Bulbophyllum inacootesii

 フィリピン・ミンダナオ島Bukidnonで収集され、2016年OrchideenJournalに発表されたバルボフィラムBulb. inacootesiiで現在10株程に開花が始まりました。 当サイトでは先月の歳月記に記載したBulb. rugosum同様に中温室の中でも高温に近い場所で栽培をしています。本種は高輝度を好むようです。根は常に湿っていることが必要で、当サイトでは厚めにミズゴケを敷いた炭化コルクへの植え付けです。1年近い栽培で写真3に見られるように良く成長しています。乾燥気味な環境ではミズゴケの量を増やすか、へゴ板やバスケット植えが良いと思います。花を見れば大半の人が入手したくなるバルボフィラムの一つですが、マニラ近郊のラン園によるとDen. deleoniiなどを含めミンダナオ島Bukidnon生息種の入荷は昨年来、途絶えているとのことです。

写真1 Bulb. inacootesii
写真2 Bulb. inacootesii
写真3 Bulb. inacootesii

Dendrobium anosmum Moluccasの植え替え

 1.2m程の長く下垂した疑似バルブに、10輪ほどの赤紫色の花をつけるDen. anosmumは、ベトナム、フィリピン、マレーシアからニューギニアまで広い地域に生息します。その花サイズと輪花数から人気が高く、フォームも多様で、当サイトでは主にフィリピン生息の花サイズの大きなSuperbumや、albaフォームのdeareiなどを栽培しています。また2017年には、モルッカ諸島生息種をマレーシアの趣味家から5株程入手しました。この株はSemi-albaで、FSサイズにも拘らず一般フォームと異なり疑似バルブは精々30cm長で大きくなりません。温室環境が合わないのかとも当初考えましたが、他の地域からの株は1m以上に成長しており、果たしてモルッカ諸島固有の特徴かどうか、現時点では分かりません。入手してから2年半となったため植え替えを行いました。下左が今回の植え付けで、右はその花です。花サイズは一般種と違いはありません。次回開花した際には、一般種と詳細に形状比較をする予定です。

写真1 Den. anosmum Moluccas semi-alba
写真2 Den. anosmum Moluccas semi-alba

1月末現在開花中の花

 浜松温室で現在開花中の花の一部を撮影しました。

写真1 Den. ionopus
写真2 Den. rosellum
写真3 Den. sp
写真4 Den. spectabile
写真5 Den. discolor
写真6 Den. violaceum white
写真7 Scaphosepalum breve
写真8 Andinia schizopogon
写真9 Stelis imraei
写真10 Bulb. lasiochilum black
写真11 Bulb. plumatum
写真12 Bulb. whitfordii
写真13 Bulb. sulawesii
写真14 Bulb. sp. aff. fenixii
写真15 Bulb. mirum
写真16 Phal. violacea wild
写真17 Phal. celebensis
写真18 Phal. lindenii

Bulbophyllum sp (Bulb. nymphopolitanum complex)

 今月のページで「続バルボフィラムBulb.nymphopolitanum complex」に取り上げた6タイプのバルボフィラムの中で、Type1とType2は現時点のネット情報からは、該当する種が見られず、未登録の可能性も考えられることから、さっそく2017年頃までの主な吊り下げ取付材であった杉皮板から、2年半ぶりに炭化コルクへの植え替えを行いました。Type2は20株程在庫がありましたが、Type1は5株でした。これらは他のTypeや同じ時期に入荷したPalawanからの10種、合わせて20種ほどのBulb. spを、2018年のサンシャインシティラン展にて、それぞれ3,500円で販売しました。しかし当時、いずれも入荷して間もないことと、現地コレクターやラン園から花画像の提供が無く、ミンダナオとPalawanからのBulb. spとしただけのラベリングで販売したためか、購入された方がおられたかどうか記憶にないほどでした。

 その後、栽培を通しての開花を得て、これらの種の中には既知の種(Bulb. deareiBulb. maxillareなど)もあったものの、Palawan諸島やミンダナオ島生息種としての記録がこれまで無かった種や、既知の種とはどこか似て非なる種が多数含まれていることを確認することができました。見方を変えれば、コレクターは何も分からないまま適当にspとして現地ラン園に納品した訳ではなく、一応どこか異なる形状やフォームをもつ種との認識を基に、それぞれを分類してラン園に収めたことが分かりました。

 今月取り上げたミンダナオ島北部の生息種とされたBulb. nymphopolitanum complexはこうした状況において、特にType1および2の希少性(生息数)については不明であるものの未登録種と思われ、そうである限りは、同じType内でのSibling Crossによる実生化を図り、その一部をフィリピンに戻すことも必要と考えています。

 Type1と2のセパル・ペタルのサイズやフォームが最も類似する既知種は、Bulb. mearnsiiです。しかしリップ中央弁表皮の棘あるいはイボ状突起が無いことで別種と思われます。さらにType1 と2とは、セパル・ペタルのテキスチャー(線と斑点)およびリップ中央弁の表皮面の粗さが異なっており異種と思われます。下写真1, 4は、杉板から外し植え替えが終わったもので、写真2, 5および写真3, 6はそれぞれの花と蕾です。リップ形状についてはすでに今月の本ページに記載しました。

写真1 Bulb.nymphopolitanum complex Type1
写真2 Bulb.nymphopolitanum complex Type1
写真3 Bulb.nymphopolitanum complex Type1
写真4 Bulb.nymphopolitanum complex Type2
写真5 Bulb.nymphopolitanum complex Type2
写真6 Bulb.nymphopolitanum complex Type2

Dendrobium rhombeum Palawan

 Den. rhombeumはフィリピン固有種で、orchidspecies.comにはDen. heterocarpumのシノニム(同種)の記載があります。一方で、Den. rhombeumのページにはDen. heterocarpumとは異種とされていることを 2018年1月の歳月記で取り上げました。その後、Palawan生息種として入荷するDen. heterocarpum名のリップは大陸系種と異なる点が見られ、当サイトの結論としてはPalawanからの入荷種はDen. rhombeum Palawanとすることにしました。開花は落葉した茎から複数の花序がでて、それぞれに、5㎝サイズの花を3輪づつ全体として10輪以上の同時開花となるため、かなり見ごたえがあります。orchidspecies.comのDen. rhombeumページには香りマークがありませんが、飴玉のような甘い香りがします。

 下写真は現在開花中のDen. rhombeum Palawanを撮影したものです。Palawan生息株の多くは、一部のCalcarifera節種に見られる、セパル・ペタルが開花時には薄緑色でやがて黄味を帯びていく性質があります。写真1と2は同じ花で、3週間程の花寿命の開花後の1/3は写真1、その後写真2の色合いとなります。写真3は今回炭化コルクに植え付けを行った株の一部です。本種の生息域は標高500-1,500mの中温タイプとされていますが、Palawan生息株は低地と思われ、当サイトでは高温室(15 – 35℃)での栽培となっています。株は半立ち性で、ポットやバスケット植えでもよく成長し、大株にするにはバスケット植えが最適です。茎当たりの輪花数が多いことと、茎毎に若干ズレて開花する性質から多輪花で長期の開花となるため展示用には適したデンドロビウムです。

写真1 Den. rhombeum Palawan
写真2 Den. rhombeum Palawan
写真3 Den. rhombeum Palawan

Bulbophyllum rugosum

 透明感のあるバルボフィラムをしばしばこのページで紹介しています。現在その一つBulb. rugosumが開花中です。ボルネオ島およびスマトラ島生息種で、下写真はボルネオ島からです。生息域が標高1,000-1,700mで中温タイプとされていますが、これまで5年間の栽培では中温室の中でも高温環境に近い栽培温度が適しているようで、下写真の開花は高温タイプの胡蝶蘭原種温室での開花です。浜松では10月から6月までは高温室にて栽培し、それ以外の期間は中温室に置いています。いわゆる日本の夏期の熱帯夜が続くような時期に夜間温度を20℃程度にすることが出来れば至って丈夫な種で、福島県以北、日本海側、山間部などでは特に栽培温度に神経質になる必要はないと思います。

 花色を画像検索すると、黄色味の強いフォームが見られますが、栽培している株は下写真のようにセパル・ペタルはほぼ白色で透明感があります。この花は午前中開いており、午後は閉じる性質があります。orchidspecies,comによると、”flower that droops and does not open well”(花はうつむいており、十分に開かない)とあります。おそらくこの寄稿者は午後の花しか見ていないのではと思われます。でなければ下のような写真は撮れません。ちなみに下写真は9時15分前後の撮影です。昼までは良く開花しています。3年程植え替えをしていないため写真3ではコルク上のミズゴケが劣化しワイヤーばかりが目立ちます。そうした逆境であっても新芽が出て花も咲くほど元気です。これ程ユニークな花ですがマーケット情報は見られません。花が終われば植え替えとなります。

写真1 Bulb. rugosum
写真2 Bulb. rugosum
写真3 Bulb. rugosum

Bulbophyllum inunctum Malaysiaタイプの植え替え

 Bulb. inumctumはボルネオ島、マレー半島およびフィリピンの生息種です。フィリピンでの生息確認は最近とされています。このフィリピン生息種は昨年、この歳月記で取り上げましたが、ボルネオ、マレー半島種は10株程在庫しているものの販売した記憶がありません。現在マレーシアタイプを植え替えしており、改めてフィリピンとマレーシアの本種を比べてみました。写真2の花画像はマレーシアタイプで2018年12月、写真4のフィリピンタイプは2019年10月、写真1, 3のそれぞれの株は本日(25日)の撮影です。下写真に見られるように、花形状は同形ですが、色やテキスチャーは大きく異なり、両者は入荷実績からは地域的に固有のフォームと思われ、であれば変種あるいは亜種の関係ではとも思うのですが、そうした分類は確認していません。

 近年、Bulb. inunctumBulb. membranifoliumの亜種(J.J.Verm、,etal., 2015)とする登録が見られますが、Bulb. membranifoliumは上記それぞれの地域に共存しており、亜種は生息域が相互に排他的との定義に反することになり、これらの関係は一層不可解となります。この問題は昨年10月の歳月記で取り上げました。Bulb. membranifoliumBulb. inunctumの違いはペタルとバルブ形状です。

 Bulb. inunctumは12cmと大きな花で存在感があるにも拘らず、マーケットでの取扱いがあまり見られないのは不思議です。これほどフォームが異なると、趣味家にとっては、Bulb. membranifoluminunctum Malaysia およびinunctum Philippinesの3タイプのどれかを指定しての購入でないと、期待していた花フォームが得られないかも知れません。現在、当サイトでは3タイプすべて栽培中です。

写真1 Bulb. inunctum Borneo/.Malay.P type
写真2 Bulb. inunctum Borneo/.Malay.P type
写真3 Bulb. inunctum Philippines Auroa type
写真4 Bulb. inunctum Philippines Auroa type

現在開花中の花(一部)

 温室の夜間温度が下がると多くの種で開花が始まります。下写真は21-22日撮影の花です。

写真1 Den. endertii aff
写真2 Den. sp
写真3 Den. schettleri
写真4 Den. toppiorum taitayorum (sumatra)
写真5 Den. rindjaniense
写真6 Den. hasseltii
写真7 Den. trichostomum
写真8 Den. niveobarbatum
写真9 Sobralia yauaperiensis
写真10 Phal. lamelligera
写真11 Phal. venosa
写真12 Coel. usitana
写真13 Bulb. pardalotum
写真14 Bulb. arfakianum green
写真15 Bulb. patella
写真16 Den. rhombeum Palawan
写真17 Ddc. glumaceum
写真18 Bulb. nasseri

南米ランの植え替え

 下写真は現在進行中の南米ランの植え付け画像です。写真1はアルゼンチンClori Orquideasラン園 より入手したもので、20cmと巨大で奇怪な花をつけるStanhopea tigrinaです。30株ほどの在庫の内、大株はバスケット植えとし、一般サイズはスリット入りプラスチック鉢にミズゴケ・クリプトモスミックスで植え付けています。写真2は同じくClori Orquideasより入手したGomesa(Oncidium) riograndenseです。バルブの成長様態からポット植えは難しく、今回は炭化コルク付けです。花は多輪花で、それなりに美形であるにも拘らず、国内マーケットを検索しても流通が見られません。海外もほとんど流通が無く、薄暗い温室の片隅に置かれていた本種をさっそく取り出し植え付けをしました。写真はアルゼンチン生息株です。これら2種は中温タイプで夏期の夜間温度を20℃程度にすることが出来れば、5年前の入手から今日まで植え替えもなく素焼き鉢にミズゴケで放置していた状態で問題がないことから栽培は容易と考えられます。写真3はDracula woolwardiaeでドラキュラの中でも高額なグループの一つです。

写真1 Stanhopea tigrina
写真2 Gomesa(Oncidium) riograndense
写真3 Dracula woolwardiae

マクロレンズでの撮影

 故障したEOS7D MarkIIが修理から戻り、この機会にとこれまで使用していた60mmマクロレンズよりも微細な映像が撮れる35mmマクロレンズも入手しました。超接写は被写体とカメラをしっかり固定しない画像がボケてしまいますが、花のような開花位置や向きが様々な被写体を、三脚で自由に撮ることは難しく、手振れ補正のある接写レンズが必要と感じていました。ところでミクロな被写体を撮影するレンズであるのだからマクロレンズではなく、なぜミクロレンズと呼ばないのかと疑問でしたが、マクロレンズとはミクロな被写体をマクロ(大きく)にするためのレンズとの意味だそうです。下写真は35mmマクロレンズで現在開花中の花を撮影したものです。今後は目では捉えにくい花の質感や微細形状などポリネータの気分になって花映像が提供できると思います。

写真1 Bulb. nasica yellow
写真2 Scaphosepalum cimex
写真3 Bulb. sulawesii lip