Dendrobium rindjanienseの新芽

 Den. rindjanienseについて7月の歳月記で、昨年暮れから4月頃までに発生した新芽の成長を取り上げましたが、ほとんどの株で再び新芽が発生しています。通常デンドロビウムは、大きな株でもない限り、その年に発生した新芽が、ある段階までのサイズになるまでの成長中は、それにエネルギーを費やすのか、次の新芽の発生は翌年のシーズンまでないか、あっても例外的なものです。しかし本種は株サイズに関わりなく、現在20株ほど栽培している中で8割以上の株に新たな芽が出ています。下写真がそれらの一部です。写真1, 2は今年3月の花と開花株で、他の7株は昨日(11日)撮影したものです。中温室内の本種が置かれた夏季の環境は18℃(夜間最低温度)から30℃(昼間最高温度)です。すべてブロックバークと炭化コルクのいずれかを支持材とし、 ミズゴケは常に湿った状態となるようにかん水をしています。

写真1 Den. rindjaniense
写真2 Den. rindjaniense
写真3 Den. rindjaniense
写真4 Den. rindjaniense
写真5 Den. rindjaniense
写真6 Den. rindjaniense
写真7 Den. rindjaniense
写真8 Den. rindjaniense
写真9 Den. rindjaniense

Dendrobium tobaense

 今年5月に1年ぶりに入荷したDen. tobaenseが新芽を伸ばし、10株ほどで蕾を付けています。最近は中温タイプのDen. tobaenseDen. toppiorumは全て炭化コルクへの取り付けです。これは、通常かん水は1-2日に一回ですが、コルク上に置くミズゴケの量で保水量は容易に決まり、根腐れを招く過かん水の状態を避けられると共に、通年でかん水量は一定で気にする必要が無いためです。ミズゴケに保水された水分は蒸散し乾いていきますが、重要な点は、かん水時の濡れた状態から気相のある湿った状態に早く移行し、如何にその状態を長く維持できるかどうかです。

 板状に敷かれたミズゴケは過剰な保水性(量)はないものの蒸散が早く、乾湿の変化は鉢に比べて急速となる欠点があります。 一方、鉢ではミズゴケは筒状に詰められており、保水性は高く蒸散はゆっくりと進む反面、鉢の中心部は長時間濡れた状態が続き、植え替え時にしばしば見られるように中心部の根は枯れ、新根は中心部には向かわず、鉢の内部側面に張り付きます。

 板状支持材の欠点を軽減するには、かん水時に一時的ではあるもののミズゴケに過剰に保留された水分を支持材が吸水し、その後は、ミズゴケからの蒸散による乾燥に対し、ゆっくりと吸水した水分を放出し長くミズゴケを湿った状態にすることです。支持材がそうした調湿機能をもつには多孔質性(水分を吸収する多数の微細な穴)が必要となります。炭化コルクにはこうした多孔性があり調湿機能があるとされていますが、どれほどのものなのかは今後調査する予定です。最近では経験値(かん水から次のかん水までの湿り具合)からミズゴケの量を決めており、今春の植え付けからは、根元周りのミズゴケの量はほぼ炭化コルクの厚み相当となっています。これはかなり厚く根の周りを覆っていることになります。この厚みは栽培環境の乾湿に大きく依存し不変的なものではありません。それぞれ炭化コルクを使用される方は自らの栽培場所で、かん水から次のかん水の間のミズゴケの湿り具合をチェックし、ミズゴケがカサカサに乾く状態がなく常に湿気のある状態になるようなミズゴケの量を決めることが最善です。下写真1は7日現在の炭化コルク付けDen. tobaenseの一部で、写真2は発生したばかりの蕾です。以降の写真は9株それぞれの新芽発生状況です。

写真1 Dendrobium tobaense
写真2 Dendrobium tobaense
Dendrobium tobaense
Dendrobium tobaense
Dendrobium tobaense
Dendrobium tobaense
Dendrobium tobaense
Dendrobium tobaense
Dendrobium tobaense
Dendrobium tobaense
Dendrobium tobaense

Bulbophyllum lasioglossum

 6月からこれまでBulb. lasioglossumが2-3株毎に入れ替わり立ち代わり開花してます。フィリピンルソン島標高1,000mの生息種で、30cm程の弓なりに下垂する花茎に、1cm程の花を、40-50輪開花します。リップ中央弁の縁には黒い細毛があり、風で前後にカクカクと動きます。現在20株ほど在庫があり、当サイトでは5バルブサイズを3,000円で販売しています。下写真はすでに花は散り始めていますが、1株に3本の花茎がついた画像です。2年前までは杉皮板でしたが、現在は炭化コルク付けです。

Bulbophyllum lasioglossum
Bulbophyllum lasioglossum
Bulbophyllum lasioglossum

中温室のCoelogyne bicamerataその他

 クールから中温室エリアで散水をしていたところCoel. bicamerataが開花しているのに気付き、この機会にと植え替えを行いました。Coel. bicamerataはスラウエシ島標高1,100m – 2,000mのコケ林に生息する中温タイプのセロジネです。国内マーケッをネット検索しても販売情報は本サイト以外なく、当方も2016年1月にCoel. spとして本種を入手して以来、入荷はありません。下写真1-3に見られるようにセパルペタルが白色でリップ基部が緑色一色の上品な色合いで、猛暑の中にあって清涼感のある姿です。果たしてどれだけ在庫があるのか調べたところ5株ありました。すでに前回の植え付けから4年近くも経っているので、これらを含めこれまでと同じ、スリット入りプラスチック長鉢にクリプトモスで植え付けを行いました。

 写真4は炭化コルクに植え替えしたDen. piranhaです。本種は.ボルネオ島の標高1,400m以上に生息しており、同じボルネオ島生息のDidtichophyllum節Den. olivaceumDen. lamrianumとは近縁です。これらもそれぞれ4-5株ですが栽培しています。当サイトが在庫するDen. olivaceumは白と緑色のflavaフォームです。問題はDen. piranhaは木製バスケット植えで良く成長し最長株では1m程になっていますが入手以来開花がありません。よく本種はミスラベルが多いとのことで、おそらくミスラベルであっても前記2種のいずれかと思いますが、それでも良いとする購入者以外、開花するまでは販売できないとしています。株形状からはそれぞれ3種には決定的な違いはありません。前記2種は今春に炭化コルクに植え替えを行い状態が良いので、写真に示すようにDen. piranhaもコルクに植え替え、これまでの薄暗い場所からLED蛍光灯と接触する程の近くに吊り下げてひたすら開花を待つばかりです。

 Coel. cupreaは5株程栽培をしており毎年開花しています。開花は常に花茎当たり1輪で数ヶ月間次々と咲き続けます。現在開花中の写真5もCoel. cupreaと思われますが、名称が cupreaからして銅色の筈にもかかわらず、この株だけが全体に薄黄緑色です。Coel. cupreaはボルネオ島とスマトラ島標高1,000m1-2,500mのコケ林の生息で低 – 中温種です。当サイトの株はボルネオ島生息株です。

 写真6は2003年登録でスラウエシ島標高1,400m以上に生息のバルボフィラムBulb. novaciaeです。こちらも4年ほど前に入手し現在2株のみの栽培です。岩性とされますが当本サイトでは炭化コルク付けの中温室栽培で毎年開花しています。15cmと大きな花です。入荷時のラベルは何故かBulb. sulawesi albaでした。本種もマーケット情報は当サイト以外見当たりません。

写真1 Coel. bicamerata
写真2 Coel. bicamerata
写真3 Coel. bicamerata
写真4 Den. piranha
写真5 Coel. cuprea
写真6 Bulb. novaciae

Dendrobium cymboglossum f. alba?

 浜松では24日より気温が若干低くなり夜間の温度も25℃近くまでになりました。そうした中、散水をしていたところこれまで尾状花序(垂れ下がった花軸に複数の花を付ける)に白い花が咲いているボルネオ島生息のDen. cymboglossumを見つけました。本種の一般フォームは、セパル・ペタルの表面が薄黄緑色あるいは薄ピンク色で、裏面には赤紫のラインや斑点があり、またリップ中央弁の中央から基部は山吹色ですが、今回の開花株はセパル・ペタルの両面がほぼ白に近く、またリップ中央弁基部は淡い緑色のflavaあるいはalbaフォームと思われる花でした。それが下写真1と写真2で初めて見るものです。この暑さの中、涼しい色合いです。写真3は一般フォームの参考画像です。

写真1 Den. cymboglossum f. alba?
写真2 Den. cymboglossum f. alba?
写真3 Den. cymboglossum common-form

病害虫防除

 昨日(22日)は8月に入って2回目の病害虫防除薬品を散布したところです。ベルクート(規定希釈)、ストマイ(規定希釈)、アディオン乳剤(規定希釈)、オルトラン(1/250倍)の混合としました。前者2つの薬品はそれぞれ高温多湿で発生率の高い、カビ系、細菌系対応として、また後者は特にオオランヒメゾウムシの病害虫除去が目的です。梅雨入りから9月中旬までは2-3週間隔での散布を、またカビ系と細菌系に対してはトリフミンやナレートとローテーションすることもあります。昼間は気温が高く薬害の恐れがあるため散布は夕方に行います。10月以降は状況判断となり例年では5月頃まで2ヶ月に1回程度予防として行う程度です。希少種や単茎性ランも多いため発病してからでは遅く、特に高温期での病害虫には気を使います。フィリピンやマレーシアの熱帯気候下では、ローカルマーケット向けの胡蝶蘭交配種栽培農家も多く、月1回の散布では少な過ぎ、ほぼ通年で2週間間隔で病害虫薬品の散布をするそうです。

Dendrobium punbatuense

 7月の歳月記に、Den. serena-alexianum名で入荷したデンドロビウムがDen. punbatuenseのミスラベルの可能性があることを取り上げましたが今月、3年近く前にDen. sarawakense名で入荷した株が開花し、調べたところこれも前記同様のDen. punbatuenseであることが分かりました。Den. punbatuenseは2008年Malesian Orchid Journalに掲載され、ボルネオ島Sabah州および南Kalimantan Meratus山周辺の標高400 – 1,000mに生息の高温タイプとされます。しかし2年間に渡って、2回もミスラベルで入荷した種としては偶然なのか、また果たして入手難な種であるかどうかは分かりませんが、ネット検索での国内での本種情報は当サイトのみで、また海外においてもマーケット情報(本種名とPriceで検索)が見当たりません。

 入荷時は開花確認後に販売予定であったため10株を杉板に取り付け中温室にて栽培をしていました。2年以上経過したため半年前に炭化コルクに植え替えたところ今月2株で開花しました。Den. sarawakenseは低 – 中温タイプで立ち性である一方、本種は高温タイプで下垂性(正しくは半立ち性)です。このため、これまでの中温室では栽培温度が低すぎて2年以上も開花がなく、それが今回の猛暑で3℃程温室の平均温度が上がったため開花したのかと。今度は吊り下げタイプとして3度目の植え替えを行い、同時に高温室に移動しました。これまでの観察では、落葉した茎(疑似バルブ)に花茎が発生することが特徴で、多数の細い根がしっかりとコルクに活着しており、Calcarifera節で丈夫な種です。下写真が今回の画像で、リップ基部にカルス突起が見えます。植え替えによる2ヶ月間程の順化期間が終われば7月の歳月記に取り上げた種と同様に3,000 – 3,500円で販売予定です。

写真1 Dendrobium punbatuense
写真2 Dendrobium punbatuense
写真3 Dendrobium punbatuense

Phalaenopsis hieroglyphincaの特大株

 今年2月にフィリピンのラン園にて、葉は萎びて薄く巻けてしまう程の張りの無い大きな株があったため何かと聞いたところPhal. hieroglyphincaとのことでした。間違いなくこのままでは枯れるのを待つのみの様態でした。しかし葉長は40cmを超え、しかも5株程のクラスターからなるPhal. hieroglyphicaとしてはこれまでに見たことのない大株で、ダメもとと浜松に持ち帰りました。

 浜松では、帰国後最優先でタチガレエースとバリダシンに根を1時間ほど浸け自然乾燥させた後、50cmx13cmx3cmの炭化コルクに植え付け、微風のある低輝度の場所に吊るし、毎日2回のかん水、1週間毎の薄めの液肥および6月からは2週間間隔での害虫、カビおよび細菌対応の薬品を散布してきました。植え付けから2ヶ月経過した頃から新根が、また葉の張りも少しづつ戻り始め、5ヵ月でようやく再生を確信しました。下写真がそのクラスター株で写真1にある50cm L形定規から最長葉はほぼ50cmであることが分かります。Phal. hieroglyphicaとしては異常な大きさで、花茎は9本出ていました。写真1でコルク板の右上に寄せ植えのように見える1株は左下のクラスター株の高芽で植え付けの際、空中に浮かんでいたためコルク上に乗せて縛ったものです。写真2は左側面からの撮影、写真3はLサイズ(左)と今回の特大(右)サイズを比較したものです。写真3左の小さく見える株はそれでも葉長28㎝のLサイズです。

写真1 Phal. hieroglyphica
写真2 Phal. hieroglyphica
写真3 Phal. hieroglyphica

Coelogyne sp Palawan

 昨年8月の歳月記「Coelogyne Palawan」で取り上げた種名不詳のフィリピンPalawan諸島生息のCoelogyne spが開花しました。下写真がその画像で、写真6はこのsp種との比較のためのCoel. palawanensisの株画像です。形態からはTomentosae節でCoel. palawanensisやボルネオ島Coel. hirtellaの近縁種と思われます。しかし、それらとは株形状が異なり、sp種は写真6のCoel. palawanensisのような線形葉ではなく倒披針形であり、またリゾーム(バルブ間の距離)が長いことが特徴です。花形状はCoel. swanianaに酷似するものがありますが、こちらも疑似バルブは卵形であり花茎は下垂します。写真に見られるようにsp種のバルブは細長い円錐形で、花茎は下垂ではなく写真1からはバルブ基部を覆っている枯れた固い托葉に押さえられ、バルブにほぼ並行に伸長しているものの上方に向かう性質が見られます。葉、バルブ、花茎、およびリップ形状を含めたAND条件でネット検索しても現在該当する種が見当たらないことから新種あるいは前記した類似種の変種の可能性があります。リゾームが写真1に見られるように長いことや入荷時のバルブと根の形態からほぼ垂直面での着生種と見なして炭化コルク付けとし、中温室での栽培です。

写真1 Coel. sp Palawan
写真2 Coel. sp Palawan
写真3 Coel. sp Palawan
写真4 Coel. sp Palawan
写真5 Coel. sp Palawan
写真6 Coel. palawanensis