本種は鉄皮セッコクと呼ばれ、中国の高貴漢方薬草として有名なデンドロビウムです。胃腸病、慢性胃炎、解熱、強壮などに効くそうです。本サイトが最初に入手したのは10年ほど前で、中国雲南省帰りの友人が生薬として持ち帰った100本程の茎(疑似バルブ)の中から30本頂いたものでした。アスパラのように短く切断されていました。この生薬をどうして口に入れるのかと友人に聞いたところ煎じて飲むとのことでした。薬になる程ならば相当にがいに違いないと興味本位で齧ってみたところ生そのままの茎であり、それではと面白半分で茎伏せをしました。周りにある胡蝶蘭原種に囲まれながら、やがて芽や根が出始めどんどん大きくなりました。下写真3が僅か3節分の茎から育った株の一つです。この茎はクローン苗と思われ、茎が太く長く6-70㎝程にストレートに伸びる形状で写真のように多輪花性でもあり見た目には華やかなものです。おそらく漢方薬としてはこの花の咲く前に刈り取られるのであろうと想像します。数年間交配を試みたのですが胚のあるタネを採ることができず、茎伏せで増殖する以外ないかと今年に入り3節ごとに切断して様子を見ているところです。
一方、昨年末に野生株を新たに手に入れようとCITES申請を依頼し打診していたところ、今年1月のマレーシア訪問で1株のみクラスター株が入荷していました。ヘゴ板にしっかりと活着していたところを見ると、華系の人の多いマレーシアであり、強壮剤にしようとこれまで趣味家が育てていたものを一つ失敬してしまったのではないかと思ってしまいます。しかし茎伏せで得た株とは形状がかなり異なっていました。そこで帰国後にネットで調べたところ、雲南省の絶壁で腰に命綱を巻き、崖にぶら下がりながら、本種をコケと共に岩肌に植え付け自然栽培している写真が数点あり、この作業者が手に持っている株と形状がそっくりであることが分かりました。つまりこれまでの株(写真3)は漢方薬製造のために、いわゆる植物工場生産品として改良されたもののようです。1月に入手した株は下写真2で、クラスター株を5株に分けた一部です。2株程サンシャインラン展に出品予定です。
本種は中温栽培ですが丈夫なデンドロビウムで、夏の高温時には風通しのよい軒下等に置いての栽培で問題ないと思います。完全な下垂タイプです。日本では5-6月が開花期のため来年の開花に期待しています。


