Dendrobium reypimentelii

 本種もまたミンダナオ島Bukidnon標高1,600mの生息種で2016年に登録された新種です。Den. boosiiと比べてやや高地の同じコケ林での生息が報告されています。茎の長さはDen. boosiiが1m近くまで伸長するのに対して本種は50cm止まりで茎がやや太いのが特徴です。下写真に本種及びDen. boosiiとの違いを示します。生息域の標高から低 – 中温栽培となり日本の東北や北海道などを除いて夏季はクール室あるいは山上げなどの環境が必要となります。

 写真1は本種の栽培風景の一部で炭化コルクに植え付け対面配置をしています。本種は雲や霧に覆われるコケ林での生息のため低輝度環境が考えられますが、本サイトでは白色光LED直下での栽培です。写真2は本種の1株を示すものです。一方、写真3は左2株が現在開花中のDen. boosiiで、右側が本種です。Den. boosiiおよび本種いずれも花は落葉した茎につきます。右の画像から茎の長さの違いが分かります。写真4は本種の葉、写真5は現在浜松中温室にて開花待ちの蕾、写真6は現地で撮影された花です。来年1月のサンシャインラン展にはDen. boosiiと共にそれぞれ20株程を出品する予定です。現在の価格は3,000円で、すでに温室を訪問される方の多くが購入されています。

写真
写真2
写真3
写真4
写真5
写真6

現在開花中の胡蝶蘭原種2点

 現在浜松温室にて胡蝶蘭原種はPhal. fasciata、pulchra、sumatrana、celebensis、bellina、violacea sumatra、violacea mentawai、modesta、sanderiana、venosaなどが開花しています。それ以外の2点を撮影してみました。写真左のPhal. lindeniiはリップがグラデーションのある赤紫色で写真の様な濃い色合のフォームは希少です。一方右はPhal. minusです。現在10株程在庫しており、3株が開花中です。独特の花形状で、1ヶ月程開花を続けます。

Phal. lindenii
Phal. minus

ミンダナオ島バルボフィラム3つの新種

 下写真はそれぞれ炭化コルク2個毎に右からBulb. marknaivei 2016、中央がBulb. prasinoglossum 2018および左がBulb. inacootesii 2016です。写真右の花画像はBulb. marknaiveiで浜松にて撮影したものです。特にBulb. prasinoglossumは今年に入っての直近の新種となります。いずれもミンダナオ島Bukidnon標高1,200m生息種で、中温栽培となります。これらは株サイズにより2,500円(3バルブ)から販売しており、現在温室訪問者の多くが購入あるいは予約されています。ミンダナオ島からのバルボフィラムは現在、浜松および現地ラン園のストック株を含め10種以上のsp(種名不詳)があり、年内には全て入荷し来年サンシャインラン展および東京ドームラン展に出品する予定です。それまで残っていればですが。下写真の3品種は今回それぞれ20-30株程入荷した一部です。こうした新種を数十株一纏めで入手すると、その中に葉あるいはバルブ形状が似てはいるものの明らかに別種と思われる株が1-2株混在していることがあり、そうした不明種も3株程となりました。これらも開花を待っての同定となります。

Bulb. inacootesii (left), Bulb. prasinoglossum (center), Bulb. marknaivei (right)
Bulb. marknaivei

Cymbidium lancifoliumの新芽

 8月にマレーシアから高温障害で傷んだ本種を持ち帰ったことを取り上げましたが、最優先で植え付けを行ってから丁度1か月が経過します。その後の状態を調べてみたところ、多数の株で新芽が発生していました。昼夜の最高・最低温度がそれぞれ22℃と16℃のクール温室においての順化栽培です。適温であれば、相当傷ついていても生きた葉と根が僅かでも残っていれば、再生する生命力を見ているようです。この小さな芽から葉が開くまでの期間が最も病気に罹り易く、この期間の病害虫防除処理は不可欠です。一方、Cym. elongatumは2週間遅れの植え付けで、現在頂芽の伸長を待っているところです。

Cym. lancifolium
Cym. lancifolium
Cym. lancifolium

胡蝶蘭原種4種の植え付け

 仮植えしていた胡蝶蘭原種4種の植付けを行いました。下写真がそれらで、右から順にPhal. kunstleri4株、hieroglyphica4株、pantherina2株、奥がzebrina Sabahで、それぞれ入荷株の一部となります。Phal. kunstleriは4年ぶりの入荷です。一方、Phal. hieroglyphicaは葉長が30cmを超える特大株で、花サイズも一般サイズの1.5倍程あります。昨年からPhal. hieroglyphicaは花サイズの大きな実生品種がマーケットに見られようになりました。本サイトでもマレーシアにて昨年入手したLL株は今年2月の東京ドームラン展のプレオーダー品として2,500円の実生価格で販売しました。

 本サイトでは実生品種は交配系統が不明なため、ほとんど取り扱いませんが、例えばPhal. violacea Indigo blueやPhal. bellina albaなどはFSサイズを1,500-2,500円範囲内で販売しています。 下写真のPhal. hieroglyphicaは実生ではなく野生栽培株で生息地フィリピンからの持ち帰り株です。こうした特大株は本サイトでは一般サイズ価格の1.5倍程としています。また今回マレーシアにて入手したPhal. pantherina(写真で根が垂れている株)は、こちらも花サイズが大きなタイプです。Phal. pantherina野生栽培株はこれまでPhal. cochlearisPhal. javanicaとほぼ同額でしたが、しばしばランの国際標準価格として参考にするシンガポールのAsiatic greenでは胡蝶蘭原種の一般種としては現在最も高価で、日本円で17,000円程です。マーケットでのPhal. pantherina名の実生の多くは、下写真の花画像に見られるような本種の特徴である中央弁先端の白くシャープで大きな三日月形ではなく小さく反りも浅く、Phal. cornu-cervicomplexとの交雑種らしき形状が見られます。こうしたこともあっての純正種ならではの価格高騰ではないかと思われます。これらは今後3ヶ月間程の順化栽培に入ります。

写真1
Phal. zebrina Sabah
Phal. pantherina
Phal. hieroglyphica
Phal. kunstleri

Bulbophyllum echinochilum

 この種名からBulb. echinolabiumならば持っている、あるいはBulb. echinolabiumのスペルミスではと思われる方も多いのではと思います。Bulb. **labiumではなく、**chilumです。7-8年前にフィリピンケソン市のラン展Flora Filipina Expoにて1株入手しました。当方もBulb. echinolabiumを買うつもりでしたが、それにしてはバルブ形状が饅頭のようでおかしいなと思いつつも購入したものです。胡蝶蘭原種と同じ環境で栽培を始めましたが、花は咲かず株も古いバルブが枯れるとその分だけ新しいバルブが発生する繰り返しで、鳴かず飛ばずの現状維持が続き、かと言って枯れる訳でもなく、やがて忘れ去られたかのようにヘゴ板に取りつけたまま温室の片隅に吊り下げられていました。そうした中、2年程前のバルボフィラム植え替え時期を迎え、古くなったヘゴ板と株の様子からこれを廃棄するかどうか考えながらも、取り敢えずは古く擦れたラベルに書かれた種名をネットで調べて見ることにしました。そこで初めて本種の素性を知りました。

 orchidspecies.comによると本種は100年近く前にフィリピンで記録され、その後は見つからず絶滅したと思われていたそうですが、最近になりインドネシア領スラウエシ島の標高900-1,000mのコケ林で本種が撮影された、とあります。フィリピンで入手した株に付いていたでラベルを見たところ所有者の名前か地域名かの文字があり、これは粗末には出来ないと炭化コルクに移し替え、本サイトのバルボフィラムサムネールも2016年に更新しました。またJ. Cootes氏の著書ではルソン島の2か所の山に生息すると記載されています。果たして生息数が多いのか希少種なのかは不明ですが、一見、花茎と花付きが似た種のBulb. sauroephalumはマーケットでよく見かけるものの本種は入手以来見たことがありません。

 生息域情報からそれまでの高温からBulb. lasioglossumの置かれた中温室に移し替えたところ、別種の如く成長が盛んとなり、一株が現在4株(1株は10バルブ以上)まで増え、その内3株に今月花茎が付きました。胡蝶蘭では頂芽優先の特性があり、これは脇芽を発生するよりも頂芽の成長を優先します。そのため繁殖は主に高芽となります。バルブフィラムにおいてはリゾームが損傷を受けた場合に、バルブ基部のもう一つの成長点が目覚めて新たな成長芽を発生させる性質が、特にリゾームの長い大型のバルボフィラムによく見られます。一方、本種はしばしば一つのバルブから2つの成長芽が発生します。栽培経験からはバルブが平ぺったい品種にこの性質が多いように思われます。これが本種の短期間での繁殖となっています。

 下写真は開花が始まった直後の株と花を撮影したものです。花の姿が捉えにくく反時計回りに90°回転してみると分かり易くなります。カールした2枚がラテラルセパルでドーサルセパルは花茎にピッタリと接触している方です。ペタルは小さくて分かり難いです。蕊柱を覆い隠しポリネーターをも拒むような、このたわしの様なリップの髭は何を目的に数千年もかけて進化したのか不思議です。7mm程の小さな花で1週間程で15-20輪程になると思います。またリップの細毛と形状を見るとスラウエシ島生息種の画像とは異なり地域差があるようです。同じHirtula節にはBulb. jolandaeや前記したxenosumが含まれます。

Bulb. echinochilum
Bulb. echinochilum
Bulb. echinochilum

Bulbophyllum xenosum

  ボルネオ島の標高600 – 900m生息のBulb. xenosumBulb. jolandaeのようにリップに細毛があり、このリップが風で前後にカクカクと動き、花茎の30輪程が一斉にタイミングをずらしながら動き始めると、まるで生き物が集まっているかのようで面白い景色となるバルボフィラムです。今回のマレーシア訪問のラン園に20株程ありました。 しかし夜間平均温度が25℃を1年の内ほとんど下回ることのないクアラルンプール近郊で本種を栽培するのは困難であり、いつ入荷したのかは定かではありませんが2-3ヶ月は経っているらしく、案の定ほとんどの株は1-2枚の葉を残し元気がありませんでした。このままでは枯れるのは時間の問題と園主も気付いていたようで何とか引き取ってもらえないかと言われ、予定外でしたがBulb. jolandaeの入手は難しくないものの本種は3年以上海外ラン園で見ていないため全て持ち帰りました。中温タイプですがBulb. jolandaeの1,500m標高から比べればかなり低地生息種で日本では東北や日本海側であれば特別なクール対策は不要と思われます。

 浜松では中温室に置き、トレーにミズゴケを敷き、その上に並べてから根の周りをミズゴケで覆う仮植え処理をし、ダメ元で様子を見ていましたが1か月ほどで全ての株に新芽が現れ始めたため本植えとしました。下写真がそれらです。右の3Lサイズのバーク木片には60バルブを超える大株が1株あり、展示用として取り付けたものです。

Bulb. xenosum
Bulb. xenosum

2種類のCoelogyne sp

 先月マレーシアから持ち帰ったセロジネの内、種名不詳が3種あり、その一つはCologyne sp red-lipとして画像を先日掲載しました。残る2種の取り付けが終了しました。下写真上段は一見バルボフィラムと見間違える様な、セロジネに一般的に見られる薄葉で縦の葉脈が入っている形態ではなく、葉に厚みがあり株も垂直方向に直線的に伸長しています。バルブに縦皺がなければバルボフィラムとまず間違えます。長く下垂する花茎に、セパルペタルは白色でリップに黄色の斑点のある花がかなりの数で同時開花するそうです。

 一方下段はCoel. monilirachisに似た形状のしかし白色の花との園主の説明でしたが、Coel. monilirachisはバルブが下写真とは異なり細長くスリムで、写真のような滑らかな表皮の円錐形とは異なります。バルブ形状からはCoel. longifoliiaCoel. bicamerataと思われます。いずれもクールから中温タイプであるため、現在中温室にて順化中です。Coel. odoardiと共に入荷したようなのでボルネオ島生息種の可能性がありますが、後者2種はそれぞれインドネシアスマトラ島とスラウエシ島ですので、現在生息地を確認しているところです。いずれにしても開花するまでは種名は分かりません。

Dendrobium boosii Lanao

 昨年11月に紹介した本種はミンダナオ島Bukidnon生息株でしたが、今年7月には隣の州であるLanaoからも入手ました。この株が現在中温室にて開花中です。下写真がそれらで下垂する1m程の長さの疑似バルブのnode(節)からそれぞれ花柄がでて1輪つづ、バルブ当たり5-7輪の3.5-4cmの花が開花します。

Den. boosii Lanao Mindanao
Den. boosii Lanao Mindanao
Den. boosii Lanao Mindanao

Vanda limbata LombokとBulbophyllum levanae

 Vanda perplexa名で入荷した株でしたがVanda limbataのミスラベルであった株の植え付けがほぼ終了しました。写真1で20株の内の6株です。Vanda limbataはインドネシア生息種でこれまでスラウエシ島およびJava島が知られていますが、今回の株はLombok島からで初入荷とのことでした。今回これらをマレーシアから持ち帰った小さな四角のプラスチックバスケットに植え付け、バスケットにはクリプトモスを入れています。これはVandaのベアールートでの吊るし栽培では湿度の低い環境が許されないことと置き肥に便利なためです。一方、クリプトモスの代わりにミズゴケでは濡れ過ぎで根の腐敗リスクが高くなります。

 一方、写真2はフィリピンから持ち帰ったBulb. levanaeです。Bulb. trigonosepalum complex(近縁種)と思われますが、このグループは似たり寄ったりでミスラベルも多く、開花して見ないと種名が分からないというバルボフィラムです。何が現れるか分からないのもそれはそれで興味があり、バルブや葉の形状が従来在庫株とどのように異なるのかを調べるのも楽しいものです。こうした開花前の株でも購入したいと言う人が後を絶ちませんが、何が出ても構わないと言う覚悟の人だけの販売となっています。今回のマレーシアから持ち帰ったパプアニューギニア生息のバルボフィラムは未だ取り付け前の状態のまま15種もあり、すべてこれらは何が咲くか分からない株ばかりです。

写真1 Vanda limbata Lombok
写真2 Bulb. levanae