現在開花中の2点:Dendrobium wilsoniiとPhalaenopsis fasciata

 中国南部の標高1,000m – 1,300mに生息のDen. wilsoniiが開花(下写真左)しています。orchidspecies.comによると本種の花サイズは2.5cm – 4cmとありますが、今回開花した株はペタル間のスパンで7.5cmと大きく、全ての葉が落葉した疑似バルブにこれだけ大きな花が着くと良く目立ちます。環境によっては最大とされるサイズのさらに1.5倍のサイズになり得るのかどうか、あるいは4Nタイプかは次回の開花の再現性に待つしかありません。本種はorchidspecies.comでクールタイプとされていることから夜間平均温度は15℃となりますが本サイトでは夜間20℃の中温栽培です。

 一方、写真右は先月初旬に入荷したPhal. fasciataの野生栽培株です。こちらは高温タイプで胡蝶蘭原種では珍しいポットで立植えができるタイプです。この種の入荷は7年ぶりとなります。入手難ではなくPhal. lueddemannianaPhal. sumatranaに押されて目立たないため人気が今一つであることが原因です。今回入荷の株はこれまでのPhal. fasciataと比較してベース色がやや緑色を帯びており落着いたフォームです。本サイトでの本種の価格は先月の歳月記に取り付け前の株画像を掲載しましたが野生栽培株で2,500円です。胡蝶蘭原種については在庫数が3-4年前と比べ種類、数共にめっきり減っており年内には再び全55種程を集めたいと取り組んでいます。

Den. wilsonii
Phal. fasciata

オオランヒメゾウムシによる被害と対策

 昨年1月にPurificacion Orchidから全蘭サンシャインラン展の売れ残りとしてRhyncostylis rieferiiを数株引き取りました。同年8月、その株の頂芽に円形の黒い斑点が数点発生し、その時点では斑点病の一種かと思いトリフミンを散布しました。その後、年末になってデンドロビウムSpatulata節の数種類の新芽を始め、散発的に他の数種にも被害が見られるようになり、よく見ると斑点には斑点内の葉肉がナメクジによる食害のように葉脈だけが残った擦れた様態もあり斑点病にしては不可解で害虫の疑いが濃くなりました。そこで深夜懐中電灯で見回って調べたところ、黒い5mm程のゾウムシのような長い口吻を持った虫がデンドロビウムの新芽に多数見つかりました。

 そこで殺虫剤テルスターを散布した結果、虫は消え食害も止まったものの数か月後に再び同じ被害がデンドロビウム、パフィオペディラム、Aerides、Vandaに現れ、ゾウムシ類の害虫について当サイトと取引のある専門の方からも情報を頂き、その害虫がオオランヒメゾウムシであることが分かりました。

 ”沖縄県のラン園場に発生したオオランヒメゾウムシ” 大石、上地、他、九病虫研会報53, pp:111-113 (2007)によると、この害虫は東南アジアに広く分布しており、国内では1996年東京、1978年千葉県、1990年愛知県、1992年大分県で採取されており、海外においてはシンガポール、フィリピン、タイ、インドネシアなどで記録されているそうです。被害は主に新芽と茎でVandaは根も含まれます。本サイトではAeridesは花茎のみが食害されています。下写真上段は本サイトで捕獲したオオランヒメゾウムシで、下段はそれぞれ左からDen. linealeRhyncostylis rieferiiPaph. sanderianumです。この被害は極めて深刻で頂芽が写真下段のような病痕となれば商品としての価値がなくなり、新しい新芽を待たなければならなくなります。一つの救いはナメクジと異なり齧られた後からこれまで細菌性の病気が発生しておらず、いわゆる’傷’状態であることです。軟腐病のような細菌性の病気をしばしば伝染するナメクジとはこの点が異なります。

 当初は前記したように殺虫剤テルスター水和剤の規定希釈の散布を行いました。これで散布後に成虫をほとんどを見かけなくなりましたが、かなり弱った状態ではあるものの1両日後に数匹の生存が確認できました。これら成虫はやがて死滅するのか再起するのかは不明です。前記会報に記載の成虫に対する殺虫効果としてアセフェート水和剤と合成ピレスロイド系殺虫剤が確認されているとのことで今年に入り、ピレスロイド系であるテルスターの1000倍希釈とアセフェート成分をもつオルトラン乳剤250倍希釈を混合して散布しました。それでも3ヶ月程経過すると再び成虫被害が観測されます。これらは室外から新たに入ってきたものの可能性が高いと考えられます。と言うのは夏季は昼間、温室の入り口のドアーを開放しており再発被害が常にその入り口周辺の株に多く見られるからです。

 葉や茎を齧ることによって散布した殺虫成分が体内に入り効果が出る浸透移行性薬剤では後手に回ることになり、農薬が体に触れると直ちに効果が現れる即効性(ノックダウン効果)のある合成ピレスロイド系殺虫剤トレボン乳剤(成虫用に)と茎の中の幼虫には浸透移行性薬剤であるオルトランの2種類の殺虫剤を新たに混合して3月から10月の期間で3回散布することにしました。現在は収まっているもののランの成長期には2-3ヶ月間隔での散布が必要です。これら2種類の組み合わせによる植物への薬害はこれまでの3回の散布においていずれにも観測されていません。ちなみに病害虫防除には、薬剤散布を薬品ごとにそれぞれ行うことは面倒であり、最近では上記薬品と共にトリフミン(耐カビ系病害)、アグレプト乳剤(耐細菌性病害)を含め全てを混合して済ませています。薬剤耐性を防ぐため、耐カビおよび細菌性薬品はダコニールやナレートなど他の薬品と交替して使用しています。

 猛暑の中、夏季の間は温室の外に株を出し栽培している趣味家も多いと思います。熱帯性の害虫と思いますが、温暖化によりどこから飛来するか分からない状況下においては、従来ならばナメクジ被害と思われた下写真のような症状が出たら、この害虫を疑うことも必要と思います。ナメクジ用防除剤では効果は無く、また数多い薬品の中で効果が確認されたのは会報によれば現状、前記の成分を含むもののみであり、害虫防除剤なら何でも良いのではと思われている趣味家の参考にと、この被害について取り上げてみました。

Vanda coerulescens

 5月にタイから入荷し、蘭友会サンシャインラン展に出品したVanda coerulescensが現在10株程のそれぞれで一斉に開花が始まりました。期待通りのブルーの花でひとまず安心しました。ネット画像には今回開花の花のようなセパル・ペタル及びリップ共にブルーのフォームや、セパルペタルが白色あるいはリップがピンク色なども見られます。写真3は5月撮影のクラスター株で、写真1および写真2の花は8月11日の撮影です。

写真1 Vanda coerulescens
写真2 Vanda coerulescens
写真3 Vanda coerulescens

Dendrobium virgineum

 こちらもミャンマー、タイ、カンボジア、ベトナムの標高1,600m以下に生息するクールから中温タイプのFormosae節デンドロビウムです。仮植えをした当初は、このところの猛暑下で元気がなく、生息環境は同じ節であるDen. tobaense(800m – 1,500m)と似ているのではと推測し中温室に移動しました。いずれにしてもこの節については素焼き鉢とミズゴケ栽培は、1年はもつもののその後はじり貧となることが多く、昨年7月より根がヘルシーである内にと、乾湿サイクルのメリハリが良いヘゴ板や炭化コルクへの植付けに替えており、今回も本植えはそのようにしました。本種についてあるサイトによると香りがあるとされていますがorchidspecies.comには香りマークはありません。さてどちらかは開花待ちです。

 ネットで本種の画像を検索すると、中にはDen. draconisを本種と間違えている画像が見られます。また取扱いが少ないようで国内では1件、NBSで3,000円程が見られます。ebayでは2バルブで25米ドルがあります。本サイトでは4-5バルブを2,500円、6バルブ以上を3,000円とする予定です。下写真は4株の炭化コルク取付け例です。

Den. virgineum

Dendrobium albosanguineum

 ミャンマーおよびタイに生息する本種は、標高600m以下の高木の林冠に生息する高温タイプで、.花サイズは最大9㎝と大きく花寿命も長いデンドロビウムです。本種名のラテン語alboは白色、sanguineは血色が意味するようにセパル・ペタルは白色、蕊柱先端とリップ基部には赤いベンガラ色の斑紋が特徴です。orchidspecies.comによると本種は乾湿のサイクルを好み、Tree-fern(ヘゴ板)のような支持材への取り付けがベストであると述べています。

 先月5日に20株、タイから直輸入し凡そ5週間に及ぶ浜松での長い仮植え期間を経ての植え付けが終わりました。本種も他の入荷株同様に、栽培情報とこれまでの生育環境を示す根の様態をそれぞれ参考にし、炭化コルクおよび一部をバーク木片に植付けました。猛暑下における仮植え期間中の様子からも本種は素焼き鉢とミズゴケではなく、ヘゴ板やコルクへの取り付けが適していると思われます。

  国内マーケットでは3-5バルブの小株が3,000 – 4,500円程で販売されているようです。本サイトでは炭化コルク付けの5-6バルブサイズを2,500円、10バルブ以上の大株を4,000円としました。下写真は植付けを終えたそれぞれのサイズのDen. albosanguineumで、写真1で左奥3株がバーク木片取付、中央3株が5-6バルブ株、右側4株が10バルブ以上の株です。写真2はバーク木片取り付けの拡大画像を示したものです。写真1の炭化コルクの長さは30㎝です。

写真1 Den. albosanguineum
写真2 Den. albosanguineum
写真3 Den. albosanguineum

Bulbophyllum socordine

 先月の本ページにて”Bulbophyllum sp Mindanao”の標題で紹介したバルボフィラム3種の内、Bukidnonからの株が開花しました。Bulb. socordineでした。本種は2008年登録の比較的新しいフィリピン固有種でルソン島中央部から中南部生息とされていましたが、ミンダナオ島Bukidnonにも生息していることになります。生息地標高は1,000m程の雲霧林と推測され中温タイプで、今回の開花も中温室です。ラテラルセパルの形状が独特でシューズのような姿はBulb. frostiiに似ています。しかし節がそれぞれ異なり、本種はBrachyantha、またBulb. frostiiはCirrhopetalumです。本種の花サイズは8mm程で7-9輪同時開花、一方Bulb. frostiiは2.5cmと大きく2-3輪です。下画像が現在浜松中温室にて開花中のBulb. socordineです。国内初入荷なのかネットからはマーケット情報が見当たりません。

Bulb. socordine
Bulb. socordine
Bulb. socordine

Dendrobium cumulatum

 Den. cumulatumの植付けが終わりました。7月の入荷は20株あり、それぞれが1株凡そ20茎(疑似バルブ)からなる大株です。タイからの殆んどの直輸入栽培株は比較的廉価に入手できることから本サイトではこのサイズで2,500円としました。コルク付け以外に展示用としてバーク木片LLサイズに取り付けた株もあります。下写真は20株の内の15株です。

Phalaenopsis equestris MindanaoとIlocos

 ミンダナオ島からのPhal. equestrisの植付けが終わりました。Phal. equestrisはそのリップに多様なカラーフォームがあることで知られていますが、変種(var.)とされているのはフィリピン北西部Ilocos地域生息のPhal. equestris var. roseaのみで、他のalba、aureaおよびcyanochilaは分類上、変種ではなくフォームfmaとされています。Phal. equestris fma. cyanochilaはペタル・セパルは白色でリップ中央弁が金色から先端に向かって青に変化する2色のフォームをもち、その生息地詳細はJ. Cootes氏著書Philippine Native Orchid Speciesによると不明とされています。しかし本サイトのこれまでの入手経験ではミンダナオ島に限られており、排他的地域性が高い印象です。であればcyanochilaはrosea同様にフォームfmaではなく変種varと考えられます。現在市場でのPhal. equestrisの多様なリップカラーについて現地ラン園によれば20年以上の取り扱いでリップカラーが青色の野生株は一度だけ見たことがあるとのことで現在のカラーバリエーションは台湾での改良種とのことです。

 写真1, 2はミンダナオ島からのPhal. equestrisです。これまでミンダナオ島からの株は青紫単色フォームと写真2のようにcyanochilaフォームの2種類です。Phal. lueddemanniana同様にミンダナオ島からの入手は非常に困難で、これまでの10年間で数株の散発的な入荷はありましたが、ラン園には多数の株が栽培されており、纏まった入荷は今回が初めてです。昨年の入荷種はcyanochilaであり、同じルートであるため写真1の株はcyanochilaフォームの可能性が高いと思われます。写真3-5は今回ミンダナオ島生息種と共に入荷したIlocosからのroseaです。本サイトではミンダナオ島生息種はヘゴ板やコルクに、Ilocos生息種はポット植えとしています。Ilocos産は葉が左右上向きに展開するのに対し、ミンダナオ島生息種の多くが下垂タイプの葉形状と花茎がIlocos産に比べて長い特徴があるためです。しかし自然界におけるroseaは大木に活着し、葉が下垂している(写真5 左)ことからも本来はヘゴ板やコルクが適しているのかも知れません。

写真1Phal. equestris Mindanao
写真2 Phal. equestris Mindanao
写真3 Phal. equestris var. rosea
写真4 Phal. equestris var. rosea
写真5 Phal. equestris var. rosea

Dendrobium tannii

 今年1月にマレーシアから入手したPapua New Guinea生息のDen. tanniiがこの猛暑の中、開花しています。色はピンクタイプと薄いピンクがかかった白タイプでそれぞれの株が混在しています。かなり花持ちが良く、すでに全開(7月13日)から3週間が過ぎました。本サイトでは2,500円の販売です。

Den. tannii
Den. tannii