Cleisocentron abasii事情

 先日Clesiocentron abasiiの下写真が送られてきました。30-40cmほどの野生株で長い花茎から本種であることは間違いありません。USD120だがどうかとのことです。すなわち13,000円程となります。断りました。その理由は画像からは品質が良くないことと、ランとしてはマイナーなCleisocentron種がこれほど高価なのは日本向け価格であり、それには数年前の国内マーケットでの登場事情が背景にあるようで日本以外での本種の人気は取り立ててありません。高額でも良いとする需要があればそれはそれで良いのですが、今回やっととは言え、こうして出てきたからには、いずれそれなりの数が現れると思います。本サイトでは現在2,000 – 3,000円程で販売しているCleisocentron gokusingiimerrillianum並になれば購入も考えるとサプライヤーに答えたところです。

Cleisocentron abasii

順化中の胡蝶蘭原種3種

 8月末にマレーシアを訪問し持ち帰った胡蝶蘭原種Phal. amabilis JavaとPhal. viridisおよび9月末訪問のフィリピンから持ち帰ったPhal. schillerianaが現在順化中でそれぞれで新根が現れてきたところです。これらは1月のサンシャインラン展に出品する予定です。

Phal. amabilis Java
Phal. amabilis Java
Phal. viridis
Phal. viridis
Phal. schilleriana
Phal. schilleriana

Dendrobium tannii f. alba?

 Den. tannii名で今年1月に入荷した株には赤紫やピンク色など多様なカラーフォームが混在し、その中に下写真の白い花も3割程含まれていました。Den. tanniiで検索しても公式な登録は無いようで、この名前のページはorchidspecies.comにも無く、Den. bracteosumあるいはその一変種とされているようです。幾つかのDen. tanniiに関する記述からは、Den. bracteosumとの相違点として、リップの色やセパル・ペタルの形状が取り上げられていますが、その程度のみで別種とする根拠には無理があり、一方、変種とするのであればDen. bracteosumの一般フォーム株に対しての排他的地域性が必要で、さらに一つの入荷ロットから紫、ピンクおよび白色が同じような割合で出現することは野生株とは考えにくく、Den. tanniiとされる株はタイか台湾でのフラスコ苗の可能性が大きいと思われます。

 Den. tanniiが人工的に作出された実生ではなく野生種であってDen. bracteosumの変種とするならば、採取地およびそのコレクターがストックあるいは栽培している場所が流通ルート(1次あるいは2次業者)の中で知られても良いのですが、これも明確ではありません。花自体は下写真のように清楚で美しいのですが自然界に実在する野生株と見做すにはしばらく調査が必要です。

現在開花のDendrobium ramosiiとDendrobium violaceum

 これまで生息確認が無かったフィリピンPalawanからのDen. ramosii(写真1)と、ニューギニア生息のDen. violaceum(写真2)が低温および中温室にてそれぞれ開花中です。Den. ramosiiDen. erosum、Den. rutriferum、Den. kuhliiなどと花は一見似ていますが、それぞれリップや疑似バルブ形状がよく見ると異なります。これらは下写真のように一つの花は2cm程と小型ですが多輪花で、写真は15輪以上の同時開花です。

 一方、Den. violaceumは花形状や生息域がDen. vexillariousと似ていることから、よく違いが聞かれます。花色に大きな違いはあるものの、Den. vexillariousは色変化が多いため稀に似た色が出現することがあります、現在本サイトで栽培している株の中では、Den. vexillariousの方が葉幅が広い傾向が見られます。花は1か月以上咲き続けます。下写真右で緑色の生ゴケが見られますが、本サイトのクール室では2年ほど前からコケが自然繁殖して写真のように炭化コルクを覆っています。おそらく中-低温室には1,500mから2,000mクラスの雲霧林やコケ林からの種が多いため、そこでのコケが生きたまま現地の栽培サイトを経てやがて本サイトに入荷し、それが繁殖している可能性があります。このコケはランには悪影響はないようで、むしろ根周りの湿度を保つ働きをしているようです。ちなみにこのコケを3-4cm角に切り、高温室の同じ炭化コルクで栽培しているデンドロビウムのミズゴケの上に移植したのですが1か月程になりますが今のところ枯れないものの増える様子はありません。コケにも低温・高温タイプがあるようです。

写真1 Den. ramosii
写真2 Den. violaceum

Dendrobium reypimenteliiの異なるフォーム?

 先月末、2016年登録の新種でミンダナオBukdnon生息のDen. reypimenteliiを取り上げました。100株程ある中で現在次々と開花を始めています。しかし一部にカラーフォームの異なる株が現れています。ドイツのジャーナルOrchideenJournal Vol.5.1 2017ではBukidnonからの8つの新しい原種が紹介されており、その中のデンドロビウムに、Den. derekcabactulanii、Den. reypimentelii、Den. schettleri が記載されています。これらはいずれも先月紹介のDen. boosiiと同様に下垂し落葉した長い茎に同じような形状の花を付けるデンドロビウムです。それぞれCalcarifera節の近縁種と思われますが、カラーフォームやサイズの僅かな違いでそれぞれ別種として扱われると、果たして下写真の今回Den. reypimentelii名で入荷したカラーフォームがそれぞれ異なる株もまた同一種ではなく、やがて別名が付くのではと考えてしまいます。そこで問題なのはこうしたフォームの違いを、趣味家から購入希望があることを想定し花を確認後、区分けして栽培するかどうかです。

Den. reypimentelii
Den. reypimentelii変種? sp1
Den. reypimentelii変種? sp2

Dendrobium hosei

 花画像と伴に2016年末にマレーシアよりDen. nabawanense名の株を入荷しました。しかしそれまで栽培していたDen. nabawanenseの花と酷似するものの微妙に様態が異なることから、その入荷株について亜種か変種ではないかと2016年10-12月の歳月記で取り上げました。2年余りを経過した今月に入り、植え替えの時期を迎え、これまで開花毎に撮影した画像を整理し調べたところ、この入荷種はDen. hoseiであることが分かりました。

 Den. nabawanenseとの違いは2点あり、一つはDen. nabawanenseのリップ側弁の外縁は山なりに変化しているのに対し、Den. hoseiの側弁はフック(鉤)のような形状をもつことです。これはorchidspecies.comにも指摘されていたのですが、園主からの画像では撮影角度のために鉤状には見えず判断ができませんでした。他の一つはDen. nabawanenseの疑似バルブ(茎)は1m程の長さまで伸長し下垂するのですが、Den. hoseiは30 – 50cm止まりで立ち性であることです。これらの相違点から本種の同定に至りました。下写真左は今回木製バスケットから炭化コルクに移植したDen. hoseiで中央は浜松にて撮影の花画像です。リップ側弁の鉤型の形状が分かるかと思います。右花写真はDen. nabawanenseで側弁の縁は滑らかです。

 そこで国内マーケットでは両者が正しく区別されているか調べたのですがDen. hoseiがネット検索でヒットしません。Den. nabawanenseはボルネオ島固有種、またDen. hoseiはマレーシア、ボルネオ島、ニューギニア低地生息種で中 – 高温タイプとされます。これら2種はボルネオ島生息株としてマレーシアから入手したのですが、昨年3月の歳月記に記載しましたDen. hoseiの株から2株ほどニューギニア生息のDen. baeuerleniiが出現したことから、このDen. hoseiはニューギニア生息の可能性が大きくなりました。ちなみにhoseiとはシンガポールの英国人司教名Hose由来とのことです。

Den. hosei
Den. hosei
Den. nabawaense

Dendrobium niveobarbatum

  昨年1月のサンシャインラン展でフィリピンラン園から引き取ったDen. niveobarbatumが大きくなり、株分けと共に植え替えを行いました。本種は、最近新種の頻繁な登場で話題のミンダナオ島Bukidnonの生息種で、標高500m程の高温タイプです。2008年登録の比較的新しい種となります。同じフィリピンの広域種であるDen. polytrichumと花形状は酷似していますが葉形状が異なり、その形状の違いは2017年2月の歳月記に取り上げました。

 本種は下垂タイプです。これまではバスケット植えでしたが、どうも原種特に野生栽培株を支持棒に縛ったり針金で押さえて無理やり立てて栽培するのは、葉の向きや開花する花の位置などの景色が不自然、すなわち物を逆さまにして見ているようで、最近は立ち性と下垂性のそれぞれの特性に極力合わせた植え付けを行っています。その結果、着生ランが主なデンドロビウムは胡蝶蘭程ではないものの吊り下げ型も多くなります。下写真左は40cm4Lサイズのバーク木片(商品名はブロックバークという)への取付けで右株の茎の最長は凡そ1mです。おそらく自然界ではこのようなサイズが一般的なのかと思います。花は写真2のようにリップに細毛が、また側弁内側には柿色の細いライン見られます。国内マーケットでの取り扱いは少ないようでほとんど情報がありません。

写真1 Dendrobium niveobarbatum
写真2 Dendrobium niveobarbatum

歳月記に取り上げた品種の価格

  新規に取り扱う品種や新種が次々と増える状況のなか、現在本サイトにはそれらの価格をまとめたページがなく、こうした品種については歳月記で述べた販売予定価格が唯一の情報となっていました。このため、トップページの中段右のリンク・メニューに”2018年度参考価格”を設け、今週末までに本日(18日)ポスティングしたリストに追加更新する予定です。

開花中の2種

 写真1は現在中温室で開花中のDen. hamiferumです。大半が高温タイプのSpatulata節としてはニューギニア標高1,000m – 1,800mに生息する珍しい中温タイプのデンドロビウムです。一方、写真2と写真3はフィリピンミンダナオ島Bukidnon生息の2016年登録のDen. butchcamposiiです。こちらは標高データが見つかりませんが、2年間の本サイトでの栽培による推定では 1,500m前後と思われます。左写真でDen. hamiferumの上部に白い花が映っていますがこれはDen. lydiaeでこちらもミンダナオ島生息で2016年登録の新種です。標高は1,200mとされますが栽培からはDen. butchcamposiiと比べて5℃程度高めが良いと思われます。

写真1 Den. hamiferum
写真2 Den, butchcamposii
写真3 Den, butchcamposii

Vanda javierae

 フィリピンルソン島Pangasinan州の標高1,200mに生息する本種は生息域が狭いためか数が少なく野生栽培株の入手はフィリピンラン展においても困難です。現在マーケットで見られる本種はほとんどが実生とのことです。野生栽培株は10年前から5-6年間入荷していましたが、最後に纏まって200株程を入手した後は、中温室にてそれらの栽培を続けています。サンシャインや東京ドームラン展には毎回5株程出品しており人気のある完売種の一つです。マーケットでの実生種は3-4,000円程度であるのに対し、野生株と思われる本種はAsiatic greenが現在150米ドル、約16,000円で販売しており、Vanda属としては最も高額な種で、それだけ野生株の入手は困難になりつつあるようです。

 本種は同じフィリピン生息のVanda sanderianaと同様に、根を植え込み材で覆うポット植えは適さず、これまで木製バスケットに植え付け、下垂する根は空中にそのまま垂らしていました。毎年5月から7月初旬まで温室の一角が白い花で溢れる程の開花を続けています。しかし中温室の夏季は遮光率の高いネットで常時覆われるため輝度が不足気味になることと、高温室と異なり中温である分、湿度が低く根周辺の湿度不足のためか、やや入荷時に比べ痩せた様態が見られ、先週から現在の全株120株程を細長い杉板あるいは炭化コルクに植え替えました。根を板につけてミズゴケで根を覆うのではなく(水分過多となるため)、薄くミズゴケを敷いた上に根を置く取り付け法です。また輝度不足はLEDで補うことにしました。今後は液肥を定期的に与え株を太らせる計画です。下写真は植え替えが終わった多数のVanda javieraeです。こうした植え付けは育成用で、販売品は見栄えも考慮し再び木製バスケットに植えつけての出荷となります。

 本種はしばしばリップ側弁に赤褐色のラインが入るVanda barnesiiと比較されます。本サイトで栽培している半数もVanda barnesiiですが果たして別種とするほどの違いなのか、本サイトではJavieraeの変種として栽培しています。現在はラインの無い薄緑色の側弁種(写真1)の方がVanda barnesiiに比べてはるかに入手難となっています。来年のサンシャインラン展には例年通り5株ほど出品する予定です。

写真1 Vanda javierae
写真2 Vanda javierae
写真3 Vanda javierae
写真4 Vanda javierae