Bulbophyllum fascinator corazonae

 タイ、マレーシア、スマトラ、ボルネオと広範囲に分布するBulb. fascinatorのフィリピンフォームであるBulb. fascinator corazonaeは、ミンダナオ島標高1,000mに生息します。付属名のcorazonaeはPurificacion Orchidのオーナーで、現Philippine Orchid Scciety (POS) 会長名に由来し、当サイトが在庫する株は全て当人から直接入手したものです。Bulb. fascinatorは生息地によって様々な色のフォームがあり、corazonaeフォームは下写真2に示す黄緑のベース色に、えんじ色の斑点があり、しばしば黒に近い色も見られます。開花は秋から春が多く、当サイトの株は、写真1に見られるように、ラテラルセパル中央から先端部が緩やかにカールしながら紐状に長く伸び、ドーサルセパルからラテラスセパルそれぞれの端間のNSサイズは25cmを超える大きな花です。写真3は今回植え替えを行った株の一部で、株の伸びしろ分を大きく取り、35cm長のコルクに、根の乾燥を避けるため厚くミズゴケを敷き取り付けたもので、写真はそれぞれ葉付7バルブ程の株です。本種は下垂する花形状とそのサイズから、ベンチ置きのポット植えはできません。またフィリピン生息種は標高1,000mのため中温タイプとなります。高温でも栽培は可能ですが、開花を得るには中温環境が適しています。

写真1 Bulb. fascinator corazonae
写真2 Bulb. fascinator corazonae
写真3 Bulb. fascinator corazonae

バルブ間のRhizomeの長いBulbophyllum virescensの新芽発生期

 Bulb. virescensBulb. binnendijkiiなどRhizome(バルブとバルブを結ぶ根茎)の長い種は、バスケット、トレーあるいはヘゴ板などいずれに植え付けても、2年もすればリゾームが伸び、新しいバルブはやがて植え付け材から飛び出してしまいます。そのまま放置すれば新バルブの根は空中に伸びたままとなり、余程の高湿度環境でもない限り成長は止まってしまいます。当サイトでは一部をバスケットに植えているものの、多くは60cm程の長い炭化コルクに取り付け、新たなリゾームの伸びしろ分をなるべく広くとり、それでもやがてはみ出す時期が来れば、株分けして新たな植え付けを行うことにしています。

Bulb. virescensBulb. binnendijkiiとシノニムの関係とされていますが、標高800m程に生息することから当サイトでは高温室にての栽培となっています。一方、Bulb. binnendijkiiは標高1,000m以上の生息のため中温室となります。これらの新芽発生は春と、猛暑が去って温室内の気温が日中30℃以下、夜間20℃前後になる秋に盛んになります。下写真1はボルネオ島とマレー半島からのBulb. virescensで、写真2および写真3はそれらに発生した新芽を28日に撮影したものです。ほとんどのバルブ基に新芽が見られます。しかし、こうした芽が成長し葉が開くまでの栽培は中々難しく、今年から植え付けは、これまで以上にコルク上のミズゴケを厚く敷き、決して乾燥させないようにしています。経験では、根周りの乾燥状態が繰り返されると、特に葉が開く前のバルブが未発達な新芽は縮み枯れ落ちることが多く、数ヶ月間は24時間常に根周りを湿らせた状態にすることが必要です。このため乾燥気味な環境ではこうしたコルク付けは適さず、景色は良くないものの、根を常に湿らせることが容易なトレーやバスケットにミズゴケを厚めに敷き、その上に植えつける栽培が有効です。

写真1 Bulb. virescens (Bulb. ericssonii)
写真2 Bulb. virescens (Bulb. ericssonii)
写真3 Bulb. virescens (Bulb. ericssonii)

現在開花中のバルボフィラム4点

 多数のバルボフィラムの開花期を迎え、当サイトでは種名不詳種が多いこともあり、これらの中にも入荷後始めて花茎を付けた株も数株に見られ、これからの2-3ヶ月が楽しみです。下写真は現在開花中のバルボフィラム4点です。写真1のBulb. pardalotumBulb. ocellatumとよく間違えるのですが、リップ先端が扁平で丸みがある一方、Bulb. ocellatumは細く尖っています。標高1,200mの生息種です。写真2のBulb. nasseriはラテラルセパルの長さが5.5cmですが、ごく稀に8cm程の長さの株が見られます。こちらは低地生息種です。

 写真3はタイ、マレーシアに分布するBulb. anandareiです。写真の花は一般種のラテラルセパルの長さに比べて短く、反面その幅は一般種と同じかやや広いため、丸みがあり可愛らしさを感じさせる形状で、orchidspecies.comではAnother Cloneとして画像を掲載しています。この株はマレーシアキャメロンハイランドで入手したものです。生息域は標高1,000mで中温タイプとなります。写真4はBulb. plumatum yellowです。一般フォームは紫色で、当サイトではこの一般フォームをシノニムの関係であるBulb. jacobsoniiとの種名で扱っています。よって写真のyellowフォームはBulb. jacobsonii fma (あるいはvar.) flavaとも呼ばれています。フォーム (fma) か変種 (var) かは本種が一般フォームの中に混ざって生息しているか、それらとは異なる地域に生息しているのかで別れますが、現在はfmaが主流のようです。標高は1,000-1,500mとされ、こちらも中温環境が適します。こうした標高1,000mから1,500mの中温種の多くは高温環境でも栽培が可能ですが、適温である中温での栽培と比べて、現状維持までか、株は伸長するものの開花が余り見られません。国内では、北陸、中部山間部、福島以北の、東海関東地域と比べ高温域で5℃程年間平均気温が低い環境であれば、高温タイプ(18℃-34℃)と同居しても成長や開花に問題は見られません。

写真1 Bulb. pardalotum Luzon
写真2 Bulb. nasseri Leyte
写真3 Bulb. annandalei Malaysia
写真4 Bulb. plumatum Malaysia

現在開花中のデンドロビウム4点

 気温が下がり一日の昼夜の温度差が大きくなると各種で開花が始まります。現在浜松温室にて開花中のデンドロビウム4種を撮影しました。写真1のDen. igneo-niveumは晩秋から春にかけて開花が見られます。写真は7輪の開花です。写真2は1昨年入手のパプアニューギニア生息のDen. vexillariusでセパルペタルは白色ですが、青色も8株程栽培しています。写真3のDen. dianaeはグリーン系、イエロー系、赤と黄色のツートンカラー系の3フォームが見られますが写真はグリーン系です。2010年登録の比較的新しい種です。また写真4はフィリピンミンダナオ島のDen. boosiiで、現在が開花最盛期で無数の花が開花中です。写真はその一部です。こちらも2011年登録の新種です。

写真1 Den. igneo-neveum Sumatra
写真2 Den. vexillarious white PNG
写真3 Den. dianae Kalimantan Borneo
写真4 Den. boosii Mindanao

Dimorphaorchis lowiiとVanda florescense cluster

 下写真1は今年5月に入荷したDmrphr. lowiiの順化終了後の現在の画像です。多くの新根がバスケット内に出ており、一部バスケットの下に根が伸び出した株は湿度対策で不織布を巻いています。現在8株あり、一枚の葉長は50cm以上です。ちなみに属名のDmrphrはDimorphaorchisの公式の略語です。一方、写真2は2016年入荷のVanda florescensです。入荷時は伸長50㎝程の2本の茎からなる株でしたが3年間で1m近くまで伸長し、現在ではすでに30cm-50cmとなった4つの新芽と、合わせて6茎のCluster株になりました。こちらは展示用として栽培しています。

写真1 Dmrphr. lowii
写真2 Vanda florescens cluster

マレーシアおよびインドネシアに生息する高価なVanda

 フィリピンを除くマレーシアおよびインドネシア生息のVandaの中で、世界のマーケットにおいて比較的高額な種を下写真に取り上げてみました。写真は当サイトにおけるそれらの栽培風景で全て開花サイズの野生栽培株です。Vanda lombokensisiは15株程を、Vanda florescensは6株、Vanda devoogtiiは5株、Vanda deareiは6株、またVanda foetidaは2株それぞれ現在在庫中です。これらVandaはNT Orchidを除き、国内ラン園を始めシンガポールAsiatic Greenでも現在ネットでのマーケット情報が見られません。

 Vanda foetidaは米、ヨーロッパ向けの2019年度価格でUS$70前後が見られ、上記他種(US$100以上)と比べ若干安価なようですが、写真6後方の株は1m超えの大株で、このサイスはかなり高額になるかと思います。当温室では写真2に見られるように、幾つかの株に白い布が巻かれています。これは農業用不織布で、同居するVanda以外のランに合わせた温室環境ではベアールート栽培のVandaの根にはやや乾燥気味となるため、通気性や透水性を保ちつつ根周りの湿度を幾分長く保持する目的の処置です。また木製バスケットとしている理由は、根が木肌に良く活着するためで株はクリプトモスで抑えています。

 Vanda lombokensisについては、写真1のコルク付けだけでなく、バスケット植えも半々で行っています。これまでフィリピン種以外のVandaの多くは、スリット入りプラスチック鉢に大粒バークで植え付けていましたが、気相や通気性が少ないためか当温室では良い結果が見られず、今年夏季からの植え替えではコルクやバスケットに替え、さらに根の乾燥を嫌う種には根周りに不織布を巻くことにしました。

写真1 Vanda lombokensis (Indnesia Lombok Isd.)
写真2 Vanda florenscens (Indonesia Flores Isd.)
写真3 Vanda helvola f. flava (Java. Sumatra. Borneo)
写真4 Vanda devoogtii (Indonesia Sulawesi)
写真5 Vanda dearei (Borneo)
写真6 Vanda foetida (Indonesia Sumatra)

Dendrobium sp (endertii aff.)のflavaフォーム

 今度は歳月記2月に取り上げたスラウェシ島からのDen. sp.で、Den. endertiiに似たロット株にリップの褐色斑点の無い無地(薄い緑色)のflavaフォームの花が開花しました。昨年12月と今年1月に両ロット合わせて40株ほどを入荷した中の1株です。下写真1は一般フォームで、写真2が今回のflavaフォームとなります。

写真1 Den. sp (endertii aff.) Common form
写真2 Den. sp (endertii aff.) flava form

Bulbophyllum inunctum、Bulbophyllum membraniforiumとBulbophyllum maculosum (sanguineomaculatum)

 Bulb. inunctumが現在開花中です。本種は主にボルネオ島とマレー半島生息とされており、フィリピンにも生息するものの、orchidspecies.comには記載されていません。これはフィリピンでの発見が近年(W. Suarez氏の画像記録は2007年)であったためと思います。当サイトでは昨年フィリピンからBulb. glebulosumとの株を20株程入荷しましたが、これが全てミスラベルでBulb. inunctumでした。同じAurora州の生息のため取り扱いを誤ったと思われます。バルボフィラムとしては花サイズが12cmと大きく、またマレーシア種は、セパルペタルのベースが淡いピンク色にベリー色のラインのあるフォームに対し、フィリピン種は下写真のようにベースが黄色で赤茶色のラインやドットが入り、それぞれの色合いは、かなり異なります。フィリピン種はバルボフィラムの中ではその色とサイズから、よく目立つ存在です。生息域は標高500mで高温タイプです。

 orchidspecies.comのシノニム項によると、4年前(2015年)にBulb. inunctumBulb. membraniforiumの亜種に位置付けされたようです。そこで3週間ほど前に開花していたBulb. membraniforiumも写真3に示しました。ペタルとラテラルセパルの形状がBulb. inunctumとはかなり異なりますがリップはよく似ています。しかし写真1と写真3が亜種の関係とするのであれば、歳月記4月末尾に取り上げたDen. deleoniDen. annemariaeの、両者の違いを見分けることが困難な程の形状差にも拘わらず別種とした判断には甚だ疑問で、 その程度の差であっても別種とすることを是とするのであれば、むしろ下写真1と写真3は亜種の関係ではなく別種の方が分かり易いと思えるのですが。こうした似た者同士の分類には人為分類ではなく生体分子分類法が必要と感じます。

 一方、Bulb. membraniforiumで画像をネット検索すると、Bulb. maculosumを含めこれら3種がBulb. membraniforium名でごちゃ混ぜ状態で、あまりにひどいのでBulb. maculosum(本種は歳月記7月末尾に記載)も写真4に掲載しました。バルブの太さ形状はBulb. membraniforium >Bulb. inunctum > Bulb. maculosumとなります。花サイズは下写真からは分かりませんが、Bulb. inunctumは12cm、他は3-4cm程とされ、圧倒的にBulb. inunctumが大きいことがorchidspecies.comの記載となっています。これはペタルが、下写真1,2に見られるように後ろに反った状態ではなく、開花後2-3日以内の反り始める前の左右に一直線に開いた状態時のペタルスパンの長さを表したものです。このような開花から日が経つとペタルが後ろに反る性質はDen. tobaenseBulb. nitidumも同じです。当サイトでは下写真3種を今年の東京ドームやサンシャインで出品し、4バルブ1,500円から、35cm炭化コルク付けの10バルブほどの株は3,000円で販売しました。

写真1 Bulb. inunctum
写真2 Bulb. inunctum
写真3 Bulb. membraniforium
写真4 Bulb. maculosum (sanguineomaculatum)

Aerides lawrenciaeとAerides magnifica

 現在、Aerides lawrenciaeAerides magnificaが開花中です。Aeridesの中でAerides odorata、lawrenciae、quinquevulneraはそれぞれに変種やフォームが多く、フィリピンからの入荷にはミスラベルがしばしば見られます。最も簡単な識別はAerides odorataのリップは黄色、Aerides lawrenciaeは花サイズが4cm以上と他と比べて2倍近い大きさであることです。下写真1はAerides lawrenciaeで、写真2はその花の拡大写真です。実はこれも2年前にAerides inflexaの注文で入荷した中のミスラベル株です。写真3はAerides magnificaで、これまでAerides odorata Calayanとか、Aerides quinquevulnera Calayanタイプとされていたもので、昨年夏ごろまでは入手難でしたが、当サイトでは本種の入手ルートがフィリピンに新たに確保出来たこともあり、比較的容易となりました。現在浜松温室では20株程を栽培しており、8株に蕾が見られます。

 現地ではほとんどがベアールートの吊るし栽培です。国内ではベアールートでは乾燥気味となるため、そうした環境では歳月記8月で取り上げたAerides leeanaで行っているコルク付けや、あるいはバスケットとクリプトモスなど、何らかの根周りの湿度を高める植え付けが有効です。バークとプラスチック鉢では気相や通気が不足がちになり、当サイトでは、これまで良い結果が得られていません。

写真1 Aerides lawrenciae
写真2 Aerides lawrenciae
写真3 Aerides magnifica

Phalaenopsis modesta Sabah red

 Phal. modestaの一般フォームはセパル・ペタルが白色ベースに淡い紫色の斑点をもつ小型の胡蝶蘭原種で、斑点模様は様々です。本種は葉下に開花することからヘゴやコルク付けで栽培されています。4年ほど前に、下写真1のセパルペタルのほぼ全体が赤紫(フクシャ)色の稀なフォームをもつ株が1株あり、これを自家交配し、1昨年フラスコ出しを行い、現在は写真2のようにBS近くになっています。国内での本種の開花期は冬から春で、来春には初花が得られるのではと期待しています。花を確認次第、販売をする予定です。

写真1 Phal. modesta Sabah red
写真2 Phal. modesta Sabah red