関東地区の今後の天気予報では、今月31日頃から本格的な猛暑が始まり連日昼間34℃、夜間25℃の予想となっています。気温34℃となると、温室内は70%の寒冷紗下であっても40℃を超えてしまいます。窓を全開し風通しを良くしても外気温以下にはならず室内では35℃以上です。連日このような気温が続くと低温タイプは無論、中温タイプも耐えることができない環境となり、山上げ、エアコンによる空冷あるいは温度センサによる自動散水などが必要で、こうした対応が困難な場合は日の当たらない風通しの良い軒下に置く以外ないと思います。株が少なければエアコンのある家屋内に取り込むのが最善です。しかしもう一つの問題は自動散水を除けば、乾燥によるダメージです。困ったことに外気を利用したり、家屋内では乾燥が一段と進みます。高温と乾燥しがちな環境が8、9月と、特に乾燥を伴う25℃以上の夜間温度が長期に続くと中温タイプは作落ちの危険が高まります。
本サイトの温室は四方が中空ポリカーボネイト板で建てられており、70%寒冷紗と外気を取り込む換気扇をフル稼働(浜松の外気は30 – 33℃)して昨日(28日)は11時から15時までは38℃でした。そこで温室内に16℃の地下水で散水をして35℃まで下げました。晴れた日は2回、曇日は夕方一回の散水で35℃以下を保つようにしています。それでも.日中の2-3時間は38℃が避けられません。一方、低温室は2台のエアコンがフル稼働し昼間25℃前後、夜間は15℃ですが、夕方葉水するため株本体は気化熱で実質2℃程この温度より低下していると思います。中温エリアはそれより3-4℃高くなります。
温度38℃は高温タイプのランですら短時間ならば許容できるものの限界温度です。 では現地のラン園ではどうしているのか。5月マニラを訪れ、午後1時半頃にマニラ空港のビルを出たとたん、今年もあまりの熱気で驚きました。迎えのドライバーに聞いたところ42℃で、ケソン市ではさらに2度程高いとのことでした。湿度は80%以上です。フィリピンでは3-5月頃が最も気温が高くなるそうです。慣れていない人は呼吸が苦しく感じる程です。通りに人はほとんど見かけません。一方でネット記載のマニラの年間気温で見ると、この時期の最高・最低温度が34℃と24℃となっており今年の東京の8月初旬予想と変わないような数値で、観測点がどのような場所か分かりませんが実状とはかなり異なる数値です。特にここ数年は温度上昇が一層進んでいるそうです。フィリピン最大のラン園Purificacion Orchids(表示されるGoogle航空Mapを拡大すると4ヘクタールの農園やタガイタイの全貌が見られます)では設立当初はマニラ近郊でしたが、高温と水質問題から20年以上前にタガイタイ標高700m近くに移ったそうです。タガイタイは昼間32℃、夜間は25℃弱です。3-10月は毎日のように午後にはスコールがあり、夕方になると一気に気温が下がります。一方、雨の少ない11月から2月は夜間18℃程になります。
すなわち放射冷却が期待できる森林の中でもない限り、マニラ周辺ではランの栽培は無理で、精々デンファレ位だそうです。一方、タガイタイ周辺は上記の気候であり、ランを含め観葉植物栽培農園が多く見られます。日本と異なるのはタガイタイでも昼夜の気温差と雨量が多いことから夜間の濃霧の発生が日常で、夜間の湿度は極めて高いことです。それでも晴れた日中には葉面温度を下げるためスプリンクラーを使用してかん水を行っているほどですから、ランの植込材も常に湿った状態になっています。現地ラン園によると問題はこうした環境であっても、例えばミンダナオ島1,200m-1,500mのコケ林生息の中温タイプのランは、維持は出来ても気温が高すぎて開花は難しいとのことです。より高温のマレーシアにおいては言うまでもありません。しばしば訪れるマレーシアラン園も、新種や希少種などの生息域は年々高地に移っており、今後益々国際マーケットでの需要が高まるであろう中温タイプのランを扱うため、キャメロンハイランドの気候に似たゲッチンハイランド標高1,000m(最高峰1,700m)付近に栽培場を建築中です。PNGのランも1-2年後には出荷できると思います。
さて話を戻し、国内では現実問題としてエアコンが無くてはランが上手く栽培出来ない気候になりつつあります。でなければ水撒きと云った労力で解決するしかありません。何とか猛暑期の高温と乾燥対策ができたとして、それで良いかと言えば、もう一つ大きな問題は病害虫防除対策です。この時期もっとも細菌性の病気の発生率が高くなり、また従来から知られた害虫だけでなく、最近問題になっているオオランヒメゾウムシにも注意が必要です。繁殖力が強く、新芽などの成長芽を食べるだけならナメクジと同じで何とか耐えることもできますが、幼虫は茎の中で芯を食べて成長するため単茎性のランにとっては致命的で、デンドロビウムなどもその被害は深刻です。この害虫を記載した薬剤が現在無く、本サイトでは沖縄県農業研究センターの会報に書かれているアセタミプリド水溶剤(モスピラン水溶剤1/3000希釈)とアセフェート水和剤(オルトラン水和剤1/1000希釈)や合成ピレスロイド系殺虫剤(アディオン乳剤1/2,000希釈)との組み合わせが有効とのことで7、8月は月2回、これらの混合液を散布します。この混合液で植物への薬害は現在見られません。(注:カッコ内は対応する商品名と規定希釈例です。また同じ殺虫剤でも粉末の水和剤や液体の液剤あるいは乳剤があります。指定された希釈で使用する限り効果や対象害虫に違いはありません。)