Dendrobium sanguinolentum

 Den. sanguinolentumは特異な性質を持つデンドロビウムで、春と秋の2回開花しますが不思議なことに春と秋の花のフォームが大きく変わる株と全く変わらない株が混在します。本種はマレー半島、スマトラ、フィリピン、さらにタイやJavaにも生息するとされますがDen. cerinumDen. kentrochilumと混同されるそうで詳細は不明です。下写真はDen. sanguinolentumの3つの花フォームで本種名で画像検索するといずれもこれらに類似するフォームが見られます。種名のsanguinolentumとは滲んだ血色との意味ですが、リップ中央弁の斑点はオレンジ色でありセパル・ペタルの先端にある赤紫の斑点を想定しての種名と思われます。しかし血色?には見えないことと、写真中央フォームにはsanguinoらしき部分がなく、花色由来の種名にするとしばしば矛盾が生じる例の如くです。

 問題は下写真のそれぞれ異なるフォームが株毎に一様であれば、これだけの視覚的な違いがある以上、固有のフォームとして分類しても良いと思うのですが、困ったことに下写真で、春の開花では中央あるいは右のセパル・ペタルの先端部に青紫に斑点がない株であったにも拘わらず、同一株でありながら秋には左のフォームが出現することです。これまで他種で、季節に応じてこれほど異なるパターンの変化を持つ種を見たことがありません。この変化は株毎には固有で変化する株としない株があり、これが同じ株では毎年繰り返されます。何かDen. dianaeと似た特性ですが、Den. dianaeの花フォームの違いについては季節あるいは栽培環境の気温に依存しているかどうかは確認していません。

 さらに詳細な違いを言えば、中央から左のフォームに変化する株は、春秋共に先端部が青紫色となる株の色の濃さに比べて淡くクリーム色のベース色と青紫のコントラストが弱いことです。また中央が左のフォームになる時期は常に秋であって、その逆はこれまで4-5年間で観測されていません。言い換えれば、秋に中央のフォームであった株は春も同じフォームですが、秋に左のフォームの株が春も同じである保証はできません。orchidspecies.comを見ますと、コモンタイプは左で、ボルネオ島タイプが中央とする画像となっています。常にボルネオ島生息種が中央で、スマトラ島が左であればそれらは地域的に分離していることから”変種”となるのですが、上記のような変貌が同一種の中のかなりの株で起こることを考えるそうとも言えません。

 本種は高温タイプの半立ち性であり、本サイトではバスケットでは立ち植えで、また炭化コルクには下垂タイプとして植え付けており、いずれも成長は順調で栽培は容易なデンドロビウムの一つです。疑似バルブは1.5mほどの長さまでに伸長します。Den. cerinumDen. kentrochilumと異なるのは、これらにはDen. sanguinolentumに見られるリップ中央弁の先端から基部に向かって走る6-7本のラインがないことで判断できます。取り敢えずサンシャインラン展にはこの春秋にフォームが変化する不可思議な株を2株ほど出品する予定です。

Den. sanguinolentum