Dendrobium tentaculatumに見られる株の3様態

 Den. tentaculatumはDiplocaulobium属からDendrobium属に編入されたニューギニア生息種です。それ故か、その株形状はデンドロビウム一般種とはかなり異っています。バルブは円錐形で先端から長い茎(葉柄?)が伸びその先端に1枚の葉と、葉の根元から花柄が延び一輪の花を付けます。下写真1は2015年2月東京ドームでアルゼンチンClori Orquideasラン園から引き取ったDen. tentaculatumです。なぜニューギニア種を南米のラン園が保有していたのかその経緯は分かりません。その2年後に、マレーシア経由からも入荷があり、アルゼンチン入荷株は中温室に、マレーシア入荷株は高温室にそれぞれ置いて毎年開花を確認しつつ栽培を続けてきました。今回の植え替えで株分けを行った際、株形状に大きな違いがあることから今回取り上げてみました。

 写真2のトレーに並んだ株の左2列と他の4列とは、別種の如く葉形状とサイズが異なりますが、同じDen. tentaculatumとされる開花サイズ株です。2列の株はマレーシア経由株です。披針形葉で葉柄も長く、一方、右4列のアルゼンチン経由株は線形葉で細く、株自体が小型です。写真1の花画像はこの小型の方の株です。一方、写真3も同じ種です。こちらの葉は両者の中間的な形状ですが葉柄が短く、3年程前にピンク色の花を確認したため他と分けて栽培しているものです。本種は花色が若い株は白色で、数年するとピンクの発色になるとの説には疑問です。この株はマレーシア入荷株に混在していたもので他に5株程あります。株の様態の違いは、地域差あるいは標高差にしばしば見られるものの、これほどの違いは稀でDiplocaulobium節固有の特徴なのか、別種の可能性もあり、次の開花を待ってそれぞれの花形状を詳細に調べる予定です。ただ問題は本種は一両日の短命花のため開花を見逃さない注意が必要です。 

写真1
写真2
写真3

Bulbophyllum maculosumの植え替え

 本種名は現在Bulb. sanguineomaculatumのシノニムとされたボルネオ島、スラウエシ島、フィリピンの低地から標高1,300mの生息種です。本種の花フォームは、フィリピン種がやや黄緑色をベースに茶褐色の斑点であるのに対し、下写真1のスラウエシ島からの入荷とされる株の花は今年7月に開花し、黄色をベースに赤からクリムゾン(深紅)色の斑点のある写真2のフォームとなります。入荷時のビニールポットでの8ヶ月程の仮植えから今回30cm長の炭化コルクに植替えました。前記両種名のネット検索では国内マーケット情報が見当たりません。本種は植え替えのため1-2ヶ月の順化期間後に販売予定です。

写真1 Bulb. maculosum (sanguineomaculatum)
写真2 Bulb. maculosum (sanguineomaculatum)

Bulbophyllumの植え替え

 時間を見てはバルボフィラムの植え替えを行っています。下写真1の上段はBulb. multiflorumです。本種の入手は極めて困難で、というのは本種名で発注してもほとんどが同じルソン島中部Nueva Vizcaya生息のBulb. brevibrachiatumBulb. loherianumなどがミスラベルで入荷し3回に一度、しかもロット内に1割以下で稀に本種が混ざっているような状態です。これまでの経験からは本種名で注文しても本種が得られる保証は全くありません。2株ほど販売し、その後開花を確認した2株ほどがあり、それらが大株になったため株分けして今回の植え付けとなりました。(注:これまで当サイトではCirrhopetalumがBulbophyllumに属名統一されたことで、Cirr. multiflorumBulb. multiflorumとしてきましたが、Bulbophyllum属内にすでにmultiflorum名があったことから、Cirr. multiflorumは新たにBulb. polyflorumとして登録されており、現在の本種名はBulb. polyflorumとなります。当サイトでは来年3月末予定の本サイト改版時に種名を変更します)。下段は左2列がBulb. veldkampii、3つ目がBulb. kermesinum、また右3列は半透明な花を付けるBulb. hymenobracteumです。

 写真1は30cm長炭化コルクでの植付けで、従来と異なるのは使用するミズゴケの量を2倍近く増して厚めに敷き、また伸びしろ分をかなり大きく取っています。これには2つ理由があり、一つは2-3年程の成長の伸びしろ分と、植付け時からミズゴケ面積を広く取ることで、上部の保水分により、板下部の湿度を長時間維持し、株の根周りを常に湿った状態にするためです。平面状に敷いたミズゴケと炭化コルクの吸水性により、ぐしょ濡れ状態はかん水直後の僅かな時間だけで、その後は湿った状態が長く続くことを狙ったものです。最近はデンドロビウムを含め炭化コルクの取付けはこうした方法にしています。板付けで気相を大きくすると共に湿り気を長時間保つ、通常では相反する関係を得る簡便な手段です。材料コストと手間はかかりますが株の成長が第一です。

写真1
写真2 Bulb. polyflorum
写真3 Bulb. hymenobracteum

開花中の花6点

 開花中の花6点です。写真2のThrixspermum pensileは1m近く下垂する1本の茎に、左右交互に等間隔で並ぶ葉の複数の付け根からそれぞれ2-3輪の花が咲きます。写真はほぼ真下から撮影したものです。本種は短命花で浜松温室では年3回程の開花期があります。一方写真3のDen. discolorは2ヶ月近い長命花です。現在3年ぶりに100株程のSpatulata節の植え替えを行っており、その半数が1m近い株です。今回は全てスリット鉢ロングタイプに100%クリプトモスの植え付けにしました。多くのバークは2年もすると崩れ始め、一部が粘土状になり気相が減少する結果、根の腐敗が進行しポットの外に飛び出した根のみが生きているような様態がしばしば見られます。いずれも3年程で植え替えとなるとLサイズのクリプトモスが栽培管理も容易で根張りも良く、安心との結論です。写真4-6は全て胡蝶蘭ですが、後1-2ヶ月でPhal. amabilisPhal. schillelrianaなどフィリピン生息のPhalaenopsis節の開花最盛期を迎えます。

写真1 Den. treubii Moluccas
写真2 Thrixspermum pensile Philippines, etc.
写真3 Den. discolor Papua Newginea
写真4 Phal. pantherina f. flava Borneo
写真5 Phal. appendiculata Borneo
写真6 Phal. venosa Celebes Isls.

Bulbopyllum scotinochiton

 Bulb. scotinochitonは北スマトラ島生息で2005年登録の新種です。通常本種は”single flowered inflorescence”一輪の花序とされていますが、珍しく現在浜松温室にて花軸の先端で花柄 (花軸?) が2分岐し、2輪が同時開花している株があったので撮影しました。写真1が一般の、写真2が今回開花の様態です。

写真1 Bulb. scotinochiton
写真2 Bulb. scotinochiton

現在開花中の花6点

 この時期から来年2月頃までは多くの株に開花が見られます。6点を選んでみました。

写真1 Den. dianae Borneo Kalimanntan
写真2 Den. compressimentum Borneo
写真3 Bulb. nasseri Philippines
写真4 Bulb. orientale Thailand, etc.
写真5 Bulb. mastersianum yellow Borneo
写真6 Bulb. jacobsonii Indonesia

現在開花中のVanda

 下写真は現在開花中のVandaです。Vandaは春から夏期にかけての輝度が発色に大きく影響します。しかし他の属種と同居しての温室内栽培ではVanda sanderianaに適した輝度まで上げると他種には高過ぎて問題となり、中々濃色のピンク色を得ることは困難です。写真1はVanda sanderiana pink、写真2は一見アルバタイプに見えますが、黄色フォームでアルバフォームはこちらです。やはり輝度不足でドーサルセパルとペタルの黄色の発色が抑えられて白くなっており、輝度を上げるとセパルペタル共に一様の薄黄色になります。写真3はVanda merrilliiです。

写真1 Vanda sanderiana pink
写真2 Vanda sanderiana yellow
写真3 Vanda merrillii

Bulbophyllum virescensにみる炭化コルク付けでの成長

 当歳月記10月にバルブ間のRhizomeの長い種の炭化コルク付けを取り上げ、Bulb. virescensの新芽の画像を掲載しました。その時点から凡そ2ヶ月が経過し、昨日(12日)現在の状態を撮影しました。写真1が10月の、写真2が今回撮影の株です。こうした長いRhizome種は花はダイナミックで見栄えの良い種が多いものの、植え付けが厄介で、新たなRhizomeの伸びしろ分を考えると株の倍程の長さの取り付け材が必要となり、コルクやヘゴ棒ではコストがかかり大変です。そこで炭化コルクにした訳ですが、垂直タイプの支持材への植え付けは、国内の温室栽培であっても生息地と比べれば湿度は低く、新芽が出たもののやがて縮れ枯れることが多い欠点があります。

 こうした背景から、炭化コルクにはこれまで以上に厚くミズゴケを敷き、乾燥状態にさせないよう常に湿った状態を保つ栽培を行ってきましたが、やはりこの方法が良いことが最近分かってきました。その1例が下写真です。Rhizomeの長い種の新芽は両写真に見られるように葉が閉じている状態から開くまでがもっとも栽培で難しい期間となります。最近はバルボフィラムだけでなく、デンドロビウムのFormosae節も同様に温室栽培であっても板状支持材を用いる場合は、ミズゴケを厚く敷くことが植え付けのポイントであることも分かってきました。

写真1 Bulb. virescensに見る新芽の成長 (10月28日撮影)
写真2 Bulb. virescensに見る新芽の成長 (12月12日撮影)

現在開花中の12点

 写真1のフィリピン生息種であるDen. modestaは小型の花ですが、Lサイズの木製バスケットで一抱えもある大株になっており、現在50輪程が開花しています。写真2のDen. rosellumはボルネオ島の、こちらも小型の花で現在当温室では昼と夜の室内気温差が10℃程になると開花が始まり、年に数回の開花期があります。Phal. bellina wildはパラパラと絶えることなく10月から、あちこちの株で常に花が見られ良い香りがします。

 写真10の現在開花最盛期を迎えようとしているスマトラ島のDen. igneoneiveumは2ヶ月間程の長寿花です。写真11はフィリピンCalayan諸島のAerides magnificaで、花数を数えたところ41輪ありました。こちらも良い香りがします。これらはいずれも炭化コルク付けです。上段下段ともにすべて根は季節に関わらず常に濡れた状態ではなく、湿った状態を維持しています。

写真1 Den. modestum Philippines
写真2 Den. rosellum Borneo
写真3 Phal. bellina wild Borneo
写真4 Den. punbatuense Borneo
写真5 Den. mooreanum Vanuatu
写真6 Den. compressum Philippines
写真7 Den. lowii Borneo
写真8 Dracula janetiae Peru
写真9 Den. ionopus Philippines
写真10 Den. igneoniveum Sumatra
写真11 Aerides magnifica Calayan Isd. Philippnes

Bulbophyllum nasicaの一般およびYellowフォーム

 カメラを修理に出したところ、年末期であることから修理が完了し戻ってくるのが1月の2週目頃になるとのこと。それでは1ヶ月間も撮影できないことになり、止む無く小型のキャノンG9Xを買う羽目になってしまいました。海外旅行には重いEOS7dに比べ、軽量で良いと割り切っての出費です。

 下写真1は現在開花中のパプアニューギニア低地生息のBulb. nasicaのyellowフォームと思われる花で、写真2がBulb. nasicaの一般フォームです。両者について色以外の違いはyellowフォームは細毛がドーサルセパルだけでなくラテラルセパル全体に拡がっている一方で、Bulb. nasicaはドーサルセパル以外は余り見られません。Yellowフォームはこれまで30株程に1株の割合で含まれており、それほど稀とは言えない数ですがBulb. nasicaでネット画像検索すると、このyellowフォームはOrchidRoots以外見当たりません。しかしこちらはややオレンジ色で一般種同様にラテラルセパルには細毛がほとんどありません。また写真1ではラテラルセパルの基部に一般種の赤褐色の片鱗が見られ、現時点ではおそらく左右は同種のフォーム違いとの判断です。