Coelogyne tomentosa

 2016年1月にマレーシアの趣味家からマレー半島Genting Highland生息のセロジネを、その趣味家の環境では高温過ぎて花が咲かないのでとの理由で頂きました。同年10-12月の歳月記でも本種を取り上げました。入手からほぼ3年が経ちます。当時の歳月記の写真では3バルブ程の株でしたが、毎年暮になると一つの花茎に20輪程が開花しています。、現在では葉付バルブが12本、葉は無いものの生きたバルブを含めると19本となり、かなり成長の盛んな種のようです。orchidspecies.comによると標高凡そ1,100m – 2,000mの生息種でコールドからクールタイプとされています。本サイトでは中温室での栽培で、夏季の昼間の平均温度は28℃程、夜間平均温度は18℃としています。開花は日中気温20-25℃、夜間15℃程で始まっています。VandaではVanda javieraeVanda coerulescens、デンドロビウムではDen. boosiiDen. papilioなどと同じ環境です。

 花色を見ていると年毎にリップの黄色が鮮やかになってきているような気がします。その黄色が良く目立ちます。株も大きくなってきたため年内に3株に分け、販売する予定です。下写真上段が本種で、参考にCoel. odoardiを下段に表示しました。

Dendrobium insigne

 現在Den. insigneが多数の株で開花中です。8月に入手して以来、初回は散発的ではありましたが2回目の開花です。下写真にDen. consanguineumと比較してみました。セパル・ペタルの裏側の、特に中央から先端部の色がイエローオレンジかホワイトかの違いで容易に区別できます。胡蝶蘭原種温室に同居中の非常に丈夫な種で、僅か2ヶ月の間に新芽が多数(3-5本)現れています。植え付け後の1-2割ならばよくある様態ですが、ほぼ全ての株で雑草の如く、あたかも競い合うかのように株基から成長芽が現れるのを見るのは初めてです。本種はポット植えが2,500円、炭化コルク付けが3,000円での販売となっています。

Dendrobium dianaeのフォームについて

 Den. dianaeはボルネオ島Kalimantanの低地生息種で2010年登録の新種です。昨年10月、マレーシアにて8cmx2cm程の木板に取り付けられたDen. dianaeを20株入手しました。入荷時の株の大きさは不揃いであるものの5cm前後で小さく、しかし実生とも思えない様態で、これらをミズゴケでスリット入りプラスチック鉢に移植しました。半年ほどで20-30cm程に急成長し、今年5月になり下写真左の、セパル・ペタルが透明感のあるグリーン一色の初花が咲き、6月にはツートンカラーの写真中央の花が開花しました。また同じ6月には何故か同一ロット内で2011年登録で同一生息域のDen. flos wanuaが開花しました。これらについては5及び6月の歳月記に取り上げました。再び今月には別株からDen. flos wanuaが咲き、続いて今回は下写真右のイエロー単色の花の開花です。

 Den. flos wanuaDen. dianaeの葉と茎は視覚的に区別が困難な程類似しているものの、リップ形状が大きく異なるため別種であることは確かです。なぜ混在したかは不明です。一方、単色フォームのDen. dianaeはCalcarifera節によく見られる、開花時がグリーンでやがて開花寿命に近づくに従って黄化する性質がありネット画像で見られるグリーンとイエロータイプは単に撮影時点の違いであろうと思っていました。しかし開花時点から黄色が強く、一両日で写真右のようなフォームをもつ株も現れました。株毎にこれほど不安定な色フォームは他に知りません。orchidspecies.comではセパル・ペタルはイエロー単色です。サイトで本種の画像を調べていたところインドネシアのサイトに、イエローフォームのDen. dianaeを変種としたDen. dianae var. yellowがありました。もしこの色違いを変種とするのであれば一般フォームの生息域であるボルネオ島Kalimantan州の内外のいずれかの地域に排他的に生息していなければならないことになりますが果たしてそれを周知の命名なのでしょうか?では一般フォームは何色なのかが問題となります。それにしても変種名をyellowとするとは、名前を見てついお茶をこぼしてしまいました。しかし変種であるなかれ、未開化株については本種もまた開花しなければ下写真にさらにDen. flos wanuaを加えて、どれが現れるのか分からないがよろしいですかと伺っての販売となる困った種の一つです。現在の販売価格は3,000円です。

 ちなみに本種に関してネットではDendrobium dianaedianiaeのi文字が入る、入らない2つの名前がありますが同一種のようで、Malesian Orchid Journal Vol 6:57 2010 as D. dianae photo/drawingではiのない名前です。一方でCITESはiの入る名前です。つまり登録(学)名はDen. dianiaeでありCITESはdianiae名でなければ記載ミスとなり認可されないものの、通常使用される名はdianaeがほとんどです。どこでどうしてiが抜けたのか?推測するに論文の中にある花写真とスケッチ図につけた名前に論文名とは異なるiのないスペルミスをしてしまった?。しかし審査のある投稿論文でそれ程の基本的な部分でのミスは考えられず、こちらも本種の花色に似てよく分かりません。

南米ドラキュラ属3点

 60種以上のドラキュラを栽培しており今年7月頃までにはそれらをサイトに掲載する予定でしたが、4ヶ月ほど遅れて何とか今月末ごろに公開できる段階になりました。販売もほぼ同時にスタートする予定です。今年3月から半数以上で花茎が植え込み材の任意の場所から伸び出すことが出来るようにポット植えからメタルリングや炭化コルク付けに植え替えを行いました。厳密には種によって中・低・コールドの適温があると思いますが、本サイトでは24-15℃の範囲内で全種を通年で栽培しており、置き場所によって2-3℃の差がある程度です。これで枯れた種はありません。結果として株の状態はコルク付けが成長が良く、やや温度が高くなったり、状態が今一つの場合に発生する葉先枯れも少なくなりました。下写真は現在開花中の3点です。本属はナメクジに好まれる種のようで写真3の傷はそれです。忘れた頃にやってきます。温室栽培での秋はナメクジ被害が多いのですが、絶大な効果のあるマイキラーを用い撃退しています。

写真1 Dracula vespertilio
写真2 Dracula tubeana
写真3 Dracula navarroorum

Phalaenopsis lowii

 今年7月タイから直輸入した入荷株の開花です。ミャンマー、タイに生息する本種の花を見るのは3年ぶりです。会津では多数栽培していましたが、浜松に移住してからはproboscidioides節やparishianae節の栽培の機会が余りなく、今年夏ごろから再び胡蝶蘭原種の収集を始めることにし、本種も新しく入荷したその一つです。落葉性のある本種やparishianae種は会津の様な盆地で昼夜の大きな温度差があり、夏季の熱帯夜がほとんどない地域では栽培が容易ですが、浜松はその逆で栽培が厄介です。山間部、東北地域などが、むしろこうした節に対しては管理しやすいように思います。サンシャインラン展には数株出品予定です。

7 – 9月入荷種の新芽

 7月と9月はフィリピン、8月はマレーシアにて入手した主なセロジネとシンビジウムの順化栽培が終了し、新芽の発生状況を数点画像にしました。胡蝶蘭、デンドロビウムおよびバルボフィラムの順化はすでに終わっています。10月から11月初旬は春先から6月までの期間と共にほとんどの種で新芽が発生し、よく伸びます。株の健康状態を知る時期でもあります。これらの時期に変化が見られない場合は、温度、湿度、輝度、かん水、通風、植え込み材、植え込み方法などのいずれかに問題があると判断し、対策が必要です。

 最近分かってきたことの一つはミズゴケの使用寿命です。成長が遅いあるいは昨年は問題がなかったのが同じ環境であるにも拘らず今年は成長が今一つであるとか、じり貧状態であると言った場合の最も可能性の高い原因は植え込み材、特にミズゴケで起こり易いのですが、その老化によるもので、根を洗浄した後、新しい材料に変えることで元の元気を取り戻す場合が良く見られます。本サイトでは2年以内にはミズゴケを交換することが必要と考えています。肥料によって若干交換時期を伸ばすことができると思われますが、一方で保水力の低下と共に塩類あるいはカルシュウム成分の蓄積による根へのダメージも、特にデンドロビウムFormasae節にはあるように感じます。目に見える様な状態になってからではもはや手遅れであることから、交換期間を予め定め実施することが必要と思います。

フィリピンからの2種

 一つはVanda barnesiiで他はCeratocentron fesseliiです。いずれもよく知られた種ですが、左のVanda barnesiiにはセパルに僅かな斑点があります。この斑点が環境条件でどのように変化するのか興味があります。一方、右のCeratocentron fesseliiはフィリピンでは少数派のクールタイプです。一般の画像検索に見られるオレンジと赤の中間色が多い中では、赤味の強い鮮やかな色合いです。この株はこれまでフィリピンの標高500m程の比較的高温環境で栽培されていたようで、それでこれだけの発色であればクール環境ではさらに鮮やかな赤色となるのかどうか期待しているところです。同一ロットで30株程を入荷し、サンシャインラン展にその一部を出品する予定です。

アルバフォーム2種

 フィリピンにて栽培中のアルバフォーム2種を紹介します。マーケットでは下写真の色合いをアルバと名付けていますが、むしろflavaフォームとすべきかと思います。一つはVanda roeblingianaで、もう一つはPhal. hieroglyphicaです。前者のアルバフォームはこれまで知られていないようです。また後者のアルバフォームは台湾やタイでの実生がすでにマーケットに見られますが、写真2の株は野生株です。これまでに見られない非常に上品な色合いで、これらは11月に入荷予定です。いずれもマザープラントとして自家交配を行い、実生を得た後はフィリピンに実生の一部と共に本種を戻すことにしています。

写真1 Vanda roeblingiana f. alba
写真2 Phal. hieroglyphica f. alba wild

植え替え中のBulbophyllum2種

 下写真は現在植え替え中の上段がBulb. saurocephalum subsp oncoglossum、下段がBulb. whitfordiiです。Bulb. saurocepahyalumとその亜種とされる2011年登録のsubsp oncoglossumとの違いは、リップ中央弁が平坦か、先端部が凸状で側弁の形状に相違があるとされます。写真の株は先端にやや膨らみがあり亜種であろうとの判断です。一方、写真下段は入荷名が希少種とされるBulb. cheiri yellowでしたが、PalawanにおけるBulb. cheiriの確認がない(2010年)のに対して、形状が類似するBulb. whitfordiiはPalawan生息の確認があり、また同種の特徴であるグリーン色も強いことからBulb. whitfordiiとしました。

Bulb. saurocephalum subsp oncoglossum
Bulb. saurocephalum subsp oncoglossum

 

Bulb. whitfordii
Bulb. whitfordii

少し変わったBulbophyllum

 フィリピンからは新たに15種程のバルボフィラムが11月末ごろまでに入荷予定で現地で確保次第、順次画像が届くそうです。その中で2点程、既存種に似て非なる花画像が送られてきました。左は種名が現時点では不明です。右はBulb. nymphopolitanum complexのようですが、それにしてはペタル・セパルの色が赤すぎ、ラテラルセパルの先端部が細長い点が特異です。指皮膚との色合いから映像の加工は考えにくく、本サイトではこれまで取扱のない種です。一方、ミンダナオ島の2016年登録の新種でBulb. virescensの近縁種とされる花の大きいBulb. hampeliaeはすでに確保済みで、これらはサンシャインラン展に出品予定です。