Dendrobium aurantiflammeumの植え替え

 昨年8月にマレーシアより40株入荷したDen. aurantiflemmeumの植え付けからほぼ1年が経過し、その半数ほどを販売しました。同じボルネオ島固有種で株の形状が似たDen. cinnabarinumは標高900-2,000mの低-中温であるのに対して、本種は標高900-1,400mに生息する中-高温種とされています。過去4年間ほどの入荷株は実質、前者が中温、後者は高温タイプがほとんどです。Den. aurantiflemmeumは林冠に着生し栽培も通風のある場所を好みます。これだけ目立つ種が1998年の比較的近年の発見とは驚きです。林冠と云う人目につかない生息場所が背景にあったのではと思います。

 orchidspecies.com記載の本種解説では花サイズが1.5cmとありますが、これは誤記ではないかと思います。2015年からこれまで80株ほど栽培してきましたが当サイトで観測される最も小さいサイズが3.5cm、長いサイズで8cmあり、一般的サイズが4-5㎝です。年に2-3回程の開花があり、今月も数株で開花中です。花色はオレンジから赤味の強いタイプがあります。昨年木製バスケットとブロックバークの2種類で植付けしました。バスケット・ミズゴケ植えが最も安定し、新芽もよく発生しており、根が常に湿っている状態が長時間続く状態が本種には好ましいようです。一方、夜間の高湿度化が得られればヘゴやコルク付けも成長は良好です。今回植え付けから1年後のブロックバークでの成長をチェックするため6株程それぞれの古いミズゴケを洗い流し根の状況を調べました。1年ですでに根は活着しているためブロックバークはそのままで再び根を新しいミズゴケで厚めに覆いました。下写真1-3はその株の一部で、左から古いミズゴケを取り除いた状態、植え替え後、および全体画像です。写真4-6は早春からの新芽をブロックバークおよびバスケットから3株選んで撮影したものです。

写真1 Den. aurantiflemmeum
写真2 Den. aurantiflemmeum
写真3 Den. aurantiflemmeum
写真4 Den. aurantiflemmeum
写真5 Den. aurantiflemmeum
写真6 Den. aurantiflemmeum

Vanda furvaとVanda mindanaoensisについて

 下写真1-3は現在開花中の、ミンダナオ島生息種としてフィリピンから2015年にVanda furva 名(Lindley 1833年)で入荷した株です。2013年浜松に居を構えて以来、新たに入荷したデンドロビウム、バルボフィラム、Vanda など、開花する機会を捉えてはネットや情報誌を参照し、花とタグ名の確認をしています。そうした中、この花について幾つかの疑問が出てきました。入荷後は毎年開花し花フォームはJ. Cootes氏Philippine Native Orchid Species 267ページに記載のVanda furva と一致します。著書には本種はミンダナオ島およびPalawan生息とされ、またOrchidaceaeのサイトにも同様の画像が掲載され、この画像は知人のW. Suarez氏が2010年8月に撮影したもので、本サイトも直接彼から2015年にVanda furva名で写真を頂きました。またSwiss Orchid Foundationのサイトに掲載の画像もこれらと同一です。こうしたサイトの画像の出所は2010年頃に撮影のJ. Cootes、W. Suarez氏からのものと思われます。

 ところがorchidspecies.comのVanda furvaページでは上記とは異なる花画像が表示されており、この画像はFaris Photo (2007年)からの引用です。またOrchidRootsにもVanda furvaの画像があり、花形状はFaris Photoと同じです。但し orchidspecies.comでは花画像は別種の可能性があるとの注釈が見られます。よってここまでの判断としてはVanda furvaの花画像は前記のJ. Cootes、W. Suarez氏の画像、すなわち下写真1-3の花で、Faris Photoの画像は別種とも考えられます。

 一方で近年、Vanda mindanaoensis (M. Motes他)名が2015年に新種として登録されました。その花画像はOrchidRootsに掲載され、またorchidspecies.comにもVanda mindanaoensisのページがあります。そのページのシノニム(同じ種であるが名前が異なる)項は空白となっており、すなわちVanda mindanaoensisは現時点において唯一の種とされます。しかし困ったことに、このVanda mindanaoensisは本サイトが所有する下写真、言い換えれば2010年以前からVanda furvaとするJ. Cootes、W. Suarez氏と花形状が酷似し、同種と思われます。

 さらにorchidspecies.comでVanda lindenii (Rchb.f. 1886年)を検索すると、ここにもJ. Cootes、W. Suarez氏のVanda furvaとされるフォームに酷似する画像が表示され、さらにシノニムにVanda mindanaoensisが記載されています。一方にはシノニムがあり、シノニムとされた一方(Vanda mindanaoensis)には相手方(Vanda lindenii)が無いという問題は登録された相互の時代の違いによる止むを得ない事象です。しかし種名が記録あるいは登録された時期が早い方にシノニムが無いのは分かりますが、後年の登録にシノニム記載が無いのは不可解です。またVanda mindanaoensisおよびVanda lindeniiのサイトそれぞれにはリップ側面からの画像が掲載され、これらは同一形状で本サイト写真3の画像とも同形です。これらの花形状による情報の結果としてVanda furva、Vanda lindenii、Vanda mindanaoensisの3種名の画像は微細なリップフォームの違いがあるものの同一種と思われます。Vanda lindeniiは葉幅が他種と異なるとされていますが、Vandaの葉形状は生息域や栽培環境で変化し、葉幅のみで別種とするのには疑問があり、精々亜種が妥当と考えますがこれは別課題とします。 

 整理すると見えてくるのはFaris PhotoとOrchidRootsが掲載するVanda furvaと、J. Cootes氏、OrchidaceaeおよびSwiss Orchid Foundationが掲載するVanda furvaの画像の相違をもたらした背景にはM. Motes氏の論文がJ. Cootes、W. Suarez氏のVanda furva画像を否定し、Vanda helvolaのようなリップ形状をもつ種をVanda furvaとしたことです。さらにこの論文の新種とされるVanda mindanaoensisは、前記したようにW. Suarez, J. Cootes氏が名付けたミンダナオ島のVanda furvaそのものです。であれば時系列的にはVanda mindanaoensisとされる種の発見者はW. Suarez, J. Cootes氏であり、彼らはそれを新種とは考えず既知のVanda furvaとし、その後M. Motes氏がそれを誤り??とし、ミンダナオ島のVanda furvaとされた種に、新種名を与えたことになります。つまり実態としてVanda mindanoensisはM. Motes氏論文にあるNew Species(新種)ではなく、種自体は2015年以前から異なる名前で知られ、その旧名からのNew Naming(改名)です。 

 花が咲き種名を確認しようとすると、地域差や変種と思われる僅かな違いで別種とされていたり、上記のような種名問題にもしばしば直面します。人が花や株形状の視覚上の判断で分類する限りこうした問題は避けられません。無論、正しい種名確認は、発見・登録当初のスケッチ図を見ることですがVanda furvaのように1830年代、すなわち日本では江戸時代で天保の大飢饉があった頃の資料がネット検索で得られても、モノクロスケッチ図の画像品質は悪く詳細が判断できないことがあります。半ばジョークですが名前の置き換え問題ならば、1833年の古いVanda furva名よりは、ミンダナオ島生息の2015年の新種(名)という表現の方が商売上”聞こえが良い”ことと、新種名の申請が受け入れられている以上、過去の情報を調べての結果が前提であろうことからW. Suarez、J. Cootes氏がミンダナオ島で見つけた種をVanda furvaとしたのは一時的な名称と解釈し、本サイトが所有する下写真については、Vanda mindanaoensisとしておきます。

 さて下写真で、写真4の株は2015年入荷から5年近く栽培し、1.2mに成長した写真1-3の花をつけた株の全体画像です。写真5の株は、またこれも複雑な話ですが、現在支援をしているフィリピンラン園2代目から、ミンダナオ島生息のリップが赤いVanda spとして2014年に購入した15株で、入荷して2年間程開花が無かったため未発売で、温室の最も目の付かない片隅に置かれ忘れかけていた株です。株形状が下画像と似ており今回の問題で光が当たり植え替えのためトレーに纏めました。もしかすると、写真1-3のリップは白色をベースに赤いラインですが、前記Vanda mindanaoensisをシノニムとするVanda lindeniiの花画像にあるリップは、赤色をベースに白いラインの違いがあり、2代目のリップが赤いという表現はVanda lindeniiのリップのような色合いかも知れません。 枯れた花茎が数本に残っており花を見過ごしてきたためどんな花が咲くか楽しみです。写真6はW. Suarez氏から頂いたOrchidaceaeと同じVanda furva名の画像です。ちなみにVanda mindanaoensisはネットでの国内マーケット(価格)情報はなく、Vanda furva (改め新名Vanda mindanaoensis)も当サイトのみです。

写真1
写真2
写真3
写真4
写真5
写真6

Phalaenopsis lindenii

 フィリピン固有種のPhal. lindeniiは胡蝶蘭原種の中で人気の高い種の一つで、ルソン島中央部、標高1,000mから1,500mの降雨量の多い地域に生息しています。本サイトの入荷株は東部Aurora周辺産です。ルソン島中部の乾期は11-1月でこの時期の前記標高域では日中以外15℃近くにもなります。こうした環境から栽培は中温が適しています。現地のラン園では高温環境でも問題は無いと言いますが、これまでマニラ周辺のそうしたラン園で株は何とか生きてはいるものの開花株を見たことがありません。Den. valmayoraeVanda javieraeの如くにです。

 本種を入手した趣味家の中で株は取り立てて弱っていないものの花が咲かない、あるいは咲いても1-2輪と言った状況であるとすれば、おそらくPhal. violacea、,Phal. schillerianaまたPhal. amabilisなどの高温環境に適した種と同居させ栽培しているのでないかと思います。殆んどの中温タイプ種で花が咲かない原因の多くは夜間温度が高すぎることです。一方でクールタイプではないので15℃を大きく下回ることも避けなければなりません。下写真は現在開花中のPhal. lindeniiで、リップの濃いフクシャ 色およびセパル・ペタルに目立つラインが入ったフォームは稀であることから撮影しました。 

Phal. lindenii
Phal. lindenii
Phal. lindenii

現在開花中の原種

 下写真は現在温室にて開花中の花の一部です。

Bulb. aeolium Sumatra
Bulb. trigonosepalum
Bulb. maquilingense
Bulb. jacobsonii
Bulb. sp Northen Luzon
Den. daimandauii
Den. nudum
Den. klabatense
Den. toppiorum taitayorum Northen Sumatra
Den. carinatum
Den. rindjaniense
Vanda roeblingiana

再三のドラキュラ Dracula severa

 浜松では現在Dracula severaが開花中です。orchidspecies.comの花画像は今一つなので本種を撮影しました。、線状突起を除くドーサルセパルからラテラルセパルの高さは8㎝、突起を含めると縦方向の長さが31㎝となる大型のドラキュラで、全体が毛羽立った迫力はかなりなものです。標高2,000mもの寒い高山で何を好んでこんな猿顔になってしまったのかその必然性が何度見ても不思議でなりません。

Dracula severa

Vanda merrillii クラスター株

 生息地が近年、コメやトウモロコシのプランテーションによって失われ希少種になりつつあるフィリピン固有種Vanda merrilliiの大株を3方向から撮影したものです。写真はサプライヤーから送られたものです。1.5m程の長い茎を含め10茎からなるクラスター野生栽培株で、全ての茎が直すぐに伸びたこれほど姿の良い株を見るのは初めてです。おそらくは野生株を生息地と似た気候下で、且つ周りに障害物の無い環境にて10年近く育てた株と思います。マーケットに見られるような50㎝程の1本茎からこのレベルのクラスター株に国内で育て上げるには10数年は必要で、その間の病害虫防除も含めた栽培条件も考えると至難と思います。写真の株はすでに販売予約済みとなりました。

写真1 Vanda merrillii
写真2 Vanda merrillii
写真3 Vanda merrillii

ドラキュラ、本当に猿の顔に似ている?

 前題の画像を見て猿顔には見えない、無理やり当てつけているだけでは?と思う人に答えてくれるのではないかと3点選んでみました。写真4はとぼけたというか泣きべそをかいたアニメキャラクターの顔の様で面白いので加えました。

写真1 Dracula gigas sp
写真2 Dracula amaliae
写真3 Dracula venefica
写真4 Dracula chimaera

今月前半に開花したドラキュラ

 現在、当初計画から2年遅れで70種程のDracula属を販売する準備を進めています。サプライヤーからのタグ(ラベル)に書かれた種名とこれまで5年間に撮影した花画像およびネット画像とを参照・確認しながらページ作りなどの作業が主体です。そこで気付いたことは、ネット検索では一つの種名に複数の異なる花画像が頻繁に見られ、どれが正しい種名花なのか、これほど混乱している状況を他の属種では知りません。猿顔を意識して花画像を見てしまいがちで、その結果顔かたちの微妙な違いが気になって別種と感じてしまうのかも知れませんが、サプライヤーのラベルがいい加減なのかネット上の画像が当てづっぽなのか、そうした中での同定に時間を取られています。

 下画像は浜松温室にて撮影した今月に開花した、また現在開花中のドラキュラです。見れば見る程、猿顔イメージが先行し、これらが蘭であることを忘れてしまいます。種名は取り敢えずサプライヤーのラベル名のままとしました。

Dracula dalessandroi
Dracula gorgona
Dracula janetiae
Dracula marsupialis
Dracula minax
Dracula villegasii

Flickingeria fimbriata (Dendrobium plicatile)

 昨夜(12日)、Palawan生息種としてEuphlebium sp名で入荷した株に蕾を見つけ、1日花であるEuphlebiumともなればのんびりは出来ないと今朝早く温室に向かいました。花を見たところFlickingeria fimbriata、現在名のDendrobium plicatileでした。本種は中国、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンと広範囲に分布しています。にも拘わらず、1日花故に人気が無いのかネットで調べてみると国内でのマーケット情報がありません。Flickingeriaと言えばリップ先端に髭がある面白い形状のFlikingerria scopaを思い浮かべます。また2017年3月の歳月記にキャメロンハイランドの露店で入手したFlickingeria fimbriataとリップが似た形状ではあるものの黄色で、セパル・ペタルの色やフォームが異なるFlickingeria spを取り上げました。こうした短命花は微香であるものの良い香りがします。人にはあまり興味を持たれない1日花とはいえ、長い歴史とそうなるべき事情もあったのだろうと思いつつ写真に収めました。

写真1 Dendrobium plicatile
写真2 Dendrobium plicatile