Phalaenopsis philippinensisに見る花サイズ

 下写真は前回本ページで取り上げた同じ開花中の、その後のPhal. philippinensisです。本種の花サイズはPhal. amabilis、aphrodite、sanderianaなどと同じように左右ペタルのスパンで8-9cm程です。写真1の中で最も大きな花と小さな花を比較してみました。それが写真2です。小さい花は7.3cm、一方、大きい方は9.5cmです。通常花サイズは株の大きさ(成長度)や同時開花数で変化するものですが、Phalaenopsis節は花数が多いと個々の花は小さく、少ないと大きな花になる性格はほとんど見られず、花数にはあまり関係が無いようです。では何かですが、同じ地域内でも長い世代に渡って生息した環境(温度、輝度など)の違いような気がします。時間があれば小さい花と大きい花を個々に自家交配させ、実生に花サイズが継承するかどうか調べてみたいものです。ちなみにorchidspecies.comでは本種の花サイズが7cmと記載されています。これは写真2の小さい花サイズです。この情報が正しければ、これまでも同様に当サイトのロットは全て7cmが最小サイズであることから、ルソン島シェラマドレ山脈に花サイズの大きな未知の生息地があり、そこから得られた株の系統となりますが??

写真1 Phal. philippinensis
写真2 Phal. philippinensis

Dendrobium papilioの植え替え

 本種はフィリピンルソン島標高1,200m生息のデンドロビウムで、その細長い茎(疑似バルブ)に似和わず、大きな花を付けることで知られています。これまで25-30cm長の炭化コルクでの植付でしたが、このサイズでは栽培結果から根張り面積が小さ過ぎることが分かり、今回45cm長の炭化コルクへの植え替えになりました。下写真1はその一部の35株程です。これらは2017年2月の歳月記に取り上げたロット株で、今後1年をかけ10cmサイズの開花を目指します。

 100株以上の栽培を通して分かったことは、下写真2や前記の歳月記写真に見られるように本種はその茎に比べて、多くのデンドロビウムと異なり、胡蝶蘭原種並みの太い根を持つことです。写真2は植付けから2年半経過した株を植え替えるため表面を覆っていたミズゴケを洗い流して根を露出させた活着の様態です。根は伸長する過程で活着場所を失うと、それ以上の伸長は止まる様態が見られ、30cmx10cm程の支持材では面積が不足です。細い茎や葉にも拘らず、この根を見ていると胡蝶蘭Phalaenopsis節(Phal. amabilisなど)並みの大きな花を複数輪開花することができるエネルギーの源がここにあるようで、根を充実させることが大輪花の要のように思われます。これまでの株からは根は湿度に対する正屈性が見られます。本種はその標高からコールドからクールとされます。当サイトではクールと中温室に分けて栽培をしてきましたが、成長は中温室が良く、今回から冬季(10月末から4月)は高温室に、それ以外の期間は中温室の比較的温度の高い場所、すなわち夜間平均温度が20℃以下を通年でやや下回る環境で栽培することにしました。

 写真3は8.5cmの花で、8-10cmの大きな花を得るには、前記2017年の歳月記にも記載したように、茎をしっかりと伸ばすために根張り空間を大きくとること、根周りを乾燥させないこと、また高輝度が必要です。この意味でコストを考えなくても良い場合は、炭化コルクよりはヘゴ板あるいは木製バスケットが好ましいことになります。

写真1 Den. papilio
写真2 Den. papilio
写真3 Den. papilio

現在開花中の花

 下写真は25-26日現在開花中の花です。

Bulb. basisetum Philippines
Bulb. trigonosepalum yellow Philippines
Bulb. whitfordii Palawan Philippines
Bulb. denophyllum New Guinea
Bulb. longicaudatum New Guinea
Bulb. brienianum Borneo
Bulb. sp Papua New Guinea
Bulb. unitubum Papua New Guinea
Bulb. vaginatum Borneo
Den. peculiare Sumatra
Den. rigidum New Guniea
Den. rutriferum Papua New Guinea
Den. ellipsophyllum orange. Palawan Philippines
Den. ellipsophyllum green. Palawan Philippines
Den. leporinum New Guinea
Den. cinnabarinum angustitepalum Borneo
Den. boosii Mindanao Philippines
Den. floresianum Flores Indonesia
Den. rindjaniense Lombok Indonesia
Den. balzerianum Leyte Philippines
Den. furcatum Sulawesi Indonesia
Den. canaliculatum New Guinea
Coel. sparsa Philippines
Vanda foetida Sumatra

Dendrobium hymenophyllumの花色

 本種はJava及びスマトラ島、標高600m-1,200mの生息とされるデンドロビウムで、下写真に示す多様なフォームが特徴です。写真1のセパル・ペタルが黄緑色をベースに細かな暗赤色の斑点のあるタイプ、写真2の斑点の無いflavaや、写真3のリップ側弁にオレンジ色を含むタイプ、さらに写真4のaureaおよび写真5の赤紫色、またそれぞれをミックスしたかのような写真6のタイプが見られます。最も一般的なフォームは写真1となります。自然界でのランの花色は標準色、flava、aureaおよびalbaが知られていますが、本種は野生株でありながら、それ以上の変化が見られます。

Dendrobium amboinenseの開花

 インドネシア・スラウエシ島とニューギニアの中間位置にあるにアンボン島生息のデンドロビウムDen. amboinenseの開花が始まりました。下写真に見られるようにセパルペタルは白一色の9cmと大きな花で良く目立ちます。撮影は全て21日です。左右のペタルが水平方向に開くのは1時間程しかありませんが、この時には花サイズはNS18-19cm程となり、orchidspecies.com記載の最大長となります。当サイトで栽培するロットは全てほぼ同じ花サイズです。

 本種は2-3日の短命花のため、数日間開催される展示会等への出品には不向きで、栽培者だけがその迫力と存在感を楽しむことができます。現在18株を栽培中で、ココナッツファイバーマットを円筒形に巻き、円筒の中はクリプトモスを詰め、表面にはミズゴケを敷いた筒状の自作支持材に植付けており良く成長しています。すでに植付けから4年を経過していることから同じ方法で新たに植え替え予定です。

写真1 Den. amboinense
写真2 Den. amboinense
写真3 Den. amboinense

Phalaenopsis philippinensis

 本種はリップ側弁の黄色がセパル・ペタルの白色にあって良く目立つ胡蝶蘭原種です。Phalaenopsis属phalaenopsis節の中では、標高1,200mの生息のため唯一中温タイプとなります。当サイトではDen. tobaenseVanda javieraeと同じ、通年で夜間平均温度を20℃以下の環境で栽培をしています。下写真1は19日撮影のPhal. philippinensisで写真2はリップを中心とした拡大画像です。

写真1 Phal. philippinensis
写真2 Phal. philippinensis

Bulbophyllum debrincatiaeの植替え

 Bulb. debrincatiaeは2002年登録の、フィリンピンルソン島標高800m-1,200m生息のバルボフィラムです。当サイトでは2015年2月、Bulb. lasioglossumを注文したものの、数株が同年6月に開花してミスラベルであることが分かり、本種を歳月記に紹介したことがあります。本種は当サイトを除いて国内マーケット情報がなく、また現地フィリピンの農園やラン展においてもこれまで本種を見かけることがありません。最近は新種とされながらも市場実績の少ない種を、優先的に植替えており、本種もその一種となります。これまで3年間の栽培はプラスチックポットにヘゴファイバーでしたが、新しく発生するバルブの配列様態から、今回は35cm長の炭化コルクへの植え付けとしました。写真1はその一部です。

 最も栽培に適した取付け材は、前項のBulb. magnumも同様に保水性の高いヘゴ板となりますが、コストの点でコルクとしています。そのためミズゴケを厚めに敷き、根周りの乾燥を避けています。また当初は生息域標高を考え中温室にて栽培しましたが、現在は高温室に置いています。本種の不思議な特性は、通常花は花序の基部の蕾から順次先端に向かって開花していきますが、写真2に見られるように、本種はその逆で凡そ50㎝長の花序先端の蕾から順次基部に向かって開花することです。なぜそのような特性を持つことになったのか不思議です。

写真1 Bulb. debrincatiae Vizcaya Luzon Philippines
写真2 Bulb. debrincatiae Vizcaya Luzon Philippines
写真3 Bulb. debrincatiae Vizcaya Luzon Philippines

Bulbophyllum magnum

 Bulb. magnumは2013年、W. Suarez氏らによりフィリピン固有種として登録されたバルボフィラムです。当サイトは2014年10月にフィリピンにて入手し、2015年6月の歳月記に取り上げ、東京ドームやサンシャインラン展に2016年以降出品してきました。現在は30株程を栽培しています。炭化コルク、バスケットおよびプラスチック鉢に植え付けての栽培でしたが、今回は全てを炭化コルクに植え替えました。リゾームが長く、バスケットやポット植えはすぐはみ出してしまうため、伸びしろ分を任意に設けることのできる炭化コルクがコスト・パフォーマンスが良いためです。下写真左が今回の35-50cm長の炭化コルク付けの内、20株程です。栽培は容易で株は良く成長します。しかし花を得るのは結構難しく、今年は30株をそれぞれ栽培温度範囲および輝度の異なる場所に置き、開花条件を見つけ出すことが課題です。果たして本種が希少種なのか否かは不明ですが、マーケット情報は国内外を含め当サイトを除きほとんどなく、2015年以降フィリピン現地のマーケットでも見ていません。開花条件が分かるまで20株程は非売品とする予定です。

 本種もorchidspecies.comの情報とはかなり異なる実態があります。まず花サイズですが、本種は下写真右に示すように7cmのセパルですが、orchidspecies.comでは僅か2cm wideとされています。このwideの意味が不明です。次に生息地標高が1,200mでクールタイプとされています。Luzon島での1,200mは一般には雲霧林となります。当サイトでは600m以上とはしていますが過去5年間の栽培では、胡蝶蘭Phal. amabilisschillerianaなどと同じ高温室での成長が最も盛んです。

写真1 Bulb. magnum
写真2 Bulb. magnum
写真3 Bulb. magnum

現在開花中の花

 下写真は現在、開花中の花です。

Bulb. orthoglossum Philippines
Bulb. coroliferum white Borneo
Bulb. auratum aurea Borneo
Bulb. mearnsii Philippines
Bulb. patens Borneo
Bulb. palawanense Palawan
Bulb. geniculiferm New Guinea
Paph. gigantifolium Sulawesi
Den. sp Sulawesi
Den. setigerum Philippines
Den. atjehense Ache Sumatra
Den. anosmum Philippines
Den. canaliculatum New Guinea
Den. lamellatum Java
Den. phillipsii Mindanao Philippines
Den. spectabile New Guinea
Den. petiolatum New Guinea
Den. maraiparense Borneo
Den. deleonii Mindanao Philippines
Den. cymboglossum Borneo
Den. robinsonii Philippines
Phal. modesta Kalimantan Borneo
Phal. zebrina Palawan
Phal. viridis Sumatra
Phal. philippinensis Philippines
Coel. cuprea Borneo
Coel. usitana Mindanao Philippines
Vanda denisoniana green Thailand
Vanda barnesii Philippines
Den. sp New Guinea

Phalaenopsis aphroditeの初花

 今季初のPhal. ahroditeが開花しました。写真1-2が現在開花が始まったPhal. aphoriditeの初花です。本種はPhal. amabilisと共に、慶弔用白花胡蝶蘭作出の元親とされます。Phal. amabilisPhal. aphroditeは、その花や株形状が酷似しており、一見すると区別が困難で趣味家からは、しばしばその見分け方について質問を受けます。こうした酷似する種間での種の同定には、リップ基部にあるカルス形状の比較が有効とされます。そこで今回、下写真に示す画像でその違いを解説します。写真3はPhal. aphrodite、写真4はPhal. amabilisのそれぞれのリップを中心に拡大した画像で10日の撮影です。

 リップ写真において、その基部にあるV字の形をしたPhal. aphroditeのカルスには矢印1と2が指す突起があります。一方、Phal. amabilisのカルスには矢印1が指す同じような突起はあるものの、矢印2の場所には突起がありません。花を見て、この矢印2の突起が明確に存在すれば、それはPhal. aphroditeとなります。ほとんどの確率で、この違いで同定できますが、フィリピン全土に分布するPhal. aphroditeのカルスには僅かながら地域差と思われる変異があり、矢印2の突起の高さが低い形状も見られ、この場合はカルスの裏側(リップの基部方向)から見た形状を調べる必要があります。この場合はリップ全体を切り取らなければなりません。この裏面からの同定手法の詳細については本サイトのPhal. aphroditeのページをご覧ください。

写真1 Phal. aphrodite
写真2 Phal. aphrodite
写真3 Callus of Phal. aphrodite
写真4 Callus of Phal. amabilis