Dendrobium wattii とDendroium christyanum

 Den. wattiiはミャンマー、中国雲南省からベトナムまで、Formosae節では最も標高の高い1,500-2,000mの生息種の一つです。このため栽培はコールドからクールタイプとなり、Den. vexillariousなどと同じ環境での栽培となっています。2年前に本種をspとして初めて取り上げ、昨年2月にはこのspをDen. wattiiとして再記載しました。 今月に入り、3度目となる開花があり、そこで幾つかの問題が再び浮上しました。

 それは疑似バルブ(以下茎)の形状についてです。一つはorchidspecies.comのに見られるような茎全長が均一の太さで表面にFormosae節固有の黒い細毛があるタイプと、細毛がほとんど見られず茎の中央部から太くなっているタイプがあることです。これまでの花の画像は後者の株でしたが、今回の開花は下写真1に見られるようにFormosae節の一般的な特徴をもった株です。花形状は同じであるものの茎の形状はかなりの違いがあります。こうした特性はCalcarifera節の一部にも見られますが、果たしてこれが個体差なのか環境によるものかは分かりません。

 こうした中、今回タイからDen. christyanumが入荷しましたorchidspecies.comのDen. christyanum花画像を見て、一見下写真1のDen. wattiiと何が違うのかと、同一節で、花サイズが同じ、また生息地も重なることから相違点を目視で調べていたところ、ペタルの形状がDen. wattiiは卵形であるのに対してorchidspecies.comのDen. christyanumは披針形である点です。しかしDen. wattiiDen. infundibulumDen. christyanumなどのDen. formosum complexは似て非なる種が多く、判定に戸惑います。Den. formosum complexの種の同定にはDNA分析が必要かとも思います。 

 同様に、今回入荷したDen. christyanumの疑似バルブ形状も問題です。この茎は同時に入荷したDen. scabrilingueに似て太く短い形状で下写真2に示します。画像検索でも多くは太く短い茎が見られます。しかしorchidspecies.comのDen. christyanumページにあるplant and flowersに見られる細長いほぼ同じ太さの茎形状と、下写真2の形状とは別種の如く異なります。orchidspecies.comにあるこの写真はDen. margaritaceumでこの種はDen. christyanumのシノニムとされているため同種と見なしたと思われますが、このような疑似バルブの相違があるにもかかわらず同種とは何かの間違いなのか、それともこれもFormosae節の有り様なのかは今のところ分かりません。

写真1 Den. wattii
写真2 Den. christyanum

Dendrobium dianae

 Den. dianaeは2010年命名のボルネオ島カリマンタン生息の新種です。2016年12月の歳月記に赤と黄色のツートンカラーの本種を紹介しました。その後これまでに数回本種名の株を入荷をしましたが、2回目となる昨年春の入荷株はミスラベルでした。かなり希少種のようで本物の入荷は容易ではありません。昨年10月に3回目となる20株ほどを入手した株はそれぞれ5cmにも満たない子株で、高芽か新芽の株分けと思われる様態(株形状が不揃いで棒付け)でした。この株をスリットプラスチック鉢にミズゴケで植え付け、特に通風の良い場所に置き栽培していたところ成長が活発で、現在20-30cmにまで伸長しています。その1株が開花し撮影したものが下写真上段です。ツートンカラーは本種の一つのフォームで一般的には単色のようです。開花時には薄緑色でやがて黄化していきます。

 本種と似た種にスマトラ島生息のDen. hymenophyllum green(下写真下段)がありますが、Den. hymenophyllumのセパル・ペタルは蝋質であるのに対してDen. dianaeは透明感があり、また距(Spur)が前者はほぼストレートに対し、後者は強く湾曲し先端が前方を向いています。

写真1 Den. dianae
写真2 Den. dianae
写真3 Den. hymenophyllum Green
写真4 Den. hymenophyllum Green

Dendrobium lasianthera

 4月から6月は多くのデンドロビウムSpatulata節の開花期です。中でもニューギニア生息のDen. lasiantheraは1mを超える疑似バルブに50cm程の花茎を2-3本伸ばし、花茎当たり10-15輪の花を付けるため全開時にはかなり華やかです。本種は3-4種のカラーフォームがあり、下写真は2つのそれぞれ異なるフォームです。

 本サイトでのSpatulata節の栽培はスリット入りプラスチック深鉢にクリプトモス100%と、大粒のコルクチップとバークミックスを植え込み材としています。現地で見られるような木炭を利用したいのですが、国内の炭はPhが高く使用できません。海外の炭を輸入販売する国内の資材業者に期待しています。

写真1 Den. lasianthera
写真2 Den. lasianthera

Dendrobium hercoglossum fma. album

 現在マーケットにあるDen. hercoglossum albaは実生ですが、マレーシアの趣味家がマレー半島Genting Highlands生息の野生株を栽培しており、これを3年前に新芽付きの1バルブを分けて頂きました。浜松温室にてココナッツファイバー巻きに取り付けて栽培していましたが1年毎に倍々と株が増え、今回のサンシャインラン展にその分け株を販売しました。マーケットの実生でしばしば見られる一般種にある蕊柱先端の赤味が残っていることもなく、野生株の完全なアルバフォームです。

写真1 Den. hercoglossum album
写真2 Den. hercoglossum album

Aerides krabiensis

 本種はマレー半島およびタイ生息の岩性ランで15cm程の花茎に2-3cmの明るいコバルトバイオレット色の花を12-15輪同時に開花する華麗な種です。にも拘らず、マーケット情報が少なく現在の市場価格が分かりません。

 今回入手した種はクラスター株で下写真に示すように、取り付けは炭化コルク(写真1)と、木製バスケット(写真2)の2種類に分けて植え込みました。バスケットの植え込み材はクリプトモスです。これ程の花を付ける種でありながら、サンシャインラン展に出品したのですが引き合いがありませんでした。開花している状態でないとその素晴らしさが分からないのかも知れません。

写真1 Aerides krabiensis
写真2 Aerides krabiensis

Vanda coerulescens

 サンシャインラン展に本種を販売用として単茎タイプを6株と、見本用のクラスター1株を出品しました。単茎タイプは2,500-3,000円で販売しました。下写真は4-5茎からなるクラスター株でで3株が現在順化中です。このクラスター株は、上記Aerides同様に、1-2年栽培し展示会出品を計画する趣味家向けとして仕入れたものです。

Vanda coerulescens

サンシャインラン展

 17日からサンシャインラン展が始まり、出店者にとって今日(16日)は搬入日です。本サイトでは今回も少量多品種の出品で、バルボフィラムだけで90種程となります。その中には本ページで取り上げたBulb. violaceolabellumなどと共に、一般サイズの2倍ほどの花サイズをもつパプアニューギニア生息のBulb. cruentum giantやバルボフィラムの中で最も小型種とされるBulb. moniliformeも含みます。一方、デンドロビウムは全てに新芽をもつ順化済のDen. rindjanienseDen. papilioなど本サイトでこれまで紹介してきた話題種に加えて、Den. christyanum、chysocrepis、scabrilingueAerides krabiensismultiflora、またVanda coerulescensなどベトナム、ミャンマー、タイ、雲南省からの本サイトとして初めて販売する種が15点程含まれます。特に今回、Vanda coerulescensは将来の展示会向け育成を目的とした大株を参考展示します。

Bulbophyllum fascinator semi-albaとBulb. blepharistes

 こちらもサンシャインラン展に出品の2点です。市場価格を調査したところ5,000円の情報がありました。下写真1がBulb. fascinator semi-albaで1株が葉付バルブ5個以上あります。価格は実生のため2,500円です。写真2はBulb. blepharistesです。こちらの株は野生栽培株でそれぞれ先端のリゾームが伸びた先に新芽が付いており、これを含め4-6葉で3,000円です。仕入れ値としては後者の方が安いのですが、リゾームの伸び癖が悪く、炭化コルクへの植え付けが極めて大変(一つのバルブを真っ直ぐ立てようとすると、その前後のバルブが横を向いたり、リゾームが弓なりであったり等)で時間が掛かり、植え付けには相当の忍耐が必要で、その手間代分です。Bulb. blepharistesを扱って分かったことはポット植えは難しく、一体、栽培家は何にどう植え付けているのかと画像検索したところ、やはりポットに植えつけられた画像がほとんどありません。見方を変えれば、それもこの種の個性でそのユーモラスな花フォームと同様に魅力を感じます。

写真1 Bulb. fascinator semi-alba
写真2 Bulb. blepharistes

Bulbophyllum violaceolabellum

 17日からのサンシャインラン展にバルボフィラムについては90品種ほど出品しますが、本種はその一つです。ネットから国内ラン園の価格を調査したところ2バルブで8,000円の情報がありました。流通が少ないのかそれ以外には該当するサイトは見つかりません。下写真1は今回出品のBulb. violaceolabellumで炭化コルクに取り付けた直後の画像です。全て1株が5バルブ以上となっています。一方、右の写真2は左が昨年Cameron Highlandsにて入手した株、右が今回の株です。まるで大きさが異なります。

 ラン展での価格ですが写真の株に見られる5バルブ以上で2,500円を考えていたのですが、炭化コルク取り付けのコストを加え3,000円とする予定です。よって現在の国内市場価格の1/3以下ではと思われます。B to Bは行いません。浜松温室に来られベアールートで買われる方には2,500円です。この市場との価格差から何か販売戦略的な考えがあるのかと思われるかも知れませんが何もありません。あくまで本サイトは仕入れ値と栽培コストから価格を決めているだけです。

写真1 Bulb. violaceolabellum
写真2 Bulb. violaceolabellum