昨年9月の歳月記にフィリピン生息の本種を取り上げました。orchidspecies.comによると本種は100年近く前にフィリピンで記録され、その後は見つからず絶滅したと思われていたが、最近になりインドネシア領スラウエシ島の標高900-1,000mのコケ林で撮影されたとあります。その野生株画像がorchidspecies.comに掲載されています。今回再び取り上げたのは、2016年にフィリピンラン園よりBulb. ecornutoidesの種名で入手した相当数の株が実はミスラベルで、驚くことにこれがフィリピン生息のBulb. echinochilumであることが分かったためです。Bulb. ecornutoidesは知人のW. Suarezにより2006年に発見された比較的新しい種で、本サイトのバルボフィラムのページの画像はW. Suarez氏から頂いたもので、またorchidspecies.comの画像は本サイトからの引用です。
どうして間違えたかは推測ですが、両者の生息地がNueva Vizcayaで共通することと、種名の”echino”と”ecornu”の名前からサプライヤーあるいはラン園が聞きなれない”echinochilum”を”ecornutoides”ではとタグを付けてしまったのではないかと。そこでBulb. echinochilumについて複数のフィリピンやシンガポール等のラン園の販売リストを調べましたが本種は取り扱われていません。一方、J. Cootes氏のPhilippine Native Orchid Speciesに本種が記載されているものの”再発見種”なのか”uncommon (希少種)”かについては触れられていません。
今回のミスラベルのロットとは別に2010年頃に入手したBulb. echinochilum名と所有者のタグの付いた株の分け株については希少種として昨年バルボフィラムとしては高額な20,000円として販売しましたが、今回判明した20株程のBulb. echinochilumを、では幾らで販売するかが問題となりました。おそらく現在もマーケット状況から判断して入手は容易ではないと思いますが、取りあえず株サイズ(5-10バルブ)により新種並みの3,000 – 4,500円とし、10株限定で東京ドームラン展に出品することにしました。これまでは標高500m以下に生息のBulb. ecornutoidesと思い高温栽培を続け、3年間花を見ることはなかったものの杉皮板での成長は盛んで、先月からの浜松の気温の低下により花芽が現れたことを考えると、Bulb. echinochilumの生息域である標高1,000mのコケ林に合わせ中温が最適と思われます。下写真上段左はこれまで3年間の杉皮板栽培の様子で、植え付け時の株サイズは全て5バルブ程でしたが写真のように3年間での成長は著しく丈夫な種です。下写真下段は今回急いで東京ドームでの販売を目的に炭化コルクに移植した株の一部です。5株並んだ左端の株から右下に向かって長く伸びている花茎が見えます。販売株は全て浜松にて新たに増殖した部分を株分けしたものです。
