Bulbophyllum scaphioglossum

 本種は2014年登録のニューギニア生息のバルボフィラムで、現在浜松温室にて開花中です。新種のためかorchidspecies.comには記載が無く、栽培方法についての情報はネットからは見当たりません。当サイトでは発見から2年後の2016年10月に入手し、同年の歳月記10月と11月に取り上げました。それ以来3年が経ち、栽培に関するデータもある程度得られたため今回再度本種を取り上げてみました。

 Bulb. scaphioglossumの形態情報はBulbophyllum scaphioglossum J.J.Verm. & Rysy, Orchidee 65 (2014) 142のサマリーで、また花画像はWikispeciesで見られます。入手時には標高情報がなく、その花や株形態がBulb. nitidumに似ていることから、低温室(15-25℃)にて栽培を1年ほど行い、新芽の発生と開花を確認しました。現在はその場所から中温(15-28℃)場所に移動し2年が経過します。その間に一回の植え替えを行い、現在は炭化コルク付けにしています。もっとも成長の良い支持材はヘゴ板で30cmx10cmと株に比べてやや大きめのサイズが最適です。

 栽培で観察される印象からは標高1,200mの雲霧林(コケ林)生息のBulb. nitidumと同じか、やや低地と思われ、根は常に湿っている状態が必要です。雲霧林帯の生息種は一般的に低輝度環境とされますが、当温室での本種はLED直下の比較的高輝度な位置にある株の方が、葉やバルブに勢いを感じます。また低 – 中温タイプのバルボフィラムは高温に比べ成長芽の発生は遅く、多くても1年に2芽(2バルブ)程度であるものの古いバルブからの落葉も遅く数年もすれば大株になります。下写真は写真1-3がBulb. scaphioglossumで7日の撮影です。写真3は株の一つで植え替えから2年間で2倍ほどのバルブ数になったものです。本種は大きなリップと、その中心に走る金色の太いラインが特徴です。写真4-5は同じCodonosiphon節の写真4はBulb. nitidum、写真5はBulb. nitidum aff.です。生息地も同じニューギニアで本種の類似種として掲載しました。2016年の歳月記で指摘しましたが、orchidspecies.comでは現在もBulb. nitidumの生息域は1,200mのコケ林としながらも、温度マークは高温となっています。このhotマークは夜間温度が24-29℃の標高0-1,000mと定義されており誤記と思われます(Climate of Papua New Guinea, J.R. McAlpine、etal.著にはPNGの標高1,200mの最低・最高年間平均温度は15℃-26℃)。Bulb. nitidumは中温室あるいは山上げなくして日本の夏は越せません。

 ちなみに上記のBulb. nitidum aff.のaffはaffinityの略で生物学名用語の近縁(類似)種を意味します。ネットでは写真5の形状に似たBulb. nitidum画像も見られますが、サイズが11- 12cmとされているのに対し、写真5の株はラテラルセパルの長さが8cm以上あり、左右のセパルが後ろに反る前の開いた状態ではスパンが16cmを超え一般種とはサイズが異なることからaffとしたものです。Bulb. scaphioglossumについてのマーケット情報は国内には見られず、海外ではNT OrchidでUS$60.00が見られます。当サイトでは2016年11月の記載と変わらず、およそその半額です。

写真1 Bulb. scaphioglossum
写真2 Bulb. scaphioglossum
写真3 Bulb. scaphioglossum
写真4 Bulb. nitidum
写真5 Bulb. nitidum aff.