆んどの場合、Spurも赤味が全体あるいは一部に現れます。もし開花まで写真の色合いが変わらないとすると、これまでの経験からはセパル・ペタルがほぼ黒に近い緑色の花が開花することになります。このようなフォームはネット上には見られません。果たして稀なフォームなのか、数日後の開花までに色褪せて、レッドブラウン色のいわゆる一般フォームに落ち着くか、しかし赤色フォームにしてはSpurの緑が鮮明過ぎます。

写真1 Den. hymenophyllum
写真2 Den. hymenophyllum
写真3 Den. hymenophyllum
写真4 Den. hymenophyllum
写真5 Den. hymenophyllum

Dendrobium nudum

 昨年夏フィリピン経由でインドネシアからDen. nudumDen. montanumをそれぞれ10株づつ、前者は1株が15茎以上の大きな株、後者は4-5茎の一般サイズで入手しました。Den nudumは植え付け1か月後に開花し花の確認ができました。一方、Den. montanumは今年になって開花したところDen. nudumと同じ花でミスラベルでした。その後も半数以上の株で開花しましたがDen. montanumとされた株は全てDen. nudumで、どうやらロット単位のミスラベルのようです。両者は同じJavaやSumatra島1,200m – 2,000m標高の生息種で、背丈も茎(疑似バルブ)も似ていることからの取扱いミスと思われます。しかし数本はDen. montanumが現れるかも知れないとそのままにしています。

 どの株も1年を超えると環境に慣れるようで順化直後は2-3輪でしたが、最近は下写真のように1茎に10輪程の開花が見られます。下写真は17日の撮影です。木製バスケットにミズゴケ・クリプトモスミックスで中温室です。小株はプラスチックにバークミックスでよく開花しています。本サイトでは1株5茎で2,500円としています。

Den. nudum
Den. nudum

Dendrobium sutepense II

 ミャンマー・タイ生息のDen. sutepenseの開花最盛期となっています。中温での栽培で写真は炭化コルク付けです。希少種なのかどうか、なぜか市場情報がネットからは見つかりません。本種はorchidspecies.comによると甘い香りがすると書かれていますが、何か漢方薬のような匂いを特に早朝に感じます。

Den. sutepense

Dendrobium yeageri

 フィリピン固有種のDen. yeageriが珍しい花色で開花しました。15日撮影です。通常本種は淡い紫色に濃い紫のラインがセパル・ペタルに入るのですが、下写真1のようにセパル・ペタルの基部にDen. yeageriの赤味が多少見られるものの、Den. victoriae-reginae(写真2)と同じような青色です。現在両者共にそれぞれ野生栽培株を100株程在庫していますが、Den. yeageriのこの花色は初めて見るものです。果たしてこの色合いは環境によるものなのか、個体差なのか同一株を株分けして調べる予定です。

写真1 Den. yeageri
写真2 Den. victoriae-reginae

Bulbophyllum sp

 昨年2月の歳月記にGreen sepalと共に紹介したボルネオ島からのBulb. spが開花しました。その時の花はCirrhopetalumタイプで下写真1の花は2輪でした。光沢のある鮮やかな黄金色で該当する種がないか調べたのですがネット上では見当たらず、Bulb. spとして10株程を販売しました。今回再び取り上げたのは写真2のように6輪で今月開花したためです。環境に順化すれば本来の姿を現すものですが、本種も入荷から1年半ほどでようやくCirrhopetalumらしくなりました。花色の鮮やかさは変わりません。

写真1
写真2

現在開花中のPhalaenopsis bastianiiとPhalaenospsis sumatrana 2点

 写真1のPhal. bastianiiは一般種に比べてセパルペタルの棒状斑点が太く、同種のソリッドレッドの開花を待って自家およびシブリング交配を予定しています。一方、写真2のPhal. sumatranaは昨年と同時期の開花です。マレーシアコレクターから入手してから4年目の株で入手時は写真の前面にある新しい2葉程の大きさでしたが、やがて高芽ではなく1株で葉長30㎝を超える大株になりました。

写真1 Phal. bastianii
写真2 Phal. sumatrana

Dendrobium igneo-niveum

 Sumatra島生息の本種は人気が高く、現在インドネシアに大株(15茎以上のクラスター株)を注文しているところです。茎4-5本の株で本サイトでは3,500円です。Formosae節としては栽培が比較的容易な種ですが、この節固有の、日本の季節の変化に対する管理(主に水やり)は技術が必要で栽培としては中級から上級レベルとなります。

 6年前の会津時代は素焼鉢にミズゴケ100%の何の変哲もない組み合わせと3年ごとの植え替えで良く成長していました。ところが浜松に来てからは他のFormosae節と同様に機嫌が悪く、開花した年の冬は越えられるものの新芽が現れず高芽が出た後は、じり貧状態の株が増えました。限られた温室空間に数千株ある環境では種毎の最適な管理をすることはできないことが最も大きな原因で水やりの加減が必要でした。 そこで2年ほど前から、皆同じような管理の下、良好な結果を出すにはどのような取付材や植え込み材が良いかを見つけ出そうと本種に限らずFormosae節のほとんどを素焼き鉢、ヤシガラマットにミズゴケを巻いた円筒、木製バスケット、炭化コルクなどにそれぞれ3-5株づつ植え付け栽培結果を観察することにしました。

 Formosae節のほとんどは炭化コルク(あるいはヘゴ板)が良いとの結論を得ましたが、Den. igneo-niveumに関しては、今年春の結論としてミズゴケとクリプトモスをそれぞれ50%配合の植え込み材で木製バスケットが良く、意外であったのはヤシガラマット円筒は悪い結果となりました。自然界では他のほとんどのFormosae種と同様に、本種も大小さまざまな木に活着しており、バルブは上方に伸長し、茎も多くは立ち性であり、鉢やバスケットには植えにくいものの乾湿のメリハリの少ない適度に湿気のあるバスケットの方が良いようです。この方法であれば3年目の春にバスケットの植え込み材を交換すれば、水やりに特に気を遣うことなく、高芽の発生を抑えると共にバルブ元から年に2本程度の新芽を発生させ、3-4年かけて大株にできるのではと思われます。これを受けて木製バスケットはコストアップになるものの全ての株を植え替え、さらに成長具合を調べることにしました。

 下写真1は現在(14日)開花中のDen. igneo-niveumで、Formosae節によく見られるようにバルブの太さが花の大きさに関係するようで写真2の左が太いバルブの花で、右が一般サイズです。写真3, 4は木製バスケットにミズゴケとクリプトモスで植え付けた株の今年発生の2本の新芽2例です。

写真1 Den. igneo-niveum
写真2 Den. igneo-niveum
写真3 Den. igneo-niveum
写真4 Den. igneo-niveum