マレーシアから持ち帰った60株のDen. rindjaniense の植え付けがようやく完了しました。今回入荷した株は多くが40cm以上の疑似バルブ(茎)をもつ大株です。約半数をバーク木片と炭化コルクに、他はスリット入りプラスチックポットおよびバスケットのそれぞれ4つの植付け方法としました。この植付けの違いは入荷時の根の形態に合わせたためです。大株を60株並べた姿は壮観で写真1から写真4となります。写真5は一部の拡大写真で、30cm – 40cmを超える茎を示しています。一方、写真3は50cmを超える長さの茎をもつ特大株でバーク木片3Lサイズ(縦40cm)に取り付けた展示用仕立てです。写真6の花画像は昨年撮影した本種の花見本です。本サイトでは株サイズにより3,500円からとしています。
今回こうした大株が入手できたのは、成長している株を販売のために小分けしてはならない。株分け品は購入しないと、かねがね現地ラン園主に強く要請しているためです。本種を画像検索するとインドネシアラン園での膨大な数の本種が小さく同じようなサイズに株分けされ、素焼き鉢にヤシガラ繊維で植え付けられている風景が見られますが、殆んどの株で葉がありません。つまりバックバルブであり株分けの結果です。こうした状態の株はこれまでの経験から生きた根がほとんどなく海外ラン園でしばしば見られますが新芽のない(言い換えれば新根の無い)株を育てることは至難なことです。
本種の特徴であるコブ形状が連なる疑似バルブ(茎)は、新芽の伸長と共に形成されていくのではなく、まずコブの無いスリムな茎がそれぞれの節に葉を残しながら伸長していきます。適度な長さに達した段階で伸長が止まると茎基部側から順次落葉しつつ節間が膨らみ始めます。最後には頂芽の双葉のみが残り、画像で見られる様なコブが出来上がっていきます。写真1から写真3の葉の付いた弓なりの茎を見ると分かりますが、コブはまだ無く、しかしその長さはコブのある茎とほぼ同じです。 このことから新芽が出る時期に如何に芽を伸ばすかが大株をつくるポイントとなります。こうした本種の特性から新芽発生時期には液肥の散布が有効と思われます。温室栽培での観測からは、3-4本の茎数の株の新芽の発生数は1年で精々1つです。大株になれば纏まった数バルブ毎に新芽が発生しますが、中温から低温タイプの品種をそこまでの株サイズにするには果たして何年かかるか、上段右のような茎数だけでなくその長さも40cm超えの株にするには10年以上はかかるかも知れません。そこまで待てないという人は当初から大株を入手する以外ありません。
Den. rindjaniense は先月大規模地震で甚大な被害がでたインドネシアLombok島の標高1,900mから2,000mに生息するクールタイプのデンドロビウム です。中温からクール環境での栽培が必要となります。本サイトでは、低・中温室の夜間平均温度は通年で15℃ – 20℃としています。日中は30℃を超えることがありますが32℃以上にはしません。
8月の歳月記に”栽培温度の適正な表記”とした題で、種の適温表示の必要性について取り上げました。今回Den. rindjaniense をネット検索していたところ、同じような問題が本種にもありました。その販売サイトで本種は珍品であること、管理についてはミズゴケと素焼き鉢の植え付け、一方乾燥気味な環境ではプラスチック鉢の使用が多いとのこと、風通しが良く湿度の高い環境を好むともあります。かん水を株全体に行うと害虫予防になるという不思議な新説??まであります。しかし最も重要な栽培温度については一切説明がありません。本種は夏季には冷房あるいは山上げを行わない限り日本の夏を乗り越えることは厳しく、中温からクールタイプとしての環境が用意できなければ新芽の発生や開花は困難です。仮に冬季から早春に新芽が出ても夏季には細菌性腐敗病で失うことになります。結局、落葉した古い茎だけのじり貧状態に陥ります。
繰り返しますが管理方法を購入者に説明するのであれば、日本の環境下でその種がもつ栽培上の最も基本的な留意点(栽培適正温度など)を述べるべきで、実体は珍品・希少などの言葉が溢れています。市場流通が少ない品種であれば尚更、栽培情報は必要です。それが欠落していることは売り上げ至上主義か、栽培する以上、購入者自身が予めよく調べてから買うのが当然と言わんばかりで、時として販売者は果たして花を咲かせるまでの栽培実体験があるのかと首を傾げてしまう商品解説もあります。このような姿勢がランの販売サイトには余りに多過ぎます。
ちなみに写真5の後方に映っている縦長40cm – 60cmの炭化コルク4列に取り付けられた株はCleisocentron sp Sabahで、これまでの幅広タイプ以上に幅広の種名不詳種です。この幅広のClctn. sp の最適な栽培方法が未だ不明で、これを見つけ出すため温度、輝度、植え付け方法などで四苦八苦しています。1年半をかけて最近やっと新根がでるところまで来ました。画像の株は今回のマレーシアからの持ち帰りで背丈50cm以上です。
写真1 Den. rindjaniense
写真2 Den. rindjaniense
写真3 Den. rindjaniense
写真4 Den. rindjaniense
写真5 Den. rindjaniense
写真6 Den. rindjaniense