カラーフォームの異なる2種

 現在、Den. reypimenteliiDen. victoria-reginaeが開花しており、その中からそれぞれの種で3つの異なるフォームを撮影してみました。Den. reypimenteliiはミンダナオ島で近年発見された新種で昨年10月にも取り上げましたが、今月は下写真2に見られるようなグリーン色の強いフォームが現れました。通常本種は開花直後は緑味のある色合いですが写真2の株は開花後も変化することなくこの色を保っています。また写真4-6は同じくミンダナオ島からのDen. victoria-reginaeです。こちらも先月から開花期を迎えており、青色の濃淡が株によって様々です。この濃淡は栽培環境によって若干変化が見られます。いずれも下垂する40-50cm程の疑似バルブをもち、標高1,300m程の生息種で中温室にての栽培です。

写真1 Den. reypimentelli
写真2 Den. reypimentelli
写真3 Den. reypimentelli
写真4 Den. victoria-reginae
写真5 Den. victoria-reginae
写真6 Den. victoria-reginae

Bulbophyllum sanguineomaculatum (Bulb. maculosum)

 昨年12月にマレーシアから持ち帰ったBulb. spがあり、サプライヤーによると、全てのセパル・ペタルにドットのあるBulb. membranifoliumに似た種であるとの説明でした。Bulb. membranifoliumは黄色をベースにドーサルセパルやペタルには点から棒状までの斑点があり、ラテラルセパルにはラインが入ったり、無地が一般フォームです。そのspが今月に入り開花しました。確かにセパル・ペタル全体に斑点が入る派手なフォームでしたが正しい種名はBulb. sanguineomaculatum、シノニムとしてBulb. maculosumでした。

 そこでなぜこれをBulb. membranifoliumに似た、としたのかネットでBulb. membranifoliumを画像検索したところpinterestのサイトBulb. membranifolium名でセパル・ペタル全てにドットが入った種の画像が僅かながらありました。しかし、この画像は蕊柱やリップまたラテラルセパルの形状からBulb. membranifoliumではなく、Bulb. maculosumと判断されます。またorchidspecies.comによるとBulb. maculosumはしばしばBulb. membranifoliumとして引用(誤解)されており、両者は形状的に異なることが記載されています。さらに国内の楽天市場サイトでは、Bulb (cirrphopetalum) . maculosum名で、それとは全く異なるBulb. auratumのような形状のバルボフィラムが販売されていました。

 次にBulb. sanguineomaculatum名で市場価格を検索したところネット上には見当たりません。Bulb. maculosum名ではどうかとこちらも調べたのですが本サイトを除き、また前記した楽天市場での本種名は別種として、該当するものは見当たりません。黄色をベースに赤褐色の斑点をもつ派手なフォームを見ると、人気があっても不思議ではなく、それでは本種は入手難な種なのかと、昨年末からビニールポットに入れられたままの本種をようやく炭化コルク付けに植え替えすることにしました。下写真は今回開花の花画像で、スラウェシ島生息株とのことです。

写真1 Bulb. sanguineomaculatum (Bulb. maculosum)
写真2 Bulb. sanguineomaculatum (Bulb. maculosum)

開花中の胡蝶蘭原種3点

 7月現在開花中の胡蝶蘭です。Phal. maculataは高温・低輝度、Phal. violaceaは高温中輝度です。高温タイプの胡蝶蘭原種の最低温度は18℃で、国内の冬季4か月程を15℃以下に置くと作落ちあるいはやがて枯れ始めます。Phal. lindeniiは高温でも良いとされますが、高温では花付が悪く現状維持までで、中温が好ましい環境となります。

写真1 Phal. maculata
写真2 Phal. violacea Sumatra
写真3 Phal. lindenii

炭化コルク活着と植え替え

 現在2年経過後の炭化コルク付けの株の植え替えを進めています。スマトラ島北部Ache州生息のCalarifera節Den. atjehenseもその一つで、これまで中温のなかでも高温に近い場所において栽培してきました。高温室との違いは四季を通して昼間の温度は2-3℃程しか変わらないものの夜間温度は、高温室では18℃を最低温度として 25℃以上もしばしばあるのに対して中温室は15 – 18℃の範囲であることです。この結果、この種が置かれた温室内では1日の温度差が10℃程度あり、国内で言えば山間部、北陸、東北、北海道などの温室ではこうした環境が造り易いと思います。 本種については2017年10月の歳月記にも記載しています。マーケット情報はその後も無く国内での流通は本サイト以外ネットからは見られません。

 下写真1は植え替え前の状態、写真2の株は左と違いますが、表面のミズゴケを洗い流した状態、写真3はその上に新しいミズゴケで覆ったものです。炭化コルクの長さは35cmですが、写真2の根の張り方から分かるようにやや面積の不足を感じます。最近は胡蝶蘭を中心に炭化コルクは可能な限り、これまでより一回り大きなサイズに変更し根の伸びしろをとり、ミズゴケも保水性を得るためやや厚めに覆っています。

写真1 Den. atjehense
写真2 Den. atjehense
写真3 Den. atjehense

同じ種名でありながら異なる様態3点

 下写真1-3はスラウェシ島生息のBulb. carunculatumです。似た種にフィリピン生息種のBulb. orthoglossumがあります。違いはリップ中央弁に前者は凹凸があり、後者は滑らかな表皮であることです。1昨年マレーシアにて花サイズが一般の1.5倍程の大きなBulb. carunculatumがあるがどうかと、花はすでに落花していたものの花茎が残っておりその太さが異常で持ち帰ってきました。半年後に花を付けましたが7cm程で、またインドネシアラン園に、してやられたかと、すでに同種は3株ほど在庫していたためその後は温室の片隅に置き去られていました。昨年も開花した時は一回り大きく感じたものの、それにしてもと思いながらやはり軽視していました。しかし今回の開花は11cm越えで、本種の最大とされる9cmを越えてきました。下写真1の左側は一般サイズで、右がその株です(遠近の違いによる撮影サイズ誤差を避けるためペタルを互いに交差して撮影しました)。こうなるとこの大輪花株は無視出来ず、さっそく植え替えスケジュールに組み入れました。写真2は花茎の太さの違いで、写真3は開花中の株です。8バルブあるため株分けし木製バスケットにそれぞれ植え付け、一株は販売用とします。

 一方、写真4-5は昨年登録の新種でEpicrianthes jimcootesiiとして入荷したものです。本種はペタルから出る細い髭のような突起が左右それぞれ9本ととされており、写真4は9本ですが、写真5は10本あり髭の本数が種の判定の重要な要件とすると、同種ではなくなります。新種であれば面白いのですがそう思えば思うほど両者は違うように感じてしまいます。今のところ正体は不明です。、

 写真6-7はボルネオ島固有種のDen. ovipostriferumです。写真6はこれまで10年近く栽培を続けていた株のひとつです。一方、写真7は5月にマレーシアラン園の2代目に成田まで持ってきてもらった株の一つです。リップ中央弁の形状がやや従来株と異なります。個体差の範囲と思いますが、今回30株ほど入荷した他の開花を待って詳細に比較して見たいと考えています。

写真1 Bulb. carunculatum
写真2 Bulb. carunculatum
写真3 Bulb. carunculatum
写真4 Epicrianthes jimcootesii
写真5 Epicrianthes jimcootesii
写真6 Den. ovipostriferum
写真7 Den. ovipostriferum

現在開花中の花

 6月末の浜松温室では開花種はそれほど多くなく、特に胡蝶蘭原種のこの時期は僅かです。それでも下写真は現在開花中の一部となります。この中で本サイトでの初花はボルネオ島の高地に生息するCoel. hirtellaです。またDen. enderitiiに似た花をもつスラウェシ島からのDen. spは、5月に入荷してから1度開花があり花柄当たり揃って2輪でしたが、環境に順化したせいか下垂する総状花序に5輪が開花しています。Den. endertiiはボルネオ島固有種であることからendertii-complex(仲間)としました。Phal. bellinaは野生株としては品のある色合いと思います。Den. papilioは毎年この時期に開花します。

 ちなみに、マーケットにおいてDen. papilioDen. tobaenseなどはその花サイズによって大輪タイプなどと差別化された表記を時折目にします。Den. papilioDen. tobaenseなどの花サイズは株の状態に依存するところが大きく、健全に成長し疑似バルブが太くなればいずれも相応の大きな花をつけます。言い換えれば、例え大輪タイプとされた株であっても株が小さかったり、バルブが細ければ大きな花は咲きません。一般的に見られるように1輪だけの開花の花サイズは大きく、多輪花で同時開花となればそれぞれの花サイズは小さくなります。

 もし大輪花タイプとされる株がその株サイズや輪花数に関わらず花は常に一般の1.5倍ほど大きいのであれば、4倍体のような生殖細胞を有すると言えば良いのですが、そこで小さな花が咲くようなことがあれば偽称となりかねず、単に大きな花が咲いた株から得た実生であることで固有名を付けたに過ぎないのではと疑っています。 固有名を付けるのであればその特性が保持され継承される保障が必要です。Den. papilioDen. tobaenseで大きな花を得るには、2 – 3年かけ適切な輝度と肥料を与え、バルブを太くすることが必要です。これまでこれらの種をそれぞれ数百株栽培をし、大小様々なサイズの花を得てきましたが、背丈は同じでもバルブの太さは花サイズに大きく影響することが分かっています。

写真1 Den. chameleon alba
写真2 Bulb. othonis Palawan
写真3 Den. victoria_reginae
写真4 Coel. hirtella
写真5 Coel. celebensis
写真6 Coel. longifolia
写真7 Phal. bellina wild
写真8 Phal. sanderaina semi-alba
写真9 Den. papilio
写真10 Den. sp (endertii-complex) Sulawesi
写真11 Bulb. carunculatum
写真12 Bulb. trigonosepalum

スラウエシ島Bulbophyllum spのその後

 下写真1および写真2は4年前の2015年歳月記に掲載した、1mを超える長い葉と花茎をもつ珍しいスラウエシ島生息のBulb. spです。下写真2の開花様態からはAltisceptrum節のようですが、現在もネット検索からは該当する種が見当たらず、4年間毎年注文をしているものの入荷ができません。花茎と花付が似たマレーシアやフィリピンミンダナオ島生息のBulb. penduliscapumとは葉形状が異なり、本種は下垂する細長い葉が特徴です。当時10株程入荷し半数以上を販売しましたが、初めて取り扱う種であることから栽培環境が分からず、高温室での栽培としました。しかしほとんどが1年程で葉を落とし僅かな新芽を残すのみとなりました。いわゆる秋・冬・春はなんとか現状維持は可能だが東京や浜松での夏は越せないと云った種です。昼間35℃程で熱帯夜が年間7割を占めるマレーシアラン園にも10株ほど在庫されていましたが半年後には殆どが落葉し、1年程で全て枯れていました。

 そうした状況から中温室(15℃- 28℃)に移動しての2年間の栽培でようやく栽培条件が分かってきました。Bulb. penduliscapumもそうですが、環境温度は高温となっているものの高温下での栽培ではほぼ確実にじり貧状態になります。こうした情報と実態の相違は、たまたま入荷した株が高地であったという推測もできますが、Altisceptrum節は環境に敏感な種が多く、夜間温度の高温(25℃以上)と根が乾燥を非常に嫌うように感じます。

 下写真1は2015年の入荷時の株で、中央はサプライヤーからの開花画像です。右は左に見られる入荷時の葉が全て2年間で落葉し、その後の中温室への移動によって九死に一生を得てリゾームや葉が発生・成長した株です。若葉は立性ですが葉長が40㎝位になる1年後から徐々に下垂し始めます。入荷当初は大株であったため杉板への取り付けでしたが、2年前に炭化コルクとヘゴ板に分けて観察した結果、本種はヘゴ板よりも炭化コルクの方が活着状態が良く、今回35-40cm x 12cmの炭化コルクに植え替えました。それぞれは子株ながらも11株となり今後の葉長の伸びを確認しながらの販売となります。

写真1
写真2
写真3

Draculaの商品化準備

 南米Draculaの商品化をと考え2年以上が経ちます。70種350株程のDraculaを現在栽培しており、他の属種の管理に多忙な中、昨年3月からそれまでのスリット入りプラスチック鉢からメタルリングと炭化コルクへの植え付けを行ってきました。それぞれの植え付けの中では花茎が全方向に伸長できるメタルリング(植え付け方法は昨年3月の歳月記に記載)が最も成長が良く、下写真1はDracula vampiraを炭化コルクへ植え替えのため1昨日(25日)撮影したもので、4株の内右端の1株がスリット入りプラスチック鉢、他の3株はメタルリンクによる1年3ヶ月の栽培結果です。いずれも植込み材はミズゴケとクリプトモスミックスですが、根の張りは左3株が圧倒的に良く、入荷時の状態からの根の数は3-4倍増加しています。

 一方、栽培にメタルリングは良いものの、商品として出荷するには花茎が4方に伸びている場合、本属の花茎は長く、且つ折れ易いため梱包が困難で今後は炭化コルク付けに順次移行することにしました。すでに昨年から炭化コルク付けの60株ほどを観察続けた結果、根張りはメタルリング程はないものの一方で、温度が適温からやや高くなると発生する葉先枯れはほとんど見られません。そこで今回の植え付けからはメタルリングと同等の保水性と根張り面積を広くとる目的で炭化コルクを35cm x 10cmサイズとし、特に根元にはミズゴケを厚く覆った植え込みとしています。写真2は、左から順にDracula marsupialis、Dracula mendozae、Dracula lafleuriiおよびDracula vampiraです。Dracula vampiraを除く前者3株は、それぞれDracula属の中で一般フォームとしてはかなり高価な種で、特にDracula lafleuriiは米国マーケット向け価格はDracula vampiraの3倍程です。

写真1 Dracula vampira
写真2 Dracula marsupialis, mendozae, lafleurii and vampira (from left)

Bulbophyllm inacootesiiとNepenthes truncata

 5月入荷株の植え付けが相変わらず続いているものの若干余裕が出てきました。そこで相当数入荷したBulb. inacootesiiの一部を展示会向けの大株にしてみようと50㎝および43㎝の大きなブロックバークにそれぞれに寄せ植えしました。下写真1が植え付け後の状態で左の大きなバークには葉付バルブ数で40バルブ、右は25バルブとなっています。葉の無いバルブ数を含めるとバルブ総数はそれぞれ前記の約2.5倍となります。これまでの経験からは中温栽培で開花期は早春ですが、年末からやや高温下に置き開花をサンシャインラン展に間に合わせようと考えています。購入希望者には予約を受け付けます。

 一方、写真2はNepenthes truncataです。1m程の株を4株栽培しています。しかし入手して3年経つもののこれまで云われるほどの大きな捕虫嚢が得られず20㎝以下で、果たして本当に野生株なのか交配種ではないかと疑問を持っていました。今年2月に温室内のレイアウト変更があり、バルボフィラムの温室の通風のあるやや明るい場所に移動したところ、まず葉が30㎝程に一回り大きくなり、また写真2に見られるように30㎝を超えるサイズの捕虫嚢を付けるようになりました。情報によると本種の捕虫嚢は45㎝程になるとのことでさらに大きくなることを期待しているところです(後記:写真の株は後日入手希望者に販売済み)。これまでNepenthesはほとんど扱っていませんでしたが、先月のサンシャインラン展にてすべて野生栽培株の4種12株を販売しました。初日ラベルには種名だけとしたところ興味のあるらしき人は見ていくのですが買うことはありませんでした。そこでサプライヤーから聞いた生息地(山名)をラベルにつけたところ1日で売り切れとなってしまいました。市場のNepenthesの多くは幾代にも渡る挿し木増殖や人工交配のため生息地情報が薄れており、詳細な生息地の分かる株は趣味家にとってかなり価値があることを知りました。来年のサンシャインラン展には単なる生息国や島の名前ではなく、生息山地名や少なくともProvinceが分かるNepenthesを50株程出品する計画です。

写真1 Bulb. inacootesii
写真2 Nepenthes truncata

現在開花中の花

 下写真で写真1はスマトラ島Ache州生息のDen. toppiorumです。Acheは初めてで植付けして50日程ですが現在多数の株で蕾を付けています。写真2はスラウエシ島標高1,000mを超える生息地のDen. furcatumです。一般種のリップは紫色ですが写真はalbaタイプとされる株です。開花して既に1か月以上経過しています。一方、写真3はミンダナオ島北部スリガオ生息のDen. boosiiです。本種はリップが薄いピンクから赤味のある色まで多様ですが、写真の花は、縁がオレンジ色でラテラルセパルの基部が緑色のこれはこれで爽やかな色彩ではないかと思います。

 写真4はボルネオ島生息のDen. dianae f. flavaです。本種も赤と黄色のツートーンカラーからリップ側弁基部に褐色の斑点が入るフォームと多様ですが、写真は黄緑色一色のflavaフォームです。写真5はBulb. hamatipes.で当サイトでは初めての開花です。 写真6は中国南部雲霧林帯生息のSchoenorchis gemmataです。5mmに満たない花で温室の奥に置けば開花に気付かない程です。前者のバルボフィラムとともに低温室にての栽培です。

写真1 Den. toppiorum subsp. taitayoraum
写真2 Den. furcatum
写真3 Den. boosii
写真4 Den. dianae f. flava
写真5 Bulb. hamatipes
写真6 Schoenorchis gemmata