昨年8月にマレーシアにてVanda perplexaを注文していたところ入荷していたのはLombok島からのVanda limbataでした。その入荷直後の1株に蕾がありこれがやがて開花し、この画像を昨年8月の歳月記に掲載しました。Vanda perplexaと同じような色合いの花であることは確認したものの、Vanda limbata名でネット画像やorchidspecies.comの画像で見る限り、その多くのセパル・ペタルはいわゆる赤茶色で、Vanda perplexaの紅赤色と比較し、茶色っぽく色褪せて映り、今回の入荷株も同じフォームで期待外れであろうと昨年9月の歳月記には植え付けが終わった画像のみを紹介しました。趣味家もおそらくVanda limbata名からは同じ印象をもっていたのかその後、引き合いもなく今年の東京ドームラン展のプレオーダーリストでは価格を下げ、2,500円から3,000円としたものの、やはり入手希望者はいませんでした。ところが、入荷から8ヶ月が経過し、順化も終わり今月に入り2株に開花が始まり花色を見て驚きました。それが下写真です。
蕾の段階、すなわちセパル・ペタルの裏面が白色をベースに異様に濃い赤紫色が透けて見え、はて?と様子を伺っていましたが昨日(15日)濃赤色の花が開花しました。Vanda limbataは9月の歳月記にも書きましたが、これまでスラウェシ島とJava島が知られています。園主によるとLombok島株は初入荷とのこと。このLombok島とVanda perplexaが生息するコモド島とは同じ小スンダ列島に属しており、これらのVandaの濃赤色は地域固有色なのかも知れません。一見、Vanda perplexaと見間違う程ですがセパル・ペタルの外縁が白く、これはVanda perplexaには無いVanda limbataの固有のフォームであり、白い縁取りがむしろVanda perplexa以上に赤を引立たせています。本種名を今後はVanda limbata Lombokと、Lombokを付帯名とし、スラウェシ島やJava島生息株とは区別し販売することにしました。価格も僅かながら変更して5月のサンシャインランに出品予定です。Lombokタイプは初日で売り切れるかもしれません。
ところでこの機会にと、紅赤色のVandaを調べてみました。マーケットに見られる赤色Vandaは、青色Vandaと共にそのほとんどは人工的な交雑種です。原種としては前記のVanda perplexa、limbata、mariaeが画像検索で見られます。その内、ネット画像にある多くのVanda mariaeの赤色画像は怪しげで、シノニムとしてVanda merrillii var. immaculataとされていますが、この変種名immaculataの色はPhilippine Native Orchid Speciesによれば黄系で赤色ではありません。2017年フィリピンのPurificacion Orchids農園で多数のVanda mariaeの栽培株を見ましたがこれらは実生でした。開花株も多数あり、その花色はソリッドレッドではなくVanda merrilliiとVanda limbata(あるいはperplexa)との交配種の印象を受けました。いわゆる紅赤色Vanda mariaeは自然界には存在せず人工的につくられた交雑種ではないかとの疑いです。一方、Vanda perplexaは現時点の確認範囲ではコモド島を含む、その周辺の国立公園内の生息種とされ採取は出来ませんので、市場にある本種は実生です。本サイトが2017年12月の歳月記に記載した標題Vanda limbata (perplexa)の30本ほどのperplexa株はサイズが全て等しく、また茎が直立し、左右の葉の配列と数が対称的であることからこれらは実生株であることが分かります。野生栽培株であれば自然あるいは栽培環境での風や周りの障害物あるいは脇芽からの若茎による加重等により主茎が曲がり、成長芽の伸長方向はランダムで直立した株は十に一つもなく、また左右の葉数は一部の葉が折れたり、欠けたりして非対称となり同じ姿はほとんどありません。他方、実生では小さなNBSサイズから株は互いにぶつかり合うことなく等間隔に吊るし、茎が真っ直ぐになるように針金や紐で留めて栽培しており、定期的な施肥を与えることで頂芽優先の性質から脇芽もほとんど無く多数の葉が整然と並び茎は直線的に伸びます。フィリピンBatangasのevergreenやミンダナオ島のPuentespina農園では根を除く茎の長さのみで1mを超えるVanda sanderianaの実生栽培株が同じ姿で1000株以上並んでいました。こうして考察すると、赤色の純正な原種を求めるとすれば、現時点ではVanda perplexaの実生株かVanda limbataの実生あるいは野生栽培株のソリッドレッドフォームに絞られるように思います。純正さにこだわるのは種の保存以外に、交配する際のそのフォームを遺伝継承させたい目的がある場合です。

