本種はボルネオ島キナバル山周辺の標高1,200m – 2,300mに生息するシンビジウムで、その標高からコールドからクールタイプとされます。すなわち夜間平均温度は10℃以上、18℃以下が必要となります。本種は古い葉が枯落ちても茎を包む葉の基部(葉鞘=ヨウショウ)は落ちることなく枯れたまま残ります。このため入荷時も枯れた葉鞘が何枚も重なって茎に付いています。こうした株の生態写真がorchidspecies.comに見られます。植え付け時、枯れた葉鞘を取り去るか、付けたままとするかは悩ましいところです。自然界では雨水が主茎と葉鞘との間に浸み込み保水性を高めているのか生息地画像では葉鞘の周りにはコケが多く付着しています。また枯れた葉鞘は固いことから長い主茎を害虫や寄生植物から守る役割があるのではとも考えられます。
本サイトでの栽培においては、茎の2/3近くが枯れた葉鞘に覆われた姿は原種とは言え余り美しくないため下写真のように取り去ってから植え付けています。そのため脇芽あるいは生きた葉のある位置近くまで茎をバーク内に埋め込みます。一方、マレーシアではこうした低温生息種も出荷過程では1ヶ月以上高温に晒され、入荷時点では根のほとんどが枯れ、1-2本が辛うじて残っている状態が頻繁です。この品質レベルからは順化栽培が必須となりますが、低温環境での栽培であることから、新たな根が主茎から覗き出すのは高温タイプ種に比べ2倍ほどの4-5ヵ月を要します。植え付けはスリット入りプラスチック深鉢に大および中粒の発酵バーク2:1混合にゼオライトを2割程度混ぜ合わせています。このように今年からは低温タイプの植え込みには、これまでのミズゴケ・クリプトモスからバーク・ゼオライトミックスに順次植え替えをしています。これは植え込み材の劣化の影響を遅らせるためです。大粒使用であるため気相が大きくなることから種によっては鉢内の湿度をできるだけ長く保持する目的で鉢表面の一部を薄くミズゴケで覆っています。
下写真は新しく入荷したCym. elongatumで主茎の端から頂芽先端まで40㎝程の株です。このロットの新根の発生と頂芽の伸長を確認しての順化後の出荷は凡そ今年の初冬頃を予定しています。
