Dendrobium sororiumとDendrobium purpureogriseum

 2018年12月に、ソロモン諸島から入荷したデンドロビウムを、Den. spとして同じ年の歳月記で紹介しました。その時点では種名不詳でしたが翌年に開花し、花形状からこの株はDen. sororiumであると判断し、2019年1月および2月の歳月記に取り上げました。このロットには、大別して葉の表裏両面共に緑色の株と、表面が灰色がかった緑色で裏面が紫色の2つのタイプが含まれ、さらに新芽は当初は紫色を帯びているものの、やがて伸長するに従い緑色になるタイプも見られたり、入荷時には株の多くで葉は楕円形状ですが、1年半の栽培で新たに発生した葉はやや披針形に変化する様態も見られます。

 同一種でありながら葉裏の色が異なる種にはAppendicula malindangensisが知られ、高地生息種は緑で低地は紫が多く、花色も高地は青、低地は紫です。またボルネオ島Phal. amabilisは、しばしば濃緑色の葉の基部や裏面が赤紫色が混じりJavaやスラウエシ島などとは異なります。

 本種の葉裏の色違いも地域あるい標高差によるものと思っていました。しかし昨年11月、知人より葉裏が紫色のタイプが2019年発行のMalesian Orchid Journal. 23: 79 (2019).に新種、Den. purpureogriseumとして記載されているとの情報を頂きました。Den. sororiumの葉色に紫色は無いようですが、論文にはDen. purpureogriseumDen. sororiumの同定に葉色は決定要素ではなく、リップ中央弁上の突起(keel)がDen. purpureogriseumは3列あるとされます。また両者共にソロモン諸島ではなく、スラウエシ島生息とされていますが、株や花形状から同一種で間違いはないと思います。昨年発表と云う直近の新種のため、前記論文以外この種の情報がほとんど無く、マーケット情報もありません。本種については歳月記(2018年12月、2019年1月、2月および6月)でDen. sp SolomonとかDen. sororiumとして紹介したものの、ラン展等での販売はしておらず、歳月記で知り購入された方は2名程です。

 今月、本種について植付けから1年半経過したため、改めて株の状態を調べてみました。すると葉裏面が紫タイプは両面緑タイプと比べ成長が悪く、両者合わせて20株程の株を抜いて根を調べたところ、緑タイプの株はそれぞれ多数の根があるのに対し、紫タイプは数本と少なく株にも勢いがありません。2018年12月に入手し2019年6月までの冬季から晩春までは、2タイプ共に高温室で元気よく成長しており、2019年の夏期を過ぎた頃から紫タイプが揃って成長が止まったようです。考えられる原因は、Den. sororiumDen. purpureogriseumの生息域は600m – 1,400mの高温から中温域に及んでおり、入荷した2つのタイプはそれぞれ生息標高差が異なり、紫タイプは高地生息のため、当サイトでの夏期の高温がダメージを与えたものと推測しました。このため今回新たに植え替えし、紫タイプは全て中温室に移動することにしました。写真1が葉裏紫タイプ、写真2が緑タイプ、写真3は葉色の比較です。写真2, 3の下段は現在(21日)開花中の緑タイプの花を撮影したものです。写真2のリップ画像で、中央弁基部からもじゃもじゃした先端部までの帯状の黄色部分に、3つの起伏が平行して並んでいるかどうか種分けの判断となります。これから多数の株が開花すると思いますが、それを待って調べる予定です。

写真1 Den. purpureogriseumDen. sororium ?
写真2 Den. purpureogriseumDen. sororium ?
写真3 Den. purpureogriseumDen. sororium ?