極小の花に大株のデンドロビウム2種

 デンドロビウムの中でDen. rosellumDen. aloifoliumの花サイズはそれぞれ1㎝と4mmです。特にDen. aloifoliumの小ささはゴミと見間違えるほどで一体どんなポリネーターがやってくるのか興味があります。それぞれあまり注目されるデンドロビウムではないのですが、本サイトのDen. aloifoliumはorchidspecies.comの画像が一般フォームとするとalbaとなるのですが果たしてそれがどれほど貴重なことなのかはよく分かりません。今回取り上げたのはほとんどの人が花が小さすぎて興味を持たないことから販売のために株分けなど株がいじられることもなく5年程じっと温室の片隅の木製バスケットで成長を続けていたためか、花サイズに対して株サイズが極端に大きくなり、Den. rosellumに関しては中サイズバスケットを覆い被さるようになり、一方、Den. aloifoiumは小型木製バスケットをはみ出し大きな塊となって株が垂れ下がってしまった景色が面白いためです。

Den. rosellum
Den. rosellum
Den. aloifolium
Den. aloifolium

無葉蘭も開花中

 Chiloschista viridiflavaが現在開花中です。咲き始めからすでに1か月半ほど経っています。どうしてかキロシスタはネットの画像を見る限り、そのほとんどがベアールートの状態で木片やコルクに取付けられたままの状態です。海外栽培あるいは生息環境とは湿度など相当異なる筈であるのに単に小さな木片に乗せているだけの、外部環境に直に影響を受け易い取り付け状態が果たして最善なのかどうか。この方法で趣味家はキロシスタを現状維持ではなく株をより大きく成長させているのかどうかに興味があり2株ほど入手しました。 花が終了してからが栽培技術の本番となりますが少し調べてみようと思っています。

 第一の疑問はネット画像で見られるような限られた木片面積では根は木片の表側だけでなく裏まで蔓延りやがて根同士が重なり合うようになります。こうなると根が光合成するキロシスタ(2㎝程の小さな2-3枚の葉のみ)にとっては木片裏側の受光量は少なく、また表面もやがて限界となります。さらに根が重なり合えば下層の根は枯れ木片接着面側からの水分の摂取も難しくなります。あるいは木片のサイズが小さければ、根が木片から離れ空気中に垂れ下がることになります。そうなれば一見そのままで良いようですが、根を空中に垂らす栽培法ではVandaと同等の空中湿度が必要であり温室なしで十分な湿度を確保するには1日数回の水撒きの重労働の覚悟無くして国内の気候下ではほぼ不可能です。よって栽培を容易にするには、活着する根張り空間をかなり広く取り可能な限りかん水頻度を下げる必要があるように思われます。その辺りからのまず工夫でしょうか。

Chiloschista viridiflava
Chiloschista viridiflava

Dendrobium rindjanienseの花色

 インドネシアLombok島標高1900m – 2,000mの限られた地域に生息する中温タイプのデンドロビウムです。疑似バルブの節間が球体状であることから数珠のようなバルブ形状が特徴です。標高からは低温タイプと思われますが、夜間が15℃ – 18℃に設定できれば昼間は30℃近くであっても問題はなく、むしろ中温環境の方が開花や成長は良いようです。下写真はそれぞれの花色の違いを撮影したものです。

Den. rindjaniense
Den. rindjaniense
Den. rindjaniense

マーケットではあまり見られない現在開花中の6種

 現在浜松温室ではPhal. amabilisPhal. schilleriana、またDen. anosmum superbum等が花盛りですが、マーケットではあまり見ることのない種も多数開花しています。その中から6種撮影してみました。写真1のDen. treubiiはマラカス諸島生息種で扁平な疑似バルブの先端近くに5㎝程の花を5-6輪つけます。写真2のDen. maraiparenseはボルネオ島キナバル山周辺1,200 m – 2,300mの低温から中温タイプで、本サイトでは低温室にての栽培です。開花は夏とされているようですが本サイトでは通年で開花し季節感はありません。写真3はBulb. incisilabrumで、スラウェシ島900m – 1,200mのコケ林生息の中温タイプです。

 写真4は先月、50株程が纏まって入荷したが何株必要かとサプライヤーに問われ、これまで入手が極めて困難であったため全て持ち帰ったフィリピン標高800m生息のAerides leeanaです。Spurが下方に向いているのが特徴です。本種についてorchidspecies.comでは高輝度マーク(Bright light or Full light)とされていますが、J. cootes氏の著書ではAeridesの中では例外的に低輝度(quite shaded situations)であると説明されており、栽培者の立場からはどちらが正しいのかはっきりしてもらいたいところですが実栽培を通して自分で見つけ出すより致し方ありません。今回入手の株は高温タイプです。写真5は昨年12月の本ページで取り上げたPhal. hieroglyphica flavaです。さく果の採り撒きの時期となりました。写真6は先月紹介したDen. spです。高温環境で次々と花を付けています。これらは現在Phal. hieroglyphica flavaを除き全て販売種です。

写真1 Den. treubii
写真2 Den. maraiparense
写真3 Bulb. incisilabrum
写真4 Aerides leeana
写真5 Phal. hieroglyphica flava
写真6 Dendrobium sp (endertii-like)

現在開花中のParaphalaenopsis3種

 現在浜松温室にて、Paraphal. denevei、Parapahl. labukensis、Parapahl. serpentilinguaの3種が同時に開花しています。Paraphalaenopsisは4種類が知られており全種がボルネオ島の固有種で標高1,000m以下の高温タイプのため栽培は容易です。問題は下垂する細長い筒状の葉の長さで、Paraphal. labukensisは2m程の長さに伸長するため、それなりの栽培空間が必要になることです。一時期、本種は成長が遅く数cm伸長するのに数年を要すると言われましたが、本サイトにてそれは誤りであることを栽培実績を基に指摘したことがあります。

 下写真1がParaphal. denevei、写真2がParaphal. labukensis、写真3がParaphal. serpentilingueです。これらの中で希少性の高い種はParaphal. deneveiでシンガポールAsiaticgreenの価格表では350USDとなっており、39,000円相当と高価です。これに対し、Paraphal. labukensisは60cmの本種としてはSサイズで30USD、Paraphal. serpentilingueは45USDです。当サイトではParaphal. deneveiの下写真のBS株で12,000円です。Paraphal. deneveiはBS株でも葉長は40cm止まりで、同属の中ではもっとも小型です。現在10株ほど在庫があり、5月までにさらに10株を追加する予定です。

写真1 Paraphal. denevei
写真2 Paraphal. labukensis
写真3 Paraphal. serpentilingue

現在開花中の3点

 現在浜松温室にて開花中の原種3点です。下写真1はPhal. mariaeで淡い黄緑色をベースに太い濃赤色の斑点があり別種のようなフォームです。中央は日没直前の頃に撮影したとりわけ赤色が一際濃いDen. aurantiflammeumです。写真3は一つの花茎当たりの同時輪花数の多いDen. hymenophyllum greenです。それぞれにいずれもこれまでの一般株には見られないフォーム、花色あるいは輪花数に特徴があります。左のPhal. mariaeは実生を得るまでの種親とする予定ですが、他の2種は販売品です。

写真1Phal. mariae
写真2 Den. aurantiflammeum
写真3 Den. hymenophyllum green

Bulbophyllum (Epicranthes) sp II

 ミンダナオ島からEpicranthes (= Bulbophyllum) jimcootesiiとspの2種を2月に入手したことを前項で取り上げました。ところがこのsp株を植付ける前過程で葉裏に花が開花していることに気付かず 強いシャワーにて株の汚れを洗浄してしまったたためドーサルセパルとペタルが水圧で吹き飛び、ラテラルセパルだけが残っていることに気が付きました。下写真2がそのラテラルセパルの画像です。そこでこのセパルに似たEpicranthesがあるか調べたのですがネット画像からは該当する種が見当たりません。前項の記載ではcharishampeliaeあるいはaquinoiのいずれかとの現地サプライヤーの情報を紹介しましたが、それらのいずれともフォームが異なるようです。orchidspecies.comにはEpicranthesすなわちBulbophyllum属Epicranthes節にはフィリピン生息情報が無く、一方J. Cootes氏のPhilippine Native Orchid Speciesには1品種のみの記載で、本種がミンダナオ島生息種であることは間違いないものの該当する情報が少なく現在のところは種名不詳です。種名は次の開花待ちとなりそうです。

写真1
写真2

Cleisocentronの種別について

 ボルネオ島生息のCleisocentronは5種が知られていますが、青色の花を付ける種は以下の4種となります。

  1. Clctn. abasii (葉幅:10-15mm、標高:1,200 – 1,500m)
  2. Clctn. gokusingii (葉幅:5-8mm、標高:1,800m)
  3. Clctn. merrillianum (葉幅:3mm、1,100m 以上)
  4. Clctn. sp wide-leaf (葉幅:15-20mm、標高:gokusingiiと同じ?) 

 これらはいずれも高地コケ林の生息種であり、中温から低温(夜間平均温度15℃以下)での栽培が必要となり、低地生息種の胡蝶蘭やデンドロビウムと同じ環境での栽培は困難で、国内の夏季を乗り越えるには冷房あるいは山上げが必要になります。栽培における成長はClctn. merrillianumが早く、より低温環境での生息種であるClctn. gokusingiiは年間伸長3cm程が観測されています。上記の1-3種は何れも葉形状で種を同定できますが、1と4は視覚的には困難で、唯一の方法は花茎の長さとなります。下写真はそれぞれの花茎を比較した画像です。上段はそれぞれ葉形状を、下段は花茎の開花跡を示したものです。Clctn. abasiiは10-20cm程の花茎に対し、他種はいずれも1.5cm程の短い花茎となります。

Clctn. abasii
Clctn. gokusingii
Clctn. merrillianum
Clctn. sp wide-leaf

Dendrobium serratilabium

 本種はフィリピン固有種でルソン、レイテ、ミンダナオ島の標高500mから1,200mに生息するCalcarifera節のデンドロビウムです。入手は容易で希少種ではありませんが在庫が無いことに気付き、6年ぶりに昨年12月に10株ほど入荷しました。しかし半数以上がDen. victoriae-reginaeのミスラベルでした。どうやら高地(コケ林)ではそれぞれが生息域を共有しているようで疑似バルブ形状からは区別は困難です。下垂タイプで自然界ではかなり低輝度な場所に生息するとのことです。そうしたことから今年2月のフィリピン訪問では本種であることを確認しての持ち帰りとなりました。本種名のserrateはノコギリ状を意味しリップ中央弁の縁形状が由来となります。茎3本株で2,500円からを予定しています。

Dendrobium serratilabium
Dendrobium serratilabium