Dendrobium lydiaeとCleisocentron gokusingii

 Den. lydiaeはフィリピンMindanao島Bukidnon生息のデンドロビウムで2016年登録の新種です。本サイトでは同年の暮に入手し2017年2月の歳月記に開花した株の花を掲載しました。本種の生息地の標高は1,200mとされることから栽培では中温環境となります。晩秋から晩春までは他の高温タイプ種と同居しても夜間平均温度が20℃以下であれば成長に影響はないものの日本の、特に今年のような猛暑と長い熱帯夜に耐えることは困難です。写真1はDen. lydiaeの炭化コルク付け。写真2はその花で一つの花茎に10輪程が開花します。

 また写真3の素焼き鉢の前方から後方に向かう左3列もDen. lydiaeで、右2列がCleisocentron gokusingiiです。Clctn. gokusingiiはブルーの花色で知られており、ボルネオ島Sabah州標高1,800m生息のクールタイプとなります。本サイトでは中温室にて栽培をしており、夜間平均温度はDen. lydiae同様に20℃以下としますが日中の温度は30℃を越えても問題は見られません。むしろ昼夜の温度差が小さいと開花が難しいように思います。写真4のClctn. gokusingiiの花は21日の撮影で仮植え中に開花していました。Den. lydiaeClctn. gokusingiiは両者のよく似た栽培適正温度のため同じ場所に並べています。

 Den. lydiaeは今回、炭化コルクと素焼き鉢の2つの異なる植え付けをしました。これも根の形態からの判断に依るものです。素焼き鉢は3号サイズを用い、かん水による過水状態を避けるため、鉢底にクリプトモス大サイズを鉢の1/3程の厚さに入れており、ミズゴケの実質使用量は鉢全体体積の1/3と僅かです。

写真1 Den. lydiae
写真2 Den. lydiae
写真3 Clctn. gokusingii
写真4 Clctn. gokusingii

Dendrobium rindjanienseの植え付け完了

  マレーシアから持ち帰った60株のDen. rindjanienseの植え付けがようやく完了しました。今回入荷した株は多くが40cm以上の疑似バルブ(茎)をもつ大株です。約半数をバーク木片と炭化コルクに、他はスリット入りプラスチックポットおよびバスケットのそれぞれ4つの植付け方法としました。この植付けの違いは入荷時の根の形態に合わせたためです。大株を60株並べた姿は壮観で写真1から写真4となります。写真5は一部の拡大写真で、30cm – 40cmを超える茎を示しています。一方、写真3は50cmを超える長さの茎をもつ特大株でバーク木片3Lサイズ(縦40cm)に取り付けた展示用仕立てです。写真6の花画像は昨年撮影した本種の花見本です。本サイトでは株サイズにより3,500円からとしています。

 今回こうした大株が入手できたのは、成長している株を販売のために小分けしてはならない。株分け品は購入しないと、かねがね現地ラン園主に強く要請しているためです。本種を画像検索するとインドネシアラン園での膨大な数の本種が小さく同じようなサイズに株分けされ、素焼き鉢にヤシガラ繊維で植え付けられている風景が見られますが、殆んどの株で葉がありません。つまりバックバルブであり株分けの結果です。こうした状態の株はこれまでの経験から生きた根がほとんどなく海外ラン園でしばしば見られますが新芽のない(言い換えれば新根の無い)株を育てることは至難なことです。

 本種の特徴であるコブ形状が連なる疑似バルブ(茎)は、新芽の伸長と共に形成されていくのではなく、まずコブの無いスリムな茎がそれぞれの節に葉を残しながら伸長していきます。適度な長さに達した段階で伸長が止まると茎基部側から順次落葉しつつ節間が膨らみ始めます。最後には頂芽の双葉のみが残り、画像で見られる様なコブが出来上がっていきます。写真1から写真3の葉の付いた弓なりの茎を見ると分かりますが、コブはまだ無く、しかしその長さはコブのある茎とほぼ同じです。 このことから新芽が出る時期に如何に芽を伸ばすかが大株をつくるポイントとなります。こうした本種の特性から新芽発生時期には液肥の散布が有効と思われます。温室栽培での観測からは、3-4本の茎数の株の新芽の発生数は1年で精々1つです。大株になれば纏まった数バルブ毎に新芽が発生しますが、中温から低温タイプの品種をそこまでの株サイズにするには果たして何年かかるか、上段右のような茎数だけでなくその長さも40cm超えの株にするには10年以上はかかるかも知れません。そこまで待てないという人は当初から大株を入手する以外ありません。

 Den. rindjanienseは先月大規模地震で甚大な被害がでたインドネシアLombok島の標高1,900mから2,000mに生息するクールタイプのデンドロビウムです。中温からクール環境での栽培が必要となります。本サイトでは、低・中温室の夜間平均温度は通年で15℃ – 20℃としています。日中は30℃を超えることがありますが32℃以上にはしません。 

 8月の歳月記に”栽培温度の適正な表記”とした題で、種の適温表示の必要性について取り上げました。今回Den. rindjanienseをネット検索していたところ、同じような問題が本種にもありました。その販売サイトで本種は珍品であること、管理についてはミズゴケと素焼き鉢の植え付け、一方乾燥気味な環境ではプラスチック鉢の使用が多いとのこと、風通しが良く湿度の高い環境を好むともあります。かん水を株全体に行うと害虫予防になるという不思議な新説??まであります。しかし最も重要な栽培温度については一切説明がありません。本種は夏季には冷房あるいは山上げを行わない限り日本の夏を乗り越えることは厳しく、中温からクールタイプとしての環境が用意できなければ新芽の発生や開花は困難です。仮に冬季から早春に新芽が出ても夏季には細菌性腐敗病で失うことになります。結局、落葉した古い茎だけのじり貧状態に陥ります。

 繰り返しますが管理方法を購入者に説明するのであれば、日本の環境下でその種がもつ栽培上の最も基本的な留意点(栽培適正温度など)を述べるべきで、実体は珍品・希少などの言葉が溢れています。市場流通が少ない品種であれば尚更、栽培情報は必要です。それが欠落していることは売り上げ至上主義か、栽培する以上、購入者自身が予めよく調べてから買うのが当然と言わんばかりで、時として販売者は果たして花を咲かせるまでの栽培実体験があるのかと首を傾げてしまう商品解説もあります。このような姿勢がランの販売サイトには余りに多過ぎます。

 ちなみに写真5の後方に映っている縦長40cm – 60cmの炭化コルク4列に取り付けられた株はCleisocentron sp Sabahで、これまでの幅広タイプ以上に幅広の種名不詳種です。この幅広のClctn. spの最適な栽培方法が未だ不明で、これを見つけ出すため温度、輝度、植え付け方法などで四苦八苦しています。1年半をかけて最近やっと新根がでるところまで来ました。画像の株は今回のマレーシアからの持ち帰りで背丈50cm以上です。

写真1 Den. rindjaniense
写真2 Den. rindjaniense
写真3 Den. rindjaniense
写真4 Den. rindjaniense
写真5 Den. rindjaniense
写真6 Den. rindjaniense

Ascoglossum calopterum

  展示会場のような場所で良く目立つド派手な原種がないかと探していたところ、成長すると赤紫の2.5cm程の花を総状花序で、1花茎当たり60から80輪程開花するフィリピン、ニューギニア、マラッカ諸島生息の1属1種Ascoglossum calopterumがあることを知り、これをマレーシアから10株入手しました。今回の株はニューギニア生息種で高温タイプです。入荷してから2週間程の仮植え期間中にもかかわらず頂芽が伸び、新根も現れ栽培は容易な種のように見受けられます。calo(美しい)、pterum(翼のある)を名前とし、多くのサイトでattractive speceisと言われながらも、なぜか国内のマーケット情報が乏しく10,000円以上が1件見られる程度です。本サイトでは4,500円の予定です。下写真が入荷株です。クリプトモス80%のスリット入りプラスチック鉢植えです。見栄えからするとバンダのような形態から1年後にはバスケット植えが良いと思います。

Ascoglossum calopterum

Coelogyne sp, rhabdobulbon, radioferens

  先月のマレーシア訪問にて入手したセロジネは6種で、Coel. odoardiはすでに掲載済みです。さらにCoel. rhabdobulbon、radioferensと3種のspとなります。写真1がボルネオ島800m – 2,000mに生息のCoel. rhabdobulbon、写真2が同じくボルネオ島SabahのCoel. spでリップが赤いフォームとされます。写真3はCoel. radioferensでこちらもボルネオ島900 – 2,100m生息のクールタイプです。

写真1Coel. rhabdobulbon
写真2 Coel. sp (red-lip)
写真3 Coel. radioferens

Cymbidium elongatum, ensifolium, haematodes, lancifolium

  シンビジウムはこれまでほとんど取り扱っていませんでしたが、高地生息種の問い合わせがしばしばあり、ネットでのマーケット情報を検索するとヒマラヤから日本も含め東南アジア全域に広く分布しているものの標高が1,000mを超える種はあまり取り扱われていないようです。先月のマレーシア訪問でボルネオ島からの4種を入手してきました。写真1がクールタイプのCym. elongatum、写真2は中温からクールタイプのCym. haematodes(手前の葉長の短い)とCym. ensifolium、(奥の葉長の長い濃緑色)です。Cym. lancifoliumは先月の歳月記に記載しました。

写真1 Cym. elongatum
写真2 Cym. haematodes, Cym. ensifolium

Bulbophyllum cornu-ovis

 Bulb. cornu-ovisをマレーシア訪問で8株入手しました。スマトラ島生息種で2011年登録の新種です。花の形状が独特で、ラテラルセパルがビッグホーン羊の角のように後ろに反り曲がっていることからcornu(ツノ)とovis(羊)と命名されています。本サイトの最初の入荷は2015年12月です。その後しばしばインドネシアラン園のリストに名前を見かけたものの入荷は2年半ぶりです。本種の栽培に有用な情報は今だに不明で、栽培に最も重要な生息域の標高が不明です。

 当初は中温と高温室に分けて栽培をしました。いずれも成長は遅いものの新芽を発生し、開花も見られたため全てを高温室に移動し栽培することにしました。その後、夏季には成長が止まることと、今年の猛暑では明らかに成長に異変が見られたことから本種は中温タイプと判断しました。2年間の栽培で、日中の温度は32℃以上であっても問題は無いものの夜間の温室内温度が25℃を超える日が続くとと成長が思わしくない様態が観測されたためです。よって夏季は山上げ相当種として扱うべきと思われます。標高800mから1,200m程の生息種と推測します。夜間温度が通年25℃以上のマレーシアラン園においても1年以上の維持は困難なようです。下写真1は今回の炭化コルクへの取り付け、写真2は本種の花で中温室にての栽培となります。3バルブ3,500円での販売です。

写真1 Bulb. cornu-ovis
写真2 Bulb. cornu-ovis

浜松からの発送時期を迎えて

 今年の猛暑は厳しく、また長く続きましたがようやく日中気温が30℃を下回るようになりまた。最近はデンドロビウムだけでなくバルボフィルムも新しい品種は標高の高い地域に生息する種が増え、7月からこれまで宅配便による発送は控えていました。順化中の品種も多数あるものの、新芽や根が植付け後に発生している株も多く見られます。ようやく来週から、気温をチェックしながらの順次発送を開始することになりました。また浜松温室を訪問される方も多くなりそうです。入荷株の植え付けで大変ですが発送と訪問対応がしばらく続きます。

Bulbophyllum sp SulawesiiとBulbophyllum singaporeanum

 Bulb. sp Sulawesiiは8月の歳月記に取り上げたバルボフィラムです。またBulb. singaporeanumはマレー半島、ボルネオ島生息種で高温タイプです。これらの植付けが終わりました。前者はポット植えと炭化コルクで、後者は(30 – 60)cm x 8cmの細長い炭化コルク付けです。Bulb. sp Sulawesiiは6,000円、Bulb. singaporeanumはバルブ数により2,500 – 4,000円を予定しています。

Bulb. sp Sulawesii
Bulb. singaporeanum

Phalaenopsis mariaeについて

 写真1, 2はフィリピン生息種のPhal. mariaeです。写真1の左3株は7月フィリピン訪問にて入手した大株で、右の一般サイズに比べて3倍近い葉長を持ち最も長い葉で40cmです。これまでの15年間、本種を千株以上現地で見てきましたが、これほどの大株は初めてです。50輪以上の開花を期待しています。

 再度Phal. mariaeを取り上げたのは、現在マーケットでの本種とされる画像が、Phal. bastianiiあるいはその交雑種である誤りが多いためです。E.A. Christenson著書Phalaenopsis a Monographでこれらについて3つの違いを述べています。Phal. bastianiiはセパル・ペタルはフラット、花茎は立ち性、リップ中央弁の繊毛は疎であるのに対し、Phal. mariaeはセパル・ペタルの縁が後方に反ること、花茎は下垂性、リップ繊毛は密であるとしています。

 ネットの画像を見ますと花茎が上に向かっている株が多く見られます。これらはPhal. bastianiiあるいはPhal. bastianiiPhal. mariae等との交雑種です。 本サイトではPhal. mariaePhal. bastianiiの違いを画像を用いてそれぞれ取り上げ、前記3点に加えセパル・ペタルの蝋質性と、リップ中央弁の竜骨突起の違いを指摘しています。また十分に成長した株では輪花数が全く異なりPhal. mariaeは多輪花で花茎当たり10輪以上が普通です。またPhal. mariaePhal. bastianiiと異なり植付けは下写真に示すような下垂が基本です。ポットの立ち植えでは、やがて頂芽が細菌性腐敗病(Bacterial crown rot)に十中八九罹ることになります。

 なぜこれほどミスラベルが多いかは、Phal. mariaePhal. bastianiiの人工交配が行われ、この交雑種が片親の名前、すなわちPhal. mariaeとしてマーケットに出され、これらがそのまま信じられているのではないかと、その狙いは花フォームは蝋質で光沢のあるPhal. bastianiiの花に似せる一方で、Phal. mariaeのような輪花数の多い品種の生産販売を目論んでいるためと推測しています。その品種は未だ実現出来ていないようですが。

写真1 Phal. mariae
写真2 Phal. mariae

Dendrobium igneoniveumとinsigne

 先月のマレーシアにて、スマトラ島生息種のDen. igneoniveumを20株入手しました。本種は訪問毎に注文を出しており2回に1回は入荷できます。国内マーケットでは8,000円程の価格がネットで見られます。本サイトでは3,500円で販売しています。こちらもCoel. odoardi同様にラン展出品での完売種です。他のFormosa節同様に、栽培難易度は中レベルで季節によるかん水のメリハリをつけることが良いとされます。しかしこのかん水の程度とされる量はそれぞれの趣味家の栽培環境に依存するため絶対値のようなものが無く、これが難易度を高めている原因の一つです。

 また本種についてorchidspecies.comでは標高データがなく、栽培の適温が不明です。栽培経験では同じスマトラ島生息のDen. tobaenseと比較し高温タイプで、本サイトでは高温室にての栽培となっています。しかしこれまで栽培していた株の中で今年8月の猛暑が続いた時期、新芽が2株程で落ちており、これは夜間ですら温室内では28-30℃程になる日が続いたことがその原因と考えています。猛暑が予測される期間は中温室が好ましいようです。写真1は今回取り付けが終了したDen. igneoniveumです。こちらも根張りの形状から木に活着していた様態であるため炭化コルク付けとしました。

 写真で、炭化コルクにミズゴケで根や株元を抑えていますが、色が違うことが分かると思います。これはクリプトモスを配合したもので、今回この配合量を0%から90%と変えて同一環境でどのような成長変化があるかを調べることにしました。配合量の相違は保水性が異なることを意味しFormosae節の最適な条件を見つけるためです。

 一方、写真4はニューギニアからのDen. insigneで、20株入手の内の5株です。Den. consanguineumDen. insigne albaは栽培しているもののDen. insineは初めての入荷です。国内マーケットでは3,000-4,000円程で販売されています。短命花であるため展示用には適さないのですが、年に4回程一斉開花します。本サイトでは2,500円の予定です。植付けは炭化コルクとスリットプラスチック鉢の2種類としましたが、根の形状からは写真のような垂直支持材が適しています。写真で前側の3株の基部に白い突起が見えますがこれは僅か2週間程の順化中に発生した新根の先端です。高温タイプで至って丈夫なようです。

写真1 Den. igneoniveum
写真2 Den. igneoniveum
写真3 Den. igneoniveum
写真4 Den. insigne