下写真1-3は現在開花中の、ミンダナオ島生息種としてフィリピンから2015年にVanda furva 名(Lindley 1833年)で入荷した株です。2013年浜松に居を構えて以来、新たに入荷したデンドロビウム、バルボフィラム、Vanda など、開花する機会を捉えてはネットや情報誌を参照し、花とタグ名の確認をしています。そうした中、この花について幾つかの疑問が出てきました。入荷後は毎年開花し花フォームはJ. Cootes氏Philippine Native Orchid Species 267ページに記載のVanda furva と一致します。著書には本種はミンダナオ島およびPalawan生息とされ、またOrchidaceaeのサイトにも同様の画像が掲載され、この画像は知人のW. Suarez氏が2010年8月に撮影したもので、本サイトも直接彼から2015年にVanda furva名で写真を頂きました。またSwiss Orchid Foundationのサイトに掲載の画像もこれらと同一です。こうしたサイトの画像の出所は2010年頃に撮影のJ. Cootes、W. Suarez氏からのものと思われます。
ところがorchidspecies.comのVanda furvaページでは上記とは異なる花画像が表示されており、この画像はFaris Photo (2007年)からの引用です。またOrchidRootsにもVanda furvaの画像があり、花形状はFaris Photoと同じです。但し orchidspecies.comでは花画像は別種の可能性があるとの注釈が見られます。よってここまでの判断としてはVanda furvaの花画像は前記のJ. Cootes、W. Suarez氏の画像、すなわち下写真1-3の花で、Faris Photoの画像は別種とも考えられます。
一方で近年、Vanda mindanaoensis (M. Motes他)名が2015年に新種として登録されました。その花画像はOrchidRootsに掲載され、またorchidspecies.comにもVanda mindanaoensisのページがあります。そのページのシノニム(同じ種であるが名前が異なる)項は空白となっており、すなわちVanda mindanaoensisは現時点において唯一の種とされます。しかし困ったことに、このVanda mindanaoensisは本サイトが所有する下写真、言い換えれば2010年以前からVanda furvaとするJ. Cootes、W. Suarez氏と花形状が酷似し、同種と思われます。
さらにorchidspecies.comでVanda lindenii (Rchb.f. 1886年)を検索すると、ここにもJ. Cootes、W. Suarez氏のVanda furvaとされるフォームに酷似する画像が表示され、さらにシノニムにVanda mindanaoensisが記載されています。一方にはシノニムがあり、シノニムとされた一方(Vanda mindanaoensis)には相手方(Vanda lindenii)が無いという問題は登録された相互の時代の違いによる止むを得ない事象です。しかし種名が記録あるいは登録された時期が早い方にシノニムが無いのは分かりますが、後年の登録にシノニム記載が無いのは不可解です。またVanda mindanaoensisおよびVanda lindeniiのサイトそれぞれにはリップ側面からの画像が掲載され、これらは同一形状で本サイト写真3の画像とも同形です。これらの花形状による情報の結果としてVanda furva、Vanda lindenii、Vanda mindanaoensisの3種名の画像は微細なリップフォームの違いがあるものの同一種と思われます。Vanda lindeniiは葉幅が他種と異なるとされていますが、Vandaの葉形状は生息域や栽培環境で変化し、葉幅のみで別種とするのには疑問があり、精々亜種が妥当と考えますがこれは別課題とします。
整理すると見えてくるのはFaris PhotoとOrchidRootsが掲載するVanda furvaと、J. Cootes氏、OrchidaceaeおよびSwiss Orchid Foundationが掲載するVanda furvaの画像の相違をもたらした背景にはM. Motes氏の論文がJ. Cootes、W. Suarez氏のVanda furva画像を否定し、Vanda helvolaのようなリップ形状をもつ種をVanda furvaとしたことです。さらにこの論文の新種とされるVanda mindanaoensisは、前記したようにW. Suarez, J. Cootes氏が名付けたミンダナオ島のVanda furvaそのものです。であれば時系列的にはVanda mindanaoensisとされる種の発見者はW. Suarez, J. Cootes氏であり、彼らはそれを新種とは考えず既知のVanda furvaとし、その後M. Motes氏がそれを誤り??とし、ミンダナオ島のVanda furvaとされた種に、新種名を与えたことになります。つまり実態としてVanda mindanoensisはM. Motes氏論文にあるNew Species(新種)ではなく、種自体は2015年以前から異なる名前で知られ、その旧名からのNew Naming(改名)です。
花が咲き種名を確認しようとすると、地域差や変種と思われる僅かな違いで別種とされていたり、上記のような種名問題にもしばしば直面します。人が花や株形状の視覚上の判断で分類する限りこうした問題は避けられません。無論、正しい種名確認は、発見・登録当初のスケッチ図を見ることですがVanda furvaのように1830年代、すなわち日本では江戸時代で天保の大飢饉があった頃の資料がネット検索で得られても、モノクロスケッチ図の画像品質は悪く詳細が判断できないことがあります。半ばジョークですが名前の置き換え問題ならば、1833年の古いVanda furva名よりは、ミンダナオ島生息の2015年の新種(名)という表現の方が商売上”聞こえが良い”ことと、新種名の申請が受け入れられている以上、過去の情報を調べての結果が前提であろうことからW. Suarez、J. Cootes氏がミンダナオ島で見つけた種をVanda furvaとしたのは一時的な名称と解釈し、本サイトが所有する下写真については、Vanda mindanaoensisとしておきます。
さて下写真で、写真4の株は2015年入荷から5年近く栽培し、1.2mに成長した写真1-3の花をつけた株の全体画像です。写真5の株は、またこれも複雑な話ですが、現在支援をしているフィリピンラン園2代目から、ミンダナオ島生息のリップが赤いVanda spとして2014年に購入した15株で、入荷して2年間程開花が無かったため未発売で、温室の最も目の付かない片隅に置かれ忘れかけていた株です。株形状が下画像と似ており今回の問題で光が当たり植え替えのためトレーに纏めました。もしかすると、写真1-3のリップは白色をベースに赤いラインですが、前記Vanda mindanaoensisをシノニムとするVanda lindeniiの花画像にあるリップは、赤色をベースに白いラインの違いがあり、2代目のリップが赤いという表現はVanda lindeniiのリップのような色合いかも知れません。 枯れた花茎が数本に残っており花を見過ごしてきたためどんな花が咲くか楽しみです。写真6はW. Suarez氏から頂いたOrchidaceaeと同じVanda furva名の画像です。ちなみにVanda mindanaoensisはネットでの国内マーケット(価格)情報はなく、Vanda furva (改め新名Vanda mindanaoensis)も当サイトのみです。





