昨年、Purificacion Orchidsからアリの巣玉(Hydnophylum formicarum)1株をサンシャインラン展の売れ残り品として引き取りました。塊茎の直径が7-8cm程で、浜松では温室の片隅に1年近く捨て置かれ、すっかり忘れ去られていました。それを今年の東京ドームラン展に果たして買う人がいるのかどうか半信半疑のまま出品してみたところ、初日で売れてしまいました。これほど奇怪な形をした植物がなぜと、ラン展後にネットで調べたところ、僅か10cmも満たない程の塊茎で15,000円以上が普通という、関心の無い者にとって、ここにも理解不可能な世界があることに気付きました。
フィリピンを訪問する度にポットに乗った数百のアリの巣玉を見て、どんな人たちがこの観葉植物ならぬ観茎植物を買うのかとは思っていたものの、ラン属でもなくそれほど興味はありませんでした。しかし東京ドームラン展でのことや、国内には取扱店がほとんどないことから高価であることが分かり、サンシャインラン展にも数点出品してみようと取寄せてみました。果たして趣味家は何処に、この木に魅力を感じるのか。塊茎植物がアリに住居を提供する一方で、アリはこの植物を害虫から守り、さらにアリの食べ残しやフンをこの植物は栄養源とする。確かに地上には生きられない着生植物と、アリといえども地上には敵が多くて生きられない種もいるのであろうもの同士が互いに手を組んで共に生きる、そう考えると、こうした不思議な自然の共生進化の実物体を手にできることの好奇心と話題性からかと。
それでは、その話題性をさらに高めることはできないか、かなり大きな、と言っても部屋や温室に置く限りバレーボールサイズが限度ですが、このサイズならば既存の園芸店との差別化もでき面白いのではと考えました。そのバレーボールサイズを含むアリの巣玉がDENR(Department of Environmen and Natural Resources)が発行するWildlife Export Certification (野生種輸出証明書。いわゆるランで譬えればCITESのような輸出許可書です)と共に送られてきました。それが下写真です。写真1-2はHydnophytlum formicarumで、それぞれの写真で塊茎の黒あるいは茶褐色の部分はかん水により濡れている間の色変わりです。写真2は左右幅26㎝の塊茎をもつ大株です。
写真3-4はMyrmecodia tuberosaで、写真4は1株が3つの塊茎からなる大株です。問題はこれらの植え付けです。ネット写真からはほとんどの株はポットに乗せられています。中には木であるという先入観からか植え込み材に土のようなものが使われている画像もあります。根が短く細毛が多いことから精々植え込み材の上に乗っているだけの状態になり、株が小さければかん水時に安定しません。すんなりと枝が立っているものはそれでも良いのですが、これらは着生植物で枝は様々な方向であったり、塊茎も形は様々です。本サイトでは、枝の伸長方向に倣って枝が上を向くように、傾き調整可能な取り付けとするため、5cm厚の炭化コルクにミズゴケを敷きその上に本種を固定することにしました。根のある部分の凹凸はクリプトモスとミズゴケミックスを詰め平坦にしての取り付けです。このあたりの植え込み技術はラン栽培者ならではの経験と勘です。価格については一般サイズは若者が主な顧客と考えられ、買いやすくするためネットで見られる2018年度の一般市場価格の半額程度を予定しています。これを機会にラン原種にも関心を持ってもらえれば良いのですが。 大株の価格は未定です。代表的な種のほとんどはランと同じ温度、湿度、通風、施肥での栽培が可能でラン温室に同居させれば良く育つと思います。



