Phalaenopsis pulchraとfloresensis

 9月にそれぞれ20株程を入荷したPhal. pulchraPhal. florensensisの順化が終了し、それぞれが頂芽や根を盛んに伸ばしています。下左写真の上段がPhal. pulchra、下段はPhal. florensensisの20株の一部で、全て野生栽培株です。写真の炭化コルクは30cm長であることから株の大きさが凡そ分かるかと思います。長い葉で30cm近くあります。左のヘゴ板は1m長です。画像左の1m長の大きなヘゴ板に付いた株は高芽から高芽へと繁殖したPhal. pulchraのクラスターです。Phal. pulchraはフィリピンLuzon島とLeyte島に生息し、これまでの入手状況からはルソン島生息種の花色はやや明るい青紫に白のまだら模様が多い一方で、レイテ島はやや濃色の青紫のソリッドに近いフォームがしばしば見られ写真のクラスター株はレイテ島からです。

 40年ほど前まで本種はPhal. lueddemanniana var. pulchraと命名されPhal. lueddemannianaの変種とされていた時期があったそうです。同様にPhal. hieroglyphicaPhal. lueddemanniana var. hieroglyphicaと呼ばれた時期がありました。現地では今日でもPhal. lueddemanninahieroglyphicaは同種と主張する人がいます。確かにPhal. hieroglyphicaにはPhal. lueddemannianaとの区別が難しい花フォームがあったり、栽培を通しての性格はほとんどが同じです。しかしPhal. pulchraPhal. lueddemannianaとは花形状に明確な違いがあり判別は容易です。

 ランの多くは複茎性で茎が成長し終わるとその基部から新しい芽や、リゾームを伸ばしその先に新芽を付け増殖していきますが、これが根や茎基に障害がでると既存の茎の途中から高芽が発生するようになります。Den. miyasakiのように根が正常であっても頻繁に高芽を出す例外種もありますが、デンドロビウムなどでの高芽の発生は根腐れを暗示していると考えた方が無難です。それに対して胡蝶蘭は単茎性で、頂芽優先のため増殖は花茎からの高芽によって行われます。しかし頂芽に障害が出たり、伸長が止まった場合には茎基から脇芽が現れます。単茎性種では脇芽が株の異常を知らせていることになります。また胡蝶蘭も根が傷んだ場合、花茎に花の代わりに高芽が発生するようになります。このような性格からいずれも高芽の頻繁な発生には注意が必要です。ところが胡蝶蘭の中にも頂芽が伸長し健康であっても、次々と花茎を伸ばし、これに花を付けるよりも高芽を頻繁に発生させる例外種がいます。この代表的な種がPhal. pulchraです。写真の左のPhal. pulchraクラスター株は3年前は5個ほどの高芽を付けた1株であったものが僅か3年程で写真に見られる繁殖です。まさに高芽が高芽を生む光景です。こうした頻繁な高芽による成長はとりわけPhal. lueddemanniana complexの特徴ですがその中でもPhal. pulchraは特に活発です。

 一方、Phal. floresensisはインドネシアフローレス島生息種です。この種で興味があることは、DNA分析によると本種はボルネオ島生息のPhal. bellinaの近縁種とされ遺伝距離が近いとされます。よく見れば花色の違いを除けばPhal. floresensisの丸みのある花のセパル・ペタル形状からはPhal. bellinaに似ているように感じます。いずれの原種も、頂芽を病気で失わないようにすることと、Phal. pulchraのように長く下垂する花茎を考えるとミズゴケの鉢植えでベンチに置いての栽培は困難であり、大株にするには下写真のような支持材への植え付けが必要となります。

Phal. pulchra
Phal. pulchra
Phal. floresensis