この不可思議なフィリピン生息のBulbophyllum

 これまで3回Bulb. williamsiiに端を発するBulb. spを取り上げてきました。今回Bulb. sp. aff. fenixiiの入荷ロットからも類似する種が含まれていることが分かり、振り返って整理してみました。写真1はBulb. williamsii、写真2および写真3は種名不詳種で、写真1-3の下部はそれぞれのバルブです。Bulb. williamsiiは同定できますが、写真2 sp1はBulb. willamsiiのロットに混在していた種です。一方、2016年はBulb. williamsiiBulb. woelfliaeとを同時に注文しており、Bulb. woelfliaeとして下写真のsp1が入荷していました。このsp1は明らかにミスラベルであるものの、現地での出荷時のラベリングで、ミンダナオ島のBulb. williamsiiに、ルソン島北部生息とされるBulb. woelfliae名のsp1が混ざったものと考えられます。第一の疑問は、Bulb. woelfliaeではないとするとsp1は何種かです。

 次に2017年に、Bulb. elassoglossumの発注でsp2が入荷しました。これもBulb. elassoglossumとは異なるミスラベルでした。ここでそれぞれの花とバルブ形状を比較するとBulb. williamsiiとsp1とはドーサル・ラテラルセパルの長さが後者は1/2で、バルブ間のリゾームの長さもほぼ1/2です。一方、Bulb. williamsiiやsp1とsp2とを比較するとペタルの形状がsp2は細長く、リップ前端が黄色であることと、バルブ形状もリゾーム長も異なり別種であろうと思われます。Bulb. wiiliamsiiのラテラルセパルは4cm、sp1およびsp2は2cmです。

 さらに今回、2017年入荷のBulb. fenixiiの30株程のロットから写真4のsp3が開花しました。このBulb. fenixiiのロットではこれまでBulb. sp. aff. fenixiiがほとんどで、現在Bulb. fenixiiは2株確認しているのみです。このロットにはこれまで3割程、花サイズや半分閉じた状態の色合いも似ているBulb. ocellatumが混在していると思いつつ栽培していましたが、今回の植え替えで開花している花をよく見たところ、Bulb. ocellatumではなく、sp3であることが分かり、その画像を26日に撮影しました。このsp3のバルブはsp2と同じような形状でリゾームは短くバルブもBulb. williamsiiやsp1と比較して小型です。ここで第二の疑問がでてきました。このsp3は、sp2と花フォームは酷似しているのですが、写真5に見られるようにサイズが1/2です。たまたま1株がそうであったのではなく、Bulb. fenixiiのロットのsp3は全てこのサイズであり、一方Bulb. elassoglossumとされたロットのsp2は左のサイズです。同一種であって、これほどのサイズの違いがあることは考えにくいものの、両者とも同じルソン島Nueva Vicaya生息種であることから標高差あるいは排他的な生息コロニーによる個体差とも考えられないことはありません。結果としてBulb. woelfliaeからsp1が、Bulb. elassoglossumからsp2が、さらにBulb. fenixiiからはsp3が現れたことになります。不思議なことはsp1-sp3それぞれが異なる種名のミスラベルで入荷した訳ですが、それらが互いに似て非なる特徴をもっていることです。

 話は変わりますが、常に新しく、珍しいものを現地に求める限り、こうしたミスラベルが頻繁に起こります。これをその都度サプライヤーを咎めていては現地の人たちは注文を受ける意欲を失くします。痛しかゆしですが、そうした中でも、このような不明種と出会うこともあり、ミスラベルもこれはこれで面白いと思っています。

写真1 Bulb. williamsii
写真2 Bulb. sp1
写真3 Bulb. sp2
写真4 Bulb. sp3
写真5 Bulb. sp2 (左) Bulb. sp3 (右)