フィリピン生息のBulbophyllum inunctum

 Bulb. inunctumはボルネオ島およびマレー半島での生息が知られています。フィリピンLuzon島Aurora州での生息は最近の登録とのことです。このBulb. inunctumが7月に入荷のBulb. glebulosum名の株の中に混じっていることが開花で分かりました。Bulb. glebulosum名の株の全てがミスラベルかどうかは現時点では不明ですが葉形状が若干異なる株もあるように感じられ、同定には時間が必要です。

 今回ミスラベルとして開花したBulb. inunctumはボルネオ島やマレー半島の一般的なフォームであるセパル・ペタルがピンクあるいはクリーム色をベースに細い多数の赤紫色のラインが入るフォームとは異なり、下写真に示すように黄色をベースにドーサルセパルは赤色の斑点、一方ラテラルセパルがラインでyellowフォームと言われるタイプです。花サイズは12cmと大きく、中心のリップの赤色が大きなアクセントとなっており美形です。ミスラベルも問題ですが、これはこれで存在感があります。J. Cootes氏はCoel. usitanaと同様にその著書Philippine Native Orchid Speciesのなかで、”なぜこれほど華やかな(spectacular)種が長い間フィリピンで発見できなかったのか驚きである”と述べています。

 こうしたミスラベルが含まれ、またそれらに予約タグが入っている株がある場合が最近はしばしばで、いつも悩みの種となります。花を確認した株は兎も角、それまではBulb. glebulosuminunctumのどちらでも良いか伺ってからの販売しかできなくなってしまいます。

Bulb. inunctum
Bulb. inunctum
Bulb. inunctum

 ちなみに、Bulb. inunctumの栽培はなかなか難しいあるいは花が咲かないという趣味家がいるのではと思います。と言うのは本サイトでも最近になり本種の栽培に悩まされたからです。orchidspecies.comの本種の生息温度範囲を見ると クールから高温までの広範囲となっており、地域によっては低地から2,000m程の標高範囲に生息しているものと推測されます。

 このような種の栽培上の問題は、果たして購入した株がクール、中温、高温のいずれの範囲でこれまで生息していたかによって栽培適温が左右されることです。新芽が現れない、現状維持あるいはじり貧状態になるなどの原因の一つは、これまでの生息環境温度との違いが考えられます。本サイトでも2年ほど前、マレーシアからの入荷株を高温にて栽培したとき現状維持が長く続き、やがて葉が落ちた経験があります。はたして温度以外に原因が見当たらないことから、残っていた株をやや低温に移した結果、新芽が現れるようになりました。Bulb. claptonenseも同じような経験をしました。こうしたことから、入手される場合はこれまでの生息域あるいは栽培の適応温度を販売者に確認するか、不明であれば夏季は32℃以下の場所に置くことなどで様子を見るなど注意が必要と思います。また開花(花芽の発生)のトリガーは昼夜の温度差が10 – 15℃程度になることが必要のようです。