この連日の猛暑で高温タイプの株を栽培する温室内には30分と居られません。こうした中、4年前にボルネオ島およびキャメロンハイランドから入荷したストック用のBulb. virescensが大株となり、木製バスケットから多数のバルブがはみ出していたため、これらの株分けと植え替えを行いました。本種はよくBulb. binnendijkiiと比較されます。orchidspecies.comではBulb. virescensのページでBulb. binnendijkiiをシノニム(同種)としているものの、Bulb. binnendijkiiにはBulb. virescensをシノニムとしていません。ネットでも両者の画像が混在しています。花無し株からは両者の区別ができないため、マーケットにおいても種名タグ(ラベル)は曖昧です。花を見て長いラテラルセパルの曲がり具合や、セパル・ペタルでの斑点の有無による判断が精々です。
困ったことは、この両者はそうした曖昧さに加え、orchidspecies.comの情報でも分かるようにBulb. virescensは高温タイプとされる一方で、Bulb. binnendijkiiは低温とされている点です。ボルネオ島の標高1,000m-1,400mが果たして低温と云えるのか、熱帯雨林や熱帯常緑季節林帯では一般的には1,000m – 1,800mをwarm、本サイトで云う中温、また1,800m – 2,500mを低温としているので怪しいところですが、入荷するBulb. binnendijkiiにはロットによっては明らかに高温環境に適していないと思われる様態がみられます。この様態とは高温環境では根を覆う植え込み材の乾燥が中温環境に比べ早く、根周りの乾燥状態が長くなるサイクルが日常的に繰り返されると2 – 3ヶ月経過した頃から古いバルブから落葉が始まることと、新芽は開く前に落ちることが多いことです。 中温環境ではこのような症状は見られません。この栽培状況からは、温度は間接的な影響であり、直接的な影響はむしろ根の乾燥にあるのではないかとの見方もできます。本サイトでの中温環境においては毎日夕刻1回のかん水で、板付けであっても、植え込み材の完全乾燥状態は起こさないようにしています。一方、Bulb. virescens名の株は高温環境であってもバスケット植えで極力根の乾燥を避けているものの、Bulb. binnendijkiiに見られるような問題はこれまで出ていません。この結果、ミスラベルを防ぐ目的もありBulb. virescens名の入荷株はその順化処理過程で、ロット毎に中温と高温に分けて栽培をし、その結果で適温環境を決定することが必要になっています。
下写真1と写真2は20バルブ程になったBulb. virescens大株を葉付3-5バルブ毎に株分けしたものです。この数でもそれぞれの元株は1株です。元株は高温室での4年間の栽培です。本サイトでは大株であっても基本的には株分けはしませんが、リゾームが長く固い種は適当な大きさになった場合、株分けをしないと始末に負えなくなるため止む無く分割をしています。写真1はキャメロンハイランド、写真2がボルネオ島からの株です。写真3は両者を並べた画像で、左がキャメロンハイランド、右がボルネオ島生息株です。それぞれ最大葉長35㎝強です。バスケットと炭化コルク植えで、炭化コルクは60㎝長です。本種の根は常に湿っている状態が必要なためバスケット植えが最適ですが、硬く長いリゾームは収まりが悪く、今回の板付けでは保水力を高めるためミズゴケをこれまで以上に厚くしています。これらは株分けのため一部のリゾームを切断しており順化が必要なため9月末頃からの販売となります。


